平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

2017-01-01から1年間の記事一覧

平成29年司法試験採点実感(行政法)の感想 その1 司法試験の採点でマイナー判例を重視することに関するリスク

久しぶりの更新である。 受験生の皆様には本ブログの存在を忘れられてしまったかもしれないし,「忘れられない権利」は憲法上及び法律上保障・保護されないものと解されるが,細々と続けていきたい。なお,「忘れらんねえよ」の元ドラムの酒田さんは,本ブロ…

司法試験採点実感の「消費期限」と「賞味期限」  -審査基準を「若干緩めて」と書くのは「不適当」(26年憲法採点実感)は「消費期限」切れか?-

本日,ある司法試験受験生の方から,憲法の論文答案に関する興味深いご質問を受けた。他の受験生の方にも同様の疑問をお持ちの方がいるかもしれないと思い,ブログを更新することにした。 <質問> 「答案に,『審査基準をやや緩和して』というような記載を…

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その5 出題趣旨から探究する「答案枠組み」

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨(以下,単に「出題趣旨」ということがある。)についての感想のつづきである。 前回のブログでは出題趣旨第3・4段落の感想を述べ,前回までに出題趣旨の第1~5段落の感想を述べた。 yusuketaira.hatenablog.com そ…

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その4 出題趣旨と「人権パターン」の関係

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨(以下,単に「出題趣旨」ということがある。)についての感想のつづきである。 前回までに,同出題趣旨の第1・2・5段落の感想を述べた。 前回のブログでは,最後の方で,司法試験論文憲法で,「冒頭パターン」を活…

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その3 憲法答案の「冒頭パターン」

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨についての感想のつづきである。 前回は,同出題趣旨の第1段落の感想を述べた。 yusuketaira.hatenablog.com そこで,今回のブログでは,同出題趣旨の第2段落(及び第5段落)の感想を述べることとする。 〔平成29…

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その2:出題趣旨のいう「基本判例」・「学説」とは何か?

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨についての感想が途中になってしまっていた。長いこと放置してしまっていたが,憲法改正の前に表現の自由を行使しておかねばと思い立ち,約3週間ぶりに更新することとした。 yusuketaira.hatenablog.com とはいえ,憲…

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その1:受験生「中間審査基準でマクリーン判決を超えてもいいんですか?」→考査委員「いいんです。」

「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(4)」(平成29年5月22日ブログ)などでも述べたとおり,平成29年司法試験論文憲法には,憲法学にとって喫緊の課題と評される「マクリーン判決を超える 」(愛敬浩二「判批」長谷部恭男ほか編『憲法判例百選Ⅰ〔第6版…

平成29年司法試験出題趣旨(行政法)の感想 その1:出題趣旨と 『基本行政法』との考え方の違い

平成29年司法試験論文式試験の「出題趣旨」が公表された。 本ブログの存在を筆者自身が殆ど忘れていたが,出題趣旨の公表を契機に,久しぶりに更新することとした。 といっても,今回は,行政法の出題趣旨で気になった1つの点だけに言及する。 (以下「出題…

「公共の安念」という「カミ」

司法試験受験生であれば,「公共の安寧」というキーワードは知っておかなければならない。 平成25年司法試験論文式試験公法系科目第1問(憲法)では,自治体(県)側の反論等で,東京都公安条例事件最高裁判決[1]の活用が求められており[2],この大法廷判…

平成29年予備試験論文憲法&平成30年司法試験論文憲法の対策(1) 25条の捌き方

Ⅰ はじめに ここのところ平成29年司法試験論文憲法・行政法の感想を書いてきたが,やや飽きてきてしまったため,「平成29年予備試験論文憲法&平成30年司法試験論文憲法の対策」と題して,今年の予備・来年の司法試験対策のブログを書いてみたいと思う。 今…

司法試験の勉強でのマーカーの色分け ~私の場合~

司法試験受験生時代、私は、伊藤塾の情報シートを使っていました。短答関係は、基本的には情報シートに一元化するように努めていました。 ちなみに、他に市販の短答式六法のような教材は基本的には使いませんでした。 マーカーの色分けをする勉強法もやって…

6月25日(日)ロースクール説明会等の告知

法科大学院協会主催、日弁連共催の企画 「ロースクールへ行こう!! 2017 ★列島縦断★ロースクール説明会&懇親会」(東京会場)が、6月25日(日)に開催されます。時間は13:30~17:30(13:00開場)、場所は日本大学のお茶の水校舎(東京都千代田区神田駿河台1ー…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(8) 成田新法事件の3要素の「重さ」

前回のブログ「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(7)」の続きである。 前回のブログでは,<刑事手続につき規定した憲法33条の行政手続(平成29年司法試験の特労法)への適用又は準用が認められるか?>という論点につき,憲法35条に関する川崎民商事件…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(7) 成田新法事件の千葉勝美調査官解説と平成29年司法試験

前回のブログ「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(6)」の続きである。 しばらく更新できないでいたため,忘れられてしまった[1]かもしれないが,めげずに書き進めていきたい。 yusuketaira.hatenablog.com 1 はじめに 前回のブログで,私は,次の(A)…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(6) 憲法33条のメイン論点

「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(5)」の続きである。憲法の感想は長らくお休みとなってしまっていたが,少しずつ書き進めていきたい。 yusuketaira.hatenablog.com 上記ブログで,私は,平成29年司法試験論文憲法・問題文3頁3行目のキーワード(誘導…

平成29年司法試験 公法系第2問の感想(4) 原告適格再考 避難のための道路通行利益と「日常生活」

前々回のブログ「平成29年司法試験 公法系第2問の感想(2) 原告適格の『正解』と『下位論点』」の「3」の部分で,平成29年司法試験論文行政法・設問1(1)の原告適格の論点につき,私は,厚く論じるべきメインの利益は,X2の通学のための日常生活上の道路…

平成29年司法試験 公法系第2問の感想(3) 要件裁量の認否の「正解」の導き方

前回(平成29年司法試験 公法系第2問の感想(2))と同じく,平成29年司法試験 公法系第2問(論文行政法)の感想の続きを書き進めることとする。 yusuketaira.hatenablog.com 1 はじめに ~司法試験の「古典」としての要件裁量の認否~ 本年も,複数の違法…

平成29年司法試験 公法系第2問の感想(2) 原告適格の「正解」と「下位論点」

今週は様々な「意見交換会」が続き,ここのところ中々更新できなかったが,今回は,平成29年司法試験 公法系第2問(論文行政法)の感想の続きを書き進めることとする。なお,行政法の方に筆者の興味が移ってしまったことから,平成29年司法試験 公法系第1問…

平成29年司法試験 公法系第2問の感想(1) 「早押しクイズ」としての司法試験行政法

平成29年司法試験 公法系第1問の感想は(1)から(5)まで書いたが,途中で少し飽きてきたので,今回は,予定を変更して,平成29年司法試験 公法系第2問(論文行政法)の感想を述べてみたい。 行政法は誘導がかなりある上,出題趣旨や採点実感も比較的具体的…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(5)

「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(4)」(平成29年5月22日ブログ)の続きである。前回までの補足をするにとどまる短い内容であるが,少しずつ書き進めていきたい。 yusuketaira.hatenablog.com さて,一年前の話に遡るが,平成28年司法試験論文憲法で…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(4)

「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(3)」(平成29年5月21日ブログ)の続きである。本日は,予定をやや変更し,前回の補足をするにとどまる内容となる。そのため,ブログも短いものとなるが,引き続き少しずつ書き進めることとしたい。 平成29年司法試験…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(3)

【注意】読みたくない司法試験受験生の方々は,以下の文書を読まないで下さい。 「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(2)」(平成29年5月20日ブログ)の続きである。引き続き少しずつ書き進めることとしたい。 1 序 ― 特労法と国家戦略特別法 ― 前回のブ…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(2)

【注意】読みたくない司法試験受験生は,以下の文書を読まないで下さい。 「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(1)」(平成29年5月17日ブログ)の続きである。ここ数日諸々の業務のため,殆ど問題や関連しそうな文献を見られていないのが残念であるが,感…

平成29年司法試験 公法系第1問の感想(1)

【注意】読みたくない司法試験受験生は,以下の文書を読まないで下さい。 予想が外れた。受験生に大変申し訳ない。 平成29年司法試験 公法系第1問すなわち憲法の論点は,外国人の人権((A)妊娠に関する自己決定権及び(B)身柄拘束に関する手続的権利)で…

「司法修習生への給費制復活」に関する記事と,政教分離「衝突」型事案の答案との共通点

1 「司法修習生への給費制復活」に関する記事に関して 先日,法律時報2017年4月号の司法修習生への給費制復活に関する記事[1]につき,複数の弁護士の先生方(あるいはそれ以外の方々)の,‘法科大学院’の教員が給費制の復活(一部復活)を批判して云々[2]と…

平成29年司法試験論文憲法の予想論点と活用すべき判例(2・完)

前回のブログ(平成29年司法試験論文憲法の予想論点と活用すべき判例(1))の続きである。 1 重要判例の具体的な活用について 前回述べたことの繰り返しになるが,本問の関連判例[1]すなわち,前回のブログで挙げた船橋市立図書館図書廃棄事件と,富山県…

平成29年司法試験論文憲法の予想論点と活用すべき判例(1)

既にツイッターでも述べたが,平成29年司法試験論文式試験公法系科目第1問(憲法)の予想(本命[1])につき,私は,新聞等の紙媒体のメディアへの助成の事案で,処分違憲の主張をさせる問題が出ると考える。 その根拠は,次の4点にある。 (1)周期的に…

司法試験における表現の自由と名誉感情の利益の調整(1)

司法試験における表現の自由と名誉感情の利益の調整(1) 平成23年司法試験論文式試験公法系科目第1問(憲法)の出題趣旨1頁では,「本問における表現の自由の制約の合憲性をめぐって問われているのは,表現の自由とプライバシーの権利の調整である」(下…

「憲法論」の答案で,規範を定立する前に,規制態様につき「刑罰」と書く必要がある場合

平成29年司法試験論文式試験・公法系科目第1問(憲法)のヤマの1つとも思われる堀越事件(最二小判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁)は,近時,同事件を担当された千葉勝美元最高裁判事自身により,「猿払事件大法廷判決を乗り越えた先の世界」[1]の判…

公法と司法試験と伊藤塾と私

弁護士・公法研究者の平 裕介(たいら ゆうすけ)と申します。 このたびブログをはじめました。 ここでの表現は、私個人の意見、感想等を述べるもので、私の所属団体、関連団体のそれとは関係のないものです。 私は、研究者として、行政法(公法)を専攻し、…