平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

平成29年予備試験論文憲法&平成30年司法試験論文憲法の対策(1) 25条の捌き方

Ⅰ はじめに

 

ここのところ平成29年司法試験論文憲法行政法の感想を書いてきたが,やや飽きてきてしまったため,「平成29年予備試験論文憲法平成30年司法試験論文憲法の対策」と題して,今年の予備・来年の司法試験対策のブログを書いてみたいと思う。

 

今回は,憲法25条が出題された司法試験(新司法試験)の過去問を検討する。

 

25条は,司法試験論文(憲法)では平成22年で出題されて以来,司法試験論文でも予備試験論文でも出題がない。

このように,「不気味」な論点であり,あの考査試験の先生が研究されているテーマに関わる人権でもあることから,潰しておく必要がある。

 

司法試験論文は,予備試験論文にはやや長いものとなるが,上記のように過去問が1つ(平成22年)しかないにもかかわらず,そろそろ(予備試験でも)出そうな人権であることから,この過去問を検討しておくべきであろう。受験生の方々が過去問を検討される際に本ブログも参考にしていただけると幸いである。

 

 

Ⅱ 平成22年の事案と予想される事案等(生存権関係)

 

(ア)平成22年の事案は,権利(抽象的権利)が具体化された後のケースであったのに対し,(イ)平成29年予備又は平成30年司法試験での予想される事案は,権利(抽象的権利)が具体化された給付制度が後退(減額等)するケースである。(ア)22年タイプの方は,以下の答案例(設問1部分の)のような規範(行政法判断代置的審査に近い規範)で処理すれば良いだろうが,(イ)のタイプの方は立法裁量あるいは行政裁量の判断過程統制審査の規範処理すべき(25条又は25条+14条)だろう(この点につき,下記で若干の補足をする)。

 

ただし,(ア)のような事案が再度出題されることも十分に予想される(たとえば,柴田憲司「車を借りると生活保護は廃止?」宍戸常寿編著『憲法演習ノート―憲法を楽しむ21問(弘文堂,2015年)300~303頁の事例問題(解説は303~320頁))から,(ア)の規範・あてはめも書けるようにしておく必要があり,22年を検討してく必要があるということになる。

 

また,(イ)については,宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開 第2版日本評論社,2014年)164~165頁の「生存権憲法的構成」の事例問題(解説は165~174頁)や,老齢加算廃止に関する木下和朗「第4問」原田一明=君塚正臣編『ロースクール憲法総合演習』(法律文化社,2012年)96~98頁の事例問題(解説は213~218頁)が大いに参考になる(母子加算の廃止を合憲・適法とした京都地判平成21年12月14日も参照。なお,母子加算制度は,自民党政権下で廃止されたが民主党政権下で復活した。)ので,よく読んでいただきたい。

 

 

Ⅲ 答案例(平成22年新司法試験・論文・憲法)とその検討

 

以下,いくつかの文献を参照しつつ[1],私なりに答案(答案例)を書いてみた。また,脚注で,答案例についてコメントを付している。不十分な点も多いと思われるため,批判的に読んでいただきたい。

 

なお,平等原則や選挙権の主張についてもオマケ的に書いてみたが,受験生の方々の参考程度にはなるかもしれない。ご笑覧いただきたい。

 

 

第1 設問

1 生活保護について[2]

本件でY市は,Xの生活保護の認定申請に対して却下処分をしている。そこで,Xは,同処分は[3]Xの生存権憲法(以下,法名は省略する。)[4]25条1項)を侵害するとともに,平等原則(14条1項)に反するものであるから,違憲であると主張する。以下,詳述する。

(1) 生存権(25条1項)侵害の主張

ア まず,Xが生活保護を受ける権利は,健康で文化的な最低限度の生活を営む「権利」として,25条1項により保障される。そして,同項の権利は,抽象的権利であるものの,Xの生活保護を受ける権利は,生活保護法(以下,「法」という。)19条1項により具体化されている[5]といえる。

 もっとも,Xは,Y市がインターネット・カフェやビルの軒先を「居住地」あるいは「現在地法19条1項2号)として認めないという制度運営を行っている[6]ことにより,Xの生活保護の申請が却下され,Xの生活保護を受ける権利が侵害されている。

〔論証〕  このような制度の運用は,法により具体化されたXの権利を制約するものであり,25条1項に反する。すなわち,「現在地」及び「居住地」(法19条1項2号)に該当するか否かについては,25条1項を具体化した法の目的(法1条)や趣旨に適合するように解釈運用すべきである

法1条は,生活に困窮するすべての国民」に対し「必要な保護」を行うとともに,「自立を助長」することを目的としている[7]。そして,法19条が「住所」(住民基本台帳法4条)という文言を用いず,あえて「居住地」や「現在地」という文言を用いた趣旨[8],多数の生活困窮者が生活の本拠を有していないこと(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法1条,2条)に照らし,広く生活困窮者を保護すべきものとする点にあると考えられ,これは「保護」だけではなく「自立」の助長という目的(法1条)にも適合する考え方といえる。そうであるとすれば,Xのように,シェルターでの居住実態はないものの,インターネット・カフェやビルの軒先で寝泊まりしている者については,当該店舗等の所在地が「所管区域内」(19条1項各号)にある場合には「居住地」または「現在地」を有する者として生活保護を認めるべきである。加えて,生活の本拠がない者は,「最低限度」(法1条,3条)以下の,いわば「生存」そのものが脅かされうる者といえることからしても,このような法の解釈運用がなされなければならない[9]

 Xも,生活の本拠がない上,持病があるにもかかわらず病院に行けない状況にあり,生命さえも脅かされる状況に追い詰められている者であることから,現に「生存」そのものが脅かされている者といえる。

 よって,Y市のXに対する生活保護申請の却下処分は,25条1項に反し,違憲である。

(2) 平等原則(14条1項)[10]違反の主張

 Y市は,インターネット・カフェやビルの軒先を「居住地」あるいは「現在地」と認める他の自治体があるにもかかわらず,このような法の制度運用を認めていない。そのため,XのようなY市内のインターネット・カフェ等で寝泊まりする者とその他の自治体のインターネット・カフェ等で寝泊まりする者との間の上記別異取扱いは,平等原則(14条1項)に違反する。

 この点に関し,地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果,その取扱に差別を生ずることがあっても,地域差が生じたことをもって違憲とすることはできないとする最高裁判例[11]がある。しかし,この判例は,条例制定権の認められる(94条)自治体間の区別について判示したものであるから,全国にわたり画一的に適用される必要がある法律の解釈運用についてその射程は及ばない。また,法が無差別平等の明文(2条)を定めていることに鑑みても,全国一律の統一的な法の解釈運用が求められているものといえる。

よって,Xとの関係でも,地域的差異を考慮して法の解釈運用を自治体によって別異に取り扱うことは不合理な差別をするものであるから,Yの却下処分は平等原則に違反する。

2 選挙権について

(1) 立法不作為による選挙権行使の機会の制限

Xは,住民登録が抹消されたことにより,衆議院選挙におい一時的ではなく継続的に投票をすることができないこととされている。そこで,Xは,「住所」要件を必要とする公職選挙法が「現在地」による投票を認めていないという立法不作為がXの選挙権の行使[12]を強く制限し,違憲であるから,Xは,次の衆議院議員選挙で選挙権を行使しうる地位にあることの確認訴訟(実質的当事者訴訟,行政事件訴訟法4条後段)及び国家賠償請求訴訟(国家賠償法(以下「国賠法」という。)条1項)を提起し,以下の主張をすべきである[13]

(2) 立法不作為の違憲の主張

〔論証〕  憲法は,国民主権原理前文,に基づき,全国民の代表である両議院の議員に投票することにより国政に参加する選挙権を国民固有の権利として保障し(15条1項,43条1項),併せて普通選挙の原則(15条3項)及び平等選挙の原則(44条ただし書)を規定しており,この趣旨を確たるものにするために選挙権の行使の機会も保障している。そのため,国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,そのような制限をするためには,制限することがやむをえないと認められる事由がなければならないというべきである。そして,同事由があるといえるためには,そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合であることが必要である。[14]

 以上を本件についてみると,Xが衆議院議員選挙で投票する権利の行使の機会も憲法上保障されているが,Xのように住所を有していないと選挙権を行使する機会が制限されている。すなわち,選挙権を行使するためには,「選挙人名簿」に登録されていること(公職選挙法21条1項等),同名簿登録のための住所要件(同項),そして「住民基本台帳」に記録されていること(同項,住民基本台帳法15条1項)が必要であり,さらに,住民基本台帳は「住民票」の編成により作成され(同法6条1項),住民票には「住所」が記載され(同法7条7号),この住所は地方自治法10条1項に規定する「住所」と同義であることから(住民基本台帳法4条[15],現行の法制度では,「生活の本拠」(民法22条)としての住所のない者には選挙権を行使することができないこととされている。

また,選挙人名簿への登録や住所を要件とする公職選挙法の趣旨は,主に自治体の区域を越える不正転入を防止することより選挙の公正を確保する点にある[16]が,Xのような特定の自治体のインターネット・カフェ等で寝泊まりする生活困窮者にかかる不正転入の具体的なおそれはない。よって,上記やむを得ないと認められる事由はないから,本件の立法不作為は,Xの選挙権行使の機会を奪うものであり,15条1項・3項,43条1項,44条ただし書に反し違憲である。

(3) 国賠法上の違法の主張

〔論証〕  さらに,Xは,本件の立法不作為は国賠法上,違法であると主張する。

すなわち,①国民に憲法上の権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,②それが明白であるにもかかわらず,③国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合には,国会議員の立法不作為は,国賠法1条1項の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。[17]

  本件では,①Xのような者に住所を要求することは実質的に不可能といえるため立法措置が必要不可欠であり,②それが明白といえる。そして,国会議員の任期(45条本文,46条)よりも長い7年前よりNPOから総務省に国政選挙における住所要件の改正を求める請願書が提出されていることに加え,資本主義の発展とともに半ば不可避的に生じるホームレスの国民を多角的に支援することは,少なくとも10年以上前から国会議員及び多数の一般国民に共通に認識されてきた社会的課題であるといえるから,上記③も満たす。よって,本件の立法不作為は国賠法1条1項の適用上,違法である。

第2 設問2

 1 生活保護について

(1) 生存権侵害の主張について

ア 想定されるY市の反論

Y市は,生活保護の財源を4分の1負担しており,生活保護制度はY市の財政における有限の財源を前提とするものであるから,インターネット・カフェやビルの軒先を「居住地」・「現在地」として認めないとの法の運用は,25条1項を具体化した法の目的や趣旨に適合する解釈運用の範囲内のものであると反論する。

また,Y市は,Xのように住所がなくなったホームレスであっても,団体Aのシェルターなどに居住すればそこを住所としてあらためて住民登録できるのであるから,Xのような者にまで生活保護の受給を認めると,かえってその「自立を助長」(法1条)することにはならず,逆に法の目的に反すると反論する。

イ 私見

この点につき,確かに25条1項の文言は抽象的であることから,常に財政上の理由を考慮することが許されないというわけではなく,また,「自立の助長」に資するか否かについては実質的に判断される必要があるものと考える。

もっとも,Xのように持病があり「医療扶助」を受けるために生活保護の申請をする者については,特に「保護」(1条)の必要性が高いものといえる。そこで,少なくとも,このように「生存」そのものを脅かされている者について,財政上の理由からインターネット・カフェ等を「居住地」・「現在地」に当たらないとすることは,25条1項を具体化した法の目的や趣旨に適合する解釈運用とはいえないものと解される。

また,団体Aのシェルターは,現在「飽和状態」であり,息苦しさを感じるほどであるから,起臥寝食の場として適当ではなく,そのような場所での日常生活を強いることはXの「自立の助長」に資するものではなく,かえってXの自立を妨げるものといえる。

よって,Y市の生活保護申請の却下処分は,25条1項に反し,違憲である。

(2) 平等原則違反の主張について

ア Y市の反論

Y市は,ホームレスがY市内に増えることによる市のイメージの悪化のおそれや,公衆衛生上の問題も生じうるなどの地域の実情に照らし,判例が容認する条例制定による地域差だけではなく,法19条1項2号に関して他の自治体とは異なる法の解釈運用を行うことついても,当然に予期されることであり,憲法上容認されているものであると反論する。

イ 私見

この点につき,ホームレスがY市内に増えることによる市のイメージの悪化という事情の考慮は,ホームレスになることを余儀なくされた者と「地域社会とのあつれき」(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法1条)をより大きくしうるものであり,同法の目的に反するものといえる。また,公衆衛生上の問題も抽象的なおそれにとどまるものといえ,むしろ適切な生活保護の受給によって対処すべき問題といえる。

よって,Y市の反論にあるような各事情を考慮して法19条1項2号に関して他の自治体とは異なる法の解釈運用を行うことは,当然に予期されることとはいえず,憲法上容認されているものではないから,Y市の却下処分は不合理な差別であり,平等原則(14条1項)に反し,違憲である。

 2 選挙権行使の機会の制限に関する主張について

ア 国の反論

() 被告国は,Xの主張する判断枠組みによるとしても,選挙に関する事 項には立法裁量が認められていること(47条参照)や,住所のないホームレスは住所を有する者と比較すると不正転入二重登録等のおそれが大きく,これを防ぐ有効な手段もないといえることから,住所のない者については選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であるから,Xの選挙権行使の制限は違憲ではないと反論する。

() また,立法不作為の「違法」(国賠法1条1項)性の点については,請願書が提出されたのは,国会ではなく総務省であることなどから,少なくとも,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合には当たらない旨反論することが想定される[18]

イ 私見

() 立法不作為の違憲性について

不正転入や二重登録等を防止しつつ住所のない者の選挙権の行使を認めるための手段の点については,例えば,在外選挙人名簿に類似した,(a)居住地・現在地を登録する選挙人名簿制度を整備すること,あるいは,(b)やむを得ず住所を得られない者に対して居住地・現在地とともに当該個人の氏名・年齢・性別・写真等が記載された選挙人カードを用いた選挙制度を整備することなどが考えられる[19]

確かに,(a)在外邦人については海外での現住所を前提としている点で本件とは事情が異なり,(b)上記選挙人カードが偽造されるおそれも否定できない。しかし,偽造については,刑事罰をもって事後的に処罰すればそのおそれは相当程度低減するし,(a)の在外公館投票のように一定の施設を投票場と指定した上で,(b)の選挙人カードの呈示を要件として投票をさせれば,不正転入や二重登録等は防止し得るといえる。

以上より,Xのような住所のない者についても,選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合とはいえず,やむをえないと認められる事由があるとは言えない。よって,本件の立法不作為は,Xの選挙権行使の機会の制限し,15条1項等に反するので違憲である。

() 国賠法1条1項の違法性について

確かに,ホームレスの選挙権行使の機会が制限されてきたという社会的事実は10年以上前か一般国民において問題視されてきたことといえる。しかし,このような社会問題すべてを国会で取り上げて立法措置を講じることができるわけではない。また,本件は,在外邦人選挙権訴訟の事例のように,国会が法律案を審議事項としてから10年[20]以上長期にわたって放置し,立法不作為に違法性が認められた事案と同視しうるものとまでは認められない。

よって,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合とまではいえないから,本件立法不作為は,国賠法上,違法ではない。

以上

 

 

Ⅳ 若干の補足(憲法25条1項の判断枠組みに関して)

 

前記のところで,(ア)平成22年の事案は,権利(抽象的権利)が具体化された後のケースであったのに対し,(イ)平成29年予備又は平成30年司法試験での予想される事案は,権利(抽象的権利)が具体化された給付制度が後退(減額等)するケースであり,(ア)22年の方は,以下の答案例(設問1部分の)のような規範(行政法の判断代置的審査に近いもの)で処理すれば良いだろうが,(イ)の方は,立法裁量あるいは行政裁量の判断過程統制審査で処理すべき(25条又は25条+14条)だろうと述べた。

 

具体的には,判断枠組みの「論証」について次のような違いが出てくることとなるだろう。

 

(ア)権利(抽象的権利)が具体化された後のケース(平成22年型)の判断枠組みの記載例

 

() 判断枠組み

このような法制度の解釈運用は,法により具体化されたXの生存権を侵害するものであり,25条1項に反する。すなわち,指導や保護廃止の必要性があること大前提となる「資産」の「活用」(法4条1項)[21]を満たすか否かについては,25条1項及び同項を具体化した法の目的(法1条)や趣旨に適合するように解釈運用をすべきである[22]

 

(イ)権利(抽象的権利)が具体化された給付制度が後退(減額等)するケースの判断枠組みの記載例

 

() 母子加算の廃止に伴う本件処分は,法令・基準の基準額すなわち「最低限度の生活」(25条1項,法8条2項)の需要を満たすための「基準」(同条1項)の内容を変更する行為を前提とするものであるから,不利益変更の禁止(法56条)そのものに当たるものとまでは言い難く[23]厚生労働大臣の判断に一定の専門技術的・政策的裁量が認められうる[24]と言わざるをえない。

() 判断枠組み

もっとも,いったん法令・基準が特定の基準額を「最低限度の生活」として設定した以上,それを減額することは,最低限度の生活水準を下回ることになる蓋然性が高いものといえるから,裁判所が事実に即して実質的に審査すべきである[25]。そこで,厚生労働大臣判断の過程において考慮・重視すべき事情を考慮・重視せず(考慮不尽),考慮・重視すべきではない事情を考慮・重視すること(他事考慮過大考慮[26])などにより,その判断の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合には,裁量権の逸脱濫用となり違憲(25条1項違反)・違法[27]となるものと考える。

 

 

 

最後に,繰り返しになるが,以上の答案例や記載例等は,不十分な点が多いものと思われ,批判的に読んでいただきたいわけではあるが,出来が悪いと感じるからといって,あまりに感情的なコメントを書くのはどうか控えていただきたい

 

 

例としては,「このハゲーーーーーーっ!!」(下線は引用者)である。

 

   

 

[1] 本答案の作成については,主として,①公法系科目1位(161点)の再現答案(辰已法律研究所『司法試験 論文全過去問集1 公法系憲法【第2版】』(平成27年)210~213頁),②大島義則『憲法ガール』(法律文化社,2013年)61頁以下,③木村草太『司法試験論文過去問 LIVE解説講義本 木村草太 憲法』(辰已法律研究所,2014年)を参考にした。なお,④西口竜司ほか監修『平成22年新司法試験論文過去問答案パーフェクトぶんせき本』(辰已法律研究所,平成23年)30頁によると,上記①の1位答案は,161.90点(論文総合228位の方の答案)である。

[2] 問題文3頁最終段落の1行から項目立てをし,タイトルを付けただけである。「第2 選挙権について」も同様である

[3] いわゆる処分違憲適用違憲)の問題であることをこのように明記すること。

[4] 憲法の答案では,憲法法名は,このように省略すると良いだろう。

[5] 基本的な事項であるが,このようなところを書き落としてはならない。ただし,このように,短く書くと良かろう。

[6] 問題文2頁第6段落3~4行目を殆どそのまま写し,関係条文(法19条1項2号)を書き加えただけである。写経。

[7] 1条のキーワードを写しただけである。写経。

[8] 「目的」だけではなく「趣旨」のあてはめも行っている。

[9] 出題趣旨第2段落の内容を考慮した記載である。

[10] 木村・前掲注(1)③文献は,「平等権」とするが,最大判平成33年10月15日(憲法判例百選Ⅰ[第6版]34事件)の下飯坂潤夫裁判官・奥野健一裁判官の補足意見では「憲法14条の原則」(下線は引用者)と表現されており,「平等原則」(だけ)で良いと思われる。

[11] 最大判平成33年10月15日(憲法判例百選Ⅰ[第6版]34事件)を指すものであるが,判例名や年月日を書く必要はなかろう。

[12] 最大判平成17年9月14日(憲法判例百選Ⅱ[第6版]152事件)も,選挙権それ自体の制限というよりも,「選挙権の行使」の制限行使の機会を奪うこと)である点を強調しているものと思われる。

[13] 確認訴訟(実質的当事者訴訟)については時間・スペースがなければ,省いてもおそらく合格レベルには達するだろう。

[14] 国賠法上の違法の主張の〔論証〕と混同しないように要注意である。また,どちらか一方の判断枠組み=規範(およびそのあてはめ)しか書かないというのもNGである。なお,平成22年の本試験では,上位答案であってもこの〔論証〕を正確に書けなかったものが(意外と多く)あったが,選挙権については(新)司法試験で(この22年の問題で)1度出題されており,他の受験生もかなり準備しているところであるから,規範のキーワードなどは正確に書けるようにすること。

[15] 地方自治法10条1項の「住所」は,民法22条の住所と同義と解されている。

[16] 大島・前掲注(1)②文献59頁,62~63頁,65頁*4参照。

[17] 立法不作為が国賠法1条1項の違法とされる場合の判例の3要件=①必要不可欠性,②明白性,③正当な理由なき長期の懈怠を記憶しよう。なお,あてはめでは,平成29年以降の問題でも③が特に問題になり易いものと予想される。

[18] 時間が限られているため,判例の3要件のうち,①や②の要件については意図的に争点としないようにしたが,時間・余裕があれば書いて良い(ただし困難)。

[19] 西口・前掲注(1)④文献38頁の153.86点(公法系科目論文8~10位)の再現答案(論文総合49位の方のもの)でも,似たような手段の検討がなされていた。LRAのあてはめの応用をするところといえるだろう。なお,マイナンバーのようなコード・番号のようなものを付加して個々人の特定性を高めてもよい(二重投票等をより防ぎ易くなるため)が,秘密選挙の原則(憲法15条4項前段)に反するような手段とならないように注意する必要がある。

[20] 在外邦人選挙権訴訟の事例でも実質的な審議はなされていなかったが,審議事項に挙がった時点から「10年」の起算がなされている。

[21] 平成22年とは異なり,資産活用要件(生活保護法4条1項)の認否が問われる事案を前提とした論証例である。

[22] 平成22年の上位合格答案等を参考にした記載(論証)例である。スラスラと書けるようになりたいところである。

[23] 最判平成24228の立場である。宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開 第2版日本評論社,2014年)173頁は,同判例が「制度後退禁止原則に触れず、また保護基準の変更に生活保護56条の適用を認めなかった」(下線・太字は引用者)と説明する。なお,判例で否定され,さらに研究者でも肯否が分かれる「制度後退禁止(原則)」という用語については,あえて触れないという戦略でも良いかもしれない

[24] 原告(原告訴訟代理人弁護士)の主張の場合には,「広範な裁量」「広い裁量」という(被告に有利な)言葉は避けるべきである。

[25] 宍戸・前掲注(25)173頁参照。最判平成24年2月28日の判示からすれば,本問では,原告主張段階においても,裁量の幅が狭いなどの記載はしなくても良いかもしれない。

[26] 宍戸・前掲注(25)174頁に「過大考慮」という記載があるから,このような用語を使って良いだろう。

[27] 憲法の答案では,違法(行政法)は直接は問題とならない(ことが多い)が,この部分では,この程度の記載は許されるし,実務では基本的には違法の問題として捉えられているといえるから,「違憲・違法」などと書く分にはOKだろう。

 

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