平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

LOVE 司法試験 ONLY (平成27年論文行政法)

世は空前のTOKIOブームのようだが,平成30年司法試験を受ける受験生においては,もちろんカラオケで「オンリー・ユー」などといって騒いでいる場合ではない。

直前期は「オンリー・司法試験」[1]である。

 

 

さて,一般論として,司法試験受験生から本試験の過去問の質問を受ける立場にある場合,特に直近3年ないし5年分くらいの過去問についてはよく聞かれるわけであるが,その場で問題を一から読んでいては迅速にそれなりの回答することは普通できない。そのため,質問を受ける側も,大体どんな問題かくらいは直ぐに思い出せるようにしておいた方がよいし,そのためには受験生と同様に実際に構成をメモしてみたり,あるいは起案してみたりすることが必要になってくるはずである。

 

これを平成30年司法試験論文行政法(その対策)との関係でみると,多くの受験生が差止訴訟や損失補償が出るのではないかと予想し,直近でそれらが問われた平成27年司法試験論文行政法を比較的しっかりと検討することが予想され[2],特に平成30年司法試験の直前期には,平成27年司法試験論文行政法の質問が複数(か多数)寄せられること予想される。

実際に最近,平成27年に関するご質問をいくつかいただいており,今後もこれが続くのではないかと思う。

 

そこで,質疑応答の合理化ないしその時間の省エネ化を図るべく,また,直前期に答案の流れや論証を再確認等するための読みものとして(外食する場合の待ち時間などにいかがでしょうか),一応の検討結果にすぎないものではあるが,次のとおり本ブログに〔起案例〕を掲載することとした。

 

〔起案例〕には,脚注を付したので,適宜参考にしていただきたい(参考にならないものもあるかもしれないが)。もちろん今年はまだ司法試験を受験しないが受験勉強中という方にもご一読頂けると幸甚である。

 

 

〔起案例〕

1 設問[3]

1 差止訴訟の提起

 Xは,消防法(以下「法」という。)10条4項の「技術上の基準」に適合しないとして法12条2項に基づきなされる本件命令が発せられることを事前に阻止するために[4],本件命令の差止めの訴え(行訴法(以下,法律名を省略する。)3条7項)を提起することが考えられる。

2 「一定の処分…がされようとしている」(3条7項[5][6]

(1)「一定の処分」(3条7項)のうち,「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体[7]が行う行為のうち,その行為によって,直接[8]国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律[9]上認められているものをいう。[10]

  本件命令は,これが発せられると法12条2項より移転義務が生じるものであり,不利益処分(行政手続法2条4号本文)であるから,典型的な「処分」といえる。

(2)[11]一定の」(3条7項)といえるためには,裁判所が請求を特定して判断することができる程度の特定性が必要と解される[12]

  本件命令は,本件取扱所の「修理」や「改造」ではなく,「移転」(法12条2項)命令に特定されており,上記特定性の点も満たすため「一定の」といえる。

(3)処分が「されようとしている」(3条7項)とは,処分がされる一定の蓋然性[13]のある場合と解される。

 本件では,本件葬祭場の営業が開始されれば,Y市長が本件命令を発することが確実[14]とのことであり,平成27年5月末には営業開始が予定[15]されている。ゆえに,本件命令がなされる具体的な時期の予告があるといえ,Xは本件命令に従う意思がないため,上記相当程度の蓋然性があるから,一定の処分が「されようとしている」場合といえる。

3 「重大な損害を生ずるおそれ」(37条の41項本文)[16]

【論証】「重大な損害を生ずるおそれ」については,同条2項の各事項に係る事実に照らし,処分より生ずるおそれのある損害が処分後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解する。

 上記判断枠組みを本件に即して具体的に検討するにあたっては,①取消訴訟等の救済による損害回復の困難性,②事業者の事業の基盤揺るがしかねない損害となるかなどを総合的に考慮すべきものと考える。[17]

 ①本件命令が出されると直ちにウェブサイトで公表され,顧客の信用を失うことになる[18]。そして,一度失われた顧客の信用はいったん喪失すると容易には回復できないものであり,取消訴訟の提起,執行停止の決定等での救済による損害の回復は極めて困難である。また,②Xは本件取引所で平成17年から[19]10年間も事業を営み信用を得てきたことからしても,かかる信用の失墜は,Xの事業の基盤を揺るがしかねない損害といえる。

 よって,差止めを命ずる方法によるのでなければ救済が困難といえ,本件では「重大な損害を生ずるおそれ」も認められる。

4 「損害を避けるため他に適当な方法がある」(37条の41項ただし書)

【論証】「損害を・・・方法があるとき」[20]補充性)とは,個別法において差止めを求める処分の前提となる処分が規定されており[21]当該処分の取消訴訟を提起し取消判決を受ければ,当然に後続する処分[22]をなしえなくなることが法定されている場合をいう[23]ものと解する。

 本件では,上記のような規定が法定されているわけではないので,補充性の訴訟要件も認められる。

 Xは,前記のとおり不利益処分という本件命令の名宛人であるため,「法律上の利益を有する者」(原告適格,37条の4第3項・4項)といえる。

 以上より,訴訟要件を満たすので,差止めの訴えが認められる。

第2 設問2

1 法・政令の趣旨,本件基準の法的性質等

 本件命令が適法と認められるか[24]に関し,まず,危険物政令(以下「政令」という。)9 条1項1号ただし書の趣旨,本件基準の法的性質等につき検討する[25]

 同号ただし書は,法10条4項の「技術上の基準」に関し,同項で委任を受けた政令19条1項により準用される規定であり,委任命令としての法的性質を有する。そして,政令9条1項1号ただし書は「市町村長等が安全であると認めた場合」についての例外を定めるところ,この「安全」性については,地域の気候や土地の利用状況等[26]地域の特性[27]を考慮の上判断されるものとして要件裁量を認める趣旨に出たものと考えられる。そうすると,本件基準は,行政の内部基準として法の委任に基づかずに定められた行政規則裁量基準であり,行政手続法上の「処分基準」(同法121項)としての法的性質を有する[28]ものといえる。

2 本件基準①及び同②の合理性の認否

(1)【論証】処分基準(行手法121)が定められる趣旨は,不利益処分の公正さを確保し,その相手方の権利利益の保護に資するなどの点にある。そこで,公正・平等な取扱いの要請,相手方の信頼[29]の保護等の観点から,公にされている処分基準の定めが法令の趣旨に適合する合理的なものである場合には,その定めと異なる取扱いをすることが相当といえる特段の事情(個別事情)がない限り,そのような取扱いは裁量権逸脱濫用するものとして違法となるものと解される[30]。そして,Xの問合せに対してY市職員から本件基準に照らした説明がなされている[31]ため,本件基準は公にされており,上記法的効果を有するものといえる。

(2)本件基準①の合理性

 政令9条1項1号ただし書の趣旨は,事後的な事情変更があった場合に法12条2項に基づく移転義務が生じる事態をできる限り避けようとする[32]点にある。しかし,建築基準法上,工業地域では一般取引所を建築でき,倍数制限がない[33]にもかかわらず,本件基準①・三は,事情変更があっても倍数50を超える場合には一律に保安距離の短縮を認めないこととしており,50という数値に特に客観的な根拠があるわけではないから[34]上記の法及び政令の趣旨に反するものであって合理的なものとはいえない

(3)本件基準②の合理性[35]

 本件基準②は,同③の防火塀の高さを前提に短縮限界距離につき定めているが,同③の高さより高い防火塀を設置する場合等についても,倍数10以上の場合には一律に同距離を20メートルとしている(同②一(ろ))。しかし,同③の高さより高い防火塀を設置するか否かに係る事情を一律に考慮できないこととされている上,20メートルという数値に特に客観的な根拠があるとはいえないのに同事情を一切考慮できないように規定されていることから,本件基準②の内容は,上記の法及び政令の趣旨に反し,不合理である。

 したがって,本件では,本件基準①及び②を適用すべきでない。

(4)個別事情の有無

 さらに,仮に本件基準①・②が画一的・硬直的なものではなく個別事情を考慮して例外を認めるものと解され,合理的といえるとしても[36],上記個別事情の有無が問題となる。

 (ⅰ)本件取引所は,倍数55,短縮限界距離に関係する距離が18メートルであるため,本件基準①及び②を僅かに満たさないものにすぎない[37]。また,(ⅱ)同③の水準以上の高さの防火塀や,政令で義務付けられた水準以上の消火設備の設置をする用意があるとXが述べていること,(ⅲ)Xは倍数を減らすと経営が成り立たなくため事実上倍数を減らせないこと,(ⅳ)Xの所有する敷地内では,本件取扱所を本件葬祭場から20メートル以上離れた位置に移設することは不可能であり,同敷地外に移転する場合には巨額な費用を要することになること[38]も考慮すると,[39]本件では,本件基準と異なる取扱いをすることが相当といえる個別の特段の事情があるというべきである。

(5)よって,本件基準が合理的であるとしても,本件では個別事情を考慮すべきであるから,考慮不尽となる結果,裁量権の逸脱濫用があるといえ,本件命令は違法である。

3 政令23条の適否

(1)政令23条と政令911号ただし書との関係[40]

 政令23条と政令9条1項1号ただし書とは要件を異にするものであり,また,政令23条は,一般基準に適合しない特殊な施設等の出現に備えて設けられ[41],製造所等の設備等に応じ,より柔軟に一般基準の適用を除外するものとする趣旨に出た規定と解される。とすると,政令23条は,そもそも政令911号ただし書の基準を適用すべきでない特例を定めたものと考えられる。

(2)本件取扱所については,本件基準③の水準以上の高さの防火塀や,政令で義務付けられた水準以上の消火設備の設置をする用意がある旨Xが述べていることなどからすれば[42],「火災の発生及び延焼のおそれが著しく少なく,かつ…被害を最少限度に止めることができると認めるとき,又は…同等以上の効力があると認めるとき」に当たりうる。

 よって,Xが法定の基準以上の防火措置をとることにより,政令23条が適用される余地もある。ゆえに,同条を適用しないことは,同条における要件認定に係る裁量権の逸脱・濫用[43]といえ,本件命令は違法となる。

第3 設問3

 Xは,本件命令により,本件取扱所を移転して損失が生じたとして移転にかかった費用を請求できるか[44]

2 判断基準[45]

【論証】憲法293の趣旨が特別の犠牲に対する公平の観点からの救済にあり財産権(同29条1項)保障の実質化と財産権の側面における平等原則(同14条1項)の実現にあることからすると,損失補償の要否は,損失が特別の犠牲に当たるか否かで判断すべきである[46]。すなわち,侵害行為の対象の特定性形式的基準)と,侵害行為が財産権の本質を侵すほど強度なものか実質的基準)により決すべきであり[47],実質的基準については,規制の目的,②規制の程度,③事後的な事情変更に係る事項[48]考慮する。

3(1)本件では,まず,本件命令はXのみに対するものであるから,侵害行為の対象の特定性はあるといえ,形式的基準を満たす。

(2)次に,実質的基準についてみると,本件命令(122[49]が発せられるための要件を規定する121は,取扱所の所有者等に対し,104の技術上の基準に適合するように維持すべき義務を課している[50]。そして,法の目的が国民の生命,身体及び財産を火災から保護することなどにあること(法1条[51])に照らすと,上記維持義務(法12条1項)は,公共の安全のための警察目的(消極目的)の規制であり,取扱所の所有者等は許可を受けた時点以降も継続的に基準適合状態を維持する必要があるとの趣旨に出たものと解される[52]

 とすれば,②規制の程度が強く,かつ,損失を受ける者が事後的な事情変更に係る事情の発生をあらかじめ計画的に回避できなかった場合に限り,実質的基準を満たし,損失補償が必要となると考える。[53]

 本件では,本件取引所の移転につき巨額な費用[54]を要しており,さらに,本件取引所の移転により失った顧客の信用は容易には回復できないものであることから,規制の程度は強いといえる。

 また,Xが本件取扱所の営業を始めた平成17年の時点では,本件葬祭場の所在地は,第一種中高層住居専用地域(都市計画法9条3項)とされていたのであり,同地域では,葬祭場の建築は原則として不可能とされていた(建築基準法48条3項本文)。そのため,10年後の平成26年都市計画決定で第二種中高層住居専用地域に指定替えがなされることや,これに伴い小規模な葬祭場が建設されること(同条4項本文等)などを抽象的に予見しうる余地はあったとしても,Xが指定替えに関する各事情の発生を平成17年の時点で具体的に予見することは不可能か極めて困難であったといえる。加えて,確かに指定替え前の第一種中高層住居専用地域においても学校や病院等は建築可能とされていたが,これらは小規模な葬祭場の場合とは異なり当該地域の実情に応じて計画的に建設されることから,学校や病院等の建設については本件取引所の設置時に計画的に回避可能な事情といえるとしても,本件葬祭場の新設は計画的に回避可能な事情とはいえない[55]

 よって,Xの損失に係る侵害行為は財産権の本質を侵すほど強度なものであり,受忍限度を超えるものといえる。

4 以上より,Xの損失は特別の犠牲に当たる[56]ため,Xは,Y市に憲法29 条3項に基づき,損失補償を請求できる。

                                    以上

 

なお,仮に私が平成27年司法試験論文行政法を採点・評価する場合には,かなり大雑把なものではあるし(一応の目安くらいにしかならない),いかがなものかという点もあるかもしれないが,次のような〔採点基準〕によるだろうと思われる。参考程度にご笑覧いただけると幸甚である。

 

 〔採点基準〕 

【設問1(配点:20/100点)の採点基準】

1 消防法12条2項の移転命令の差止訴訟を提起すべきこと・・・2点程度

2 一定の処分の蓋然性(訴訟要件①)の検討・・・ 3点程度

3 重大な損害(訴訟要件②)の検討・・・7点程度

4 上記1・2以外の訴訟要件の検討・・・3点程度

5 裁量点・・・5点程度

(「裁量点」部分については,本試験同様,①事案解析能力,②論理的思考力,③法解釈・適用能力,④論理的構成力及び⑤文書表現能力のそれぞれの程度により評価するものとする。設問2・3についても同じ。)

 

【設問2(配点:50/100点)の採点基準】

1 法12条2項の移転命令の要件が,法10条4項,政令9条1項1号の技術上の基準不適合であること,同号但書には要件裁量が認められると解すること,本件基準の性質等の検討など・・・8点程度

2 要件裁量の逸脱濫用の主張1:本件基準①の不合理性の主張・・・7点程度

3 要件裁量の逸脱濫用の主張2:本件基準②の不合理性の主張・・・5点程度

4 要件裁量の逸脱濫用の主張3:個別事情の考慮に関する主張・・・7点程度

5 危険物政令23条に係る違法事由の検討・・・/8点程度

6 裁量点・・・15点程度

 

【設問3(配点:30/100点)の採点基準】

1 損失補償の要否に関する規範の定立(特に実質(的)基準)・・・4点程度

2 形式(的)基準への言及(同基準の検討)・・・2点程度

3 実質(的)基準・①規制目的の検討・・・7点程度

4 実質(的)基準・②規制の強度等の検討・・・4点程度

5 実質(的)基準・③事後的な事情変更に係る事項等の検討・・・5点程度

6 裁量点・・・8点程度

 

直前期の皆様,受験が終わったら,カラオケで「LOVE YOU ONLY」を歌って盛り上がりましょう。

 

 

________

[1] TOKIO「LOVE YOU ONLY」(1994年)参照。

[2] 差止め訴訟や損失補償は,それぞれ平成30年行政法(行政救済法分野からの出題)のヤマの1つである。差止訴訟は平成23年平成27年と出題されており,訴訟類型としての重要性(平成16年改正法で法定)にも照らすと,3~4年に一度出題されると予想される。損失補償は,平成24年平成27年と出題されており,概ね3年に1度出る傾向があると予想され,全受験生がしっかり準備をしてくる論点と思われる。

[3] ①最後の設問が「設問4」の場合,②設問3までであっても設問の中に「小問」がある場合(実質的には設問4の場合と同程度の論点数),③最後の設問の配点割合が「20」以上の場合には,特に,時間管理に注意することが重要となる。人によっては時間を余らせるように書いていってもよいだろう(余らないことが多い)。

[4] 「本件命令が発せられることを事前に阻止するために,」という部分は「設問1」の記載をそのまま写した部分である。要するに,冒頭部分の記述は,①設問の記載と②「本件命令」の根拠法規・処分要件規定(冒頭部分では法律レベルのみで足りるだろう。ここではいずれも問題文2頁最終段落・(3)に明記されている条項を記載しただけである。)をつなげただけの文章にすぎない。ちなみに,この①(設問の記載)につき,オウム返しは不要という見解もあるだろう。しかし,本答案のこの部分のように,あまり長くならないのであれば,書いてしまっても問題ないだろうし,出題趣旨との関係では書いた方がむしろ採点者が読み易いと感じる場合もあるように思われる。

[5] 関連する条文として,(a)行訴法3条7項のみを挙げる立場(小林久起『司法制度改革概説3 行政事件訴訟法』(商事法務,2004年)(以下,「小林・行訴法」という。)187頁,神橋一彦『行政救済法(第2版)』(信山社,2016年)(以下,「神橋・救済法」という)227頁),(b) 行訴法3条7項と行訴法37条の4第1項とを一緒に挙げる立場(中原茂樹『基本行政法[第3版]』(日本評論社,2018年)(以下「中原・基本行政法」という。)があるようである。過去問の出題趣旨や採点実感からは,司法試験の考査委員がいずれの立場に立ったかは明確ではないが,平成27年司法試験の採点実感等に対する意見(公法系科目第2問)3(1)が「差止め訴訟を挙げた上で,行政事件訴訟法第3条第7項及び第37条の4に規定された『一定の処分…がされようとしている』,『重大な損害を生ずるおそれ』等の訴訟要件について論じていれば,一応の水準の答案と判定した」としていることなどから,(b)の立場に立っても良いようにも思えるが,この記述では(a)か(b)かなお不明確であるといえるため,本答案は行訴法の立案担当者(小林久起)の立場((a)の立場)に立っている。

[6] ①処分性,②特定性及び③蓋然性の3つの要件(いずれも行訴法3条7項の文言の話)を漏らさず素早く書くことが求められる。②・③のどちらかを落とす答案をみることが少なくないが,ここで差を付けられるのは勿体ない。また,特に書くのが遅い人などは腕・手の筋トレをする必要がある。司法試験は筋力も要求している側面があるというほかないから(その当否はここでは検討しない),筋力勝負に負けない体作り(腕作り)も重要である。

[7] 「公共団体」を「地方公共団体」とする誤記をみることがあるが要注意である。

[8] 「直接」を落とす答案をみることがあるが,要注意である。判例の定式を書き間違えると,短答式試験に引き直せば3点(あるいはそれ以上)失うと思っておいた方が無難である。

[9] 「法令」ではなく「法律」である。要注意。

[10] 本件命令は,典型的な行政行為(法律行為的行政行為・命令的行為・下命)であり行政手続法上の不利益処分であることから,特に時間がない場合(例えば答案構成までに時間を45分以上使ってしまった場合)などには,処分性の判例の定式は省略した方が良い場合があると考えられる。

[11] このようなナンバリングをする場合,「次に」,「さらに」などの接続詞は要らないだろう。

[12] 小林・行訴法186頁参照。同頁は,「『一定の処分又は裁決』とは、差止めの訴えの要件を満たしているか否かについて裁判所の判断が可能な程度に特定される必要があると考えられます。」(下線は引用者)とする。

[13] 中原・基本行政法396頁(「一定の処分がされる蓋然性があることが必要である。」)や,神橋・救済法227頁(「処分がなされる一定の蓋然性が必要とされることになる」)と同様の立場に立つ記述である。差止め訴訟による救済の必要性を基礎づける訴訟要件である。

[14] 会議録・弁護士E第1発言の一部をそのまま書き写した部分である。

[15] 問題文2頁第2段落3行目参照。

[16] 文言が重複することになるので,第1の3や4の小タイトルは付けなくてもよい(行訴法の条文ナンバーは忘れず書くこと)。

[17] この段落は,省略した上,あてはめのところで①・②の考慮事項を書いてもOKである。

[18] 会議録・弁護士D第1発言の一部を殆ど書き写した部分である。

[19] 問題文2頁第1段落3行目参照。

[20] 「4」のタイトル(一行上の行)で文言を引き写しているため,ここでは文言の一部を省略している。

[21] ショート・バージョンの場合,個別法において差止めを求める処分の前提となる処分が規定されている場合をいう(ものと解する)。と書くと良い。

[22] 後続処分とは,差止めを求める処分のことを意味する。

[23] 神橋・救済法229頁参照。実質的当事者訴訟等の提起が可能であることは含まないものと解していることも(一応)含んでいる表現である。

[24] いわゆる「オウム返し」に近い記載である。書き出しに迷うくらいならば設問の一部をこのように(殆ど)書き写すというのもアリだろう。

[25] 根拠法規・処分要件規定の趣旨や,法令以外の内部基準の法的性質・法的効果については,会議録等における明確な誘導(会議録・弁護士D第4発言)がなくても答案に書く必要がある(小タイトルを付けた上で小タイトルにもキーワードを書く必要があるかはどちらでもよいと思うが)。

[26] 西口竜司ほか監修『平成27年司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本』(辰已法律研究所,平成28年)(以下「ぶんせき本」という。)92頁の150.23点(公法系科目30位,論文総合20位)の再現答案(以下「超上位答案」という。)の記述を参考にした。

[27] 宇賀克也『行政法概説Ⅰ 行政法総論〔第6版〕』(有斐閣,2017年)326頁は「行政裁量が認められる根拠」の1つとして「全国一律の基準を定めることが適当でなく,地域の特性や地域住民の意見を斟酌して決定すべき事項については,法律であらかじめ行政を全面的に拘束してしまうべきではない」とする。ゆえに,本問では<専門的・技術的(or政策的)な判断を要する>といった論述をせずに,「地域の特性」というところから書いていく方がベターといえよう。

[28] ①行政規則,②裁量基準or解釈基準,③審査基準or処分基準という内部基準の法的性質の‘3点セット’を書けるようにしよう。

[29] 審査基準の場合とは異なり,不利益処分の場合であることから,いわば市民の<プラスの信頼>とは異なる「信頼」(後掲最三小判平成27年3月3日参照)といえよう。

[30] 最三小判平成27年3月3日(平成27年度重要判例解説・行政法6事件)の次の判示を取り入れた論述(殆ど論証パターン部分)である。特段の事情(裁量基準には定められていないが,法の趣旨に照らすと考慮すべきものと解される個別事情)がある場合,逆に内部基準と異なる取扱いをしなければ違法となるものと解するということである。なお,同判例は,不利益処分についての処分基準で,かつ裁量基準がある場合についてのものではあるが,審査基準(行政手続法5条1項)の場合にも応用可能と考えられる。他方,裁量が否定される場合の行政規則(解釈基準)の場合については,解釈基準の内容につき「合理的」か否かという規範ではなく,(ⅰ)解釈基準に示された「解釈が正しいか」否かという規範によるべきであり(→正しい場合には,そのあてはめの審査をし,誤っている場合には(裁判所が示す)正しい解釈によることになる。中原・基本行政法159~160頁のコラム参照。),かつ(ⅱ)裁量基準の場合に登場するような個別事情は考慮すべきではないものと解される。ちなみに,(ⅰ)につき,解釈基準において示された「解釈が正しいか」否かは結局のところ法の趣旨(・目的)に適合するものといえるか否かによることになろう。そうすると,裁量基準が登場する場合の処理と解釈基準が登場する場合の処理との大きな違いは,個別事情の考慮の審査をするか否かという点なのではないかと考えられる。

[31] 問題文2頁第3段落参照。

[32] 会議録・弁護士E第3発言第一文を要約したものである。ぶんせき本94頁の超上位答案も参照。

[33] 会議録・弁護士D第5発言第2文を殆どそのまま書き写した部分である。

[34] 一律に数値基準で判断するがその数値に客観的な裏付けがあるとはいえないような場合には,ある程度,使い回しの効く表現といえるだろう。裁量基準で量的(数値)基準が出てきた場合に同様の論述をすると最低限守れる答案を書けるように思われる。

[35] ぶんせき本の超上位答案は触れていないし,必ずしも会議録の誘導から導くことのできる記載ではないよう思われる。ただし,出題趣旨では本件基準②の合理性の点も指摘しなければならないとされているため,本答案ではこの点も書いている。

[36] 裁量基準の合理性が認められることを前提としても,個別事情を考慮すべきである旨の主張を書いておく必要がある。

[37] 出題趣旨参照。

[38] 「特段の事情」に係る(ⅱ)~(ⅳ)の事情につき,問題文3頁第1段落参照。

[39] ここで「特段の事情」に係る(ⅰ)~(ⅳ)の事情につき,一定の評価を食わせる記述ができればより良いだろうが,実際に司法試験の制限時間内でそこまでやるのは中々難しいように思われる。

[40] 本問のように司法試験では,2つの規定の「関係」を問われることがあるところ,まずは原則的な規定と例外規定(特例規定)という関係が聞かれているかどうかを検討してみよう。一般法と特別法の考え方の応用ともいえる。

[41] 会議録・弁護士E第5発言の一部を要約した部分である。

[42] ここは仕方なく重複記載をした部分である。

[43] 本来は,政令23条の「・・・認める」(2か所)に要件裁量を認めることの根拠(←文言と判断の性質)を書く必要があるが,政令23条の主張については,比較的配点が少ない(時間・答案スペースを殆ど割けない)ため,この程度の短い記載にとどめている。

[44] なお,訴訟類型は問われていないので,実質的当事者訴訟(行訴法4条後段)のうちの給付訴訟を提起すべきことについては書く必要はないと考えられる。また,<・・・特定多数人の利益や効用をもたらすものであるから,「公共のために用ひる」(憲法29条3項)との要件を満たす>ことは明らかなので,その論述も必要ないだろう(採点実感3(3)、4(4)参照)。

[45] 憲法の論文でも使える論証パターンである。憲法では平成18年新司法試験論文で損失補償の諸論点が聞かれている(このことに関し,さしあたり,木村草太『司法試験論文過去問 LIVE解説講義本 木村草太 憲法』(辰已法律研究所,2014年)69~70頁,大島義則『憲法ガール Remake Edition』(法律文化社,2018年)195~201頁等を参照されたい。)。なお,宇賀克也『行政法概説Ⅱ 行政救済法〔第6版〕』(有斐閣,2018年)505頁は,「損失補償の要否」の「判断基準」の項目のところで,「①侵害行為の特殊性,②侵害行為の強度,③侵害行為の目的,等を総合的に判断する必要があると考えられる。(中略)従来の立法・判例をみると,③が重視されているものが少なくない。」などとする。

[46] ショートバージョンの論証パターン(理由付けの一部を省略)は「憲法293の趣旨が特別の犠牲に対する公平の観点からの救済にあることからすると,損失補償の要否は,損失が特別の犠牲に当たるか否かで判断すべきである。」となる。現実にはショートバージョンくらいしか書けない(時間がない)というのが殆どかもしれないが。

[47] 時間がなければ実質的基準だけ書いて(→「すなわち,侵害行為が財産権の本質を侵すほど強度なものかにより決すべきであり,・・・」と書く)あてはめれば良い。形式的基準には殆ど配点がないものと思われる。

[48] ③は本件に即した(会議録から読み取るべき)考慮事項(要考慮事項)である。

[49] 根拠法規・処分要件規定が‘スタート条文’である。これは損失補償の設問・論点であっても同じである。

[50] 会議録・弁護士E第9発言第一文を殆どそのまま書き写した部分である。

[51] 憲法でも,消極目的規制か積極目的規制か(あるいはそれ以外か,

複合的規制などか)が問題となる(例えば,平成26年司法試験論文憲法)。憲法でも行政法でも,個別法の目的規定(通常は1条)に照らした解釈が求められているといえる。

[52] 出題趣旨参照。

[53] ここで下位規範を定立している。警察目的(消極目的)の規制の場合には,「財産権に内在する制約として受忍すべきである」という考え方が有力であることから(宇賀・前掲『行政法概説Ⅱ 行政救済法〔第6版〕』506頁),論証パターン部分で書いた上位ルールにおける①~③の各考慮事項を並列的に検討するというよりは,<原則的には損失補償は不要とされるが,一定の厳格な要件を満たした場合に例外的に損失補償が必要とされる>といった基準(下位ルール)を立てている(その上で,下位ルールのあてはめを行っている)。このような上位ルールのあてはめに関する論述は積極目的規制の場合であっても応用可能であろう。

[54] 問題文3頁第1段落参照。

[55] 出題趣旨参照。ただし,この段落はもっと短く書ける(より短く書くべき)だろう。

[56] 上位(最上位)規範(のキーワード)のあてはめも忘れずに書くこと。このように,時間がない状況においても,最後まで(法的)三段論法を守り抜く姿勢を答案に示せるように時間管理をしよう。

 

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