令和元年(平成31年・2019年)司法試験論文憲法 解説速報(2) 答案例その1
「もう怖がんないで 怯まないで
失敗なんかしたっていい
拒まないで 歪めないで
巻き起こっているすべてのことを真っすぐに受け止めたい」[1]
思想の自由市場を「歪め」るのは,市民の虚偽表現か,政府の統制か。
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前回に引き続き,令和元年(平成31年・2019年)司法試験論文憲法の解説を試みる。
1 過去問の採点実感等に照らした答案構成の一般論
(1)過去問検討の重要性
説明するまでもないことかもしれないが,過去問の検討,特に自分で問題を解いてみた上で,出題趣旨や採点実感,市販の上位再現答案等を分析等してみることは,司法試験論文において(司法試験予備試験論文においても)重要である。
そこで,令和元年司法試験論文憲法の検討に入る前に,過去問の出題趣旨や採点実感を簡単におさらいしてみよう。
(2)違憲審査基準等の判断枠組みの定立までについて
平成28年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)(以下「平成28年採点実感」という。)1頁の「2 総論」部分は,以下のとおり述べており,①人権の「重要性」(〔2〕の部分),②規制の程度(規制の強さ)(〔3〕の部分),そして③一定の制限を課す必要がある理由(反対利益への配慮)(〔6〕の部分)等を考慮し,違憲審査基準(判断枠組み)を定立せよと述べている。
「本問では,〔1〕架空の性犯罪継続監視法がいかなる憲法上の人権をどのような形で制約することになるのかを正確に読み取り,〔2〕被侵害利益を特定して,その重要性や〔3〕規制の程度等を論じて〔4〕違憲審査基準を定立し,問題文中の事実に即して適用するなどして結論を導かねばならない。〔5〕その際,当該権利(自由・利益)を憲法上の人権として保障すべき理由,〔6〕これに一定の制限を課す必要がある理由(反対利益への配慮),〔7〕これらを踏まえて当該違憲審査基準を採用した理由,〔8〕同基準を適用して合憲又は違憲の結論を導いた理由について,いかに説得的に論じているかが,評価の分かれた一つのポイントとなる。」(〔1〕~〔8〕,下線は引用者)
そして,当然のことながら,①の前提として,(A)そもそも憲法で当該自由・権利が保障されるものといえること(〔5〕の部分),また,②の前提として,(B)当該自由・権利が法令や処分によって制約されているといえることがそれぞれ必要となる。ゆえに,(A)と①,(B)と②の内容は,普通は重複する箇所が多くなるものといえる。
また,この平成28年採点実感が言及した答案構成の枠組みに概ね従い,その上で特定の判例(憲法判例百選に収載されるレベルの著名な判例)を活用しながら,答案の「一例」を示したのが平成29年司法試験論文式試験公法系科目第1問出題趣旨(以下「平成29年出題趣旨」という。)第4段落である。
「B代理人甲としては,マクリーン事件判決のこのような判断を踏まえつつ,本件のような場合には立法裁量が限定されるべきという主張を組み立てる必要がある。様々な立論があり得るだろうが,飽くまで一例ということで示すとすれば,まず,〔①〕妊娠等が本人の人生にとって極めて重要な選択であり,また,人生においても妊娠等ができる期間には限りがあり(なお,新制度はそのような年代の者を専ら対象としている(特労法第4条第1項第1号)。),自己決定権の中でも特に尊重されなければならないこと,また,〔②〕本件が,再入国と同視される在留期間の更新拒否ではなく,強制出国の事例であってマクリーン事件とは事案が異なることなどを指摘して,〔③〕立法裁量には限界があるとして中間審査基準(目的の重要性,手段の実質的関連性)によるべきだという主張をすることなどが考えられる。」(下線,〔①〕~〔③〕は引用者)
(3)あてはめについて
加えて,平成29年出題趣旨第4段落は,あてはめの「一例」まで示してくれている。
「その上で,例えば,〔1〕規制目的は定住を促す生活状況を生じさせることを防止することによって定住を認めないという新制度の趣旨を徹底することであり,これは,滞在期間を限定し,永住や帰化を認めないという直接的な措置と比べて周辺的であり,重要な立法目的とまでは言えないこと,〔2〕仮に目的が重要だとしても,妊娠等が全て定住につながるとは限らず,合理性に欠けることなどを指摘することが考えられる。」(下線,〔1〕・〔2〕は引用者)
このあてはめ例のうち,〔1〕は目的審査の,〔2〕は手段審査における関連性の審査といえ,また,このほかに(手段審査における)規制手段の相当性(規制手段として実効性のあるより制限的でない他に選び得る手段の有無が重要な要素となる)の審査がある[2] [3]。この点に関し,平成29年出題趣旨第4段落は,相当性の審査については当てはめを行っていないものといえるため,この点については,上位再現答案等で分析することが受験生にとって有益な勉強となるだろう。
(4)中立意見型(平成30年タイプ)の答案の書き方について
平成30年司法試験公法系科目1位合格者が同年の憲法の問題を「原則的には私見を書けばよいのであって,必要があれば対立する視点として判例や反論を持ち出せばよいのだから,考える視点は2つでよいことになる」[4]と的確に分析するとおり,令和元年司法試験論文憲法も,基本的には同様のスタンスで答案を書けば良かろう。
ただし,令和元年司法試験論文憲法の問題文で明記された(前年は明記されていなかった)判例への批判[5]については,前回の(=2019年5月15日の)ブログを参照されたい。
なお,令和元年司法試験論文憲法の「設問」における「反論」(問題文3頁「設問」第2段落の「反論」)の意味と,平成30年司法試験論文憲法の「設問」における「反論」とはズレがあると考えられるが,この点は,令和元年司法試験論文憲法を解くに当たっては,特に問題視する必要のないところと思われるので,少なくとも今回のブログでは詳しく述べることはしないこととする。
2 令和元年司法試験論文の答案の「一例」
平成29年出題趣旨のコメントを借り,「様々な立論があり得るだろうが,飽くまで一例ということで」答案例を示すこととしたい。
答案構成(の骨子)は,前回のブログのとおりである。
この答案構成のうち,今回のブログでは,個人的に特に関心のある【立法措置①】の実体審査の部分(第1の2)の答案例を示す。
なお,【立法措置①】の文面審査すなわち漠然性のゆえに無効及び過度の広汎性のゆえに無効の部分(第1の1(1)及び(2))や【立法措置②】については,次回以降のブログで検討する予定である。
第1 立法措置①の合憲性
1 法案の明確性
(略)
2 一般市民〔ら…★190523加筆(以下,特にコメントがない限り〔 〕内の記載は190523加筆のもの)〕の表現の自由
(1)法案6条は,公共の利害に関する事実について,虚偽であることを知りながら,虚偽表現(法案2条)を流布する行為を禁止し,その違反があった場合には刑事罰による強制措置をとるとしている(法案25条)。そこで,法案6条は,SNS〔等の表現媒体〕で表現行為を行う一般市民〔等〕の表現の自由(21条1項)を侵害し,法令違憲とならないか。[6]
(2)そもそも,SNSで〔…★190523削除〕「虚偽表現」を行う自由は,21条1項により保障されるか。[7]この点につき,「虚偽表現」は,表現の自由が保障される根拠の1つである「思想の自由市場」[8]を歪めるものであり[9],立憲民主制の維持・運営(国民の自己統治)を危うくするものであるから,同項により保障されないとも思える。
しかし,市民も政府も誰もが完全な知識と判断能力を有しているわけではなく,情報の真偽を予め確実に判断することは不可能である[10]し,誤った言明は自由な討論では不可避的なものである[11]から,「虚偽表現」を禁止すると表現行為によって自己の人格を発展[12]させる多くの機会が奪われかねない。また,例えば政府の政策と矛盾する事実を指摘することで,民主政に資する[13]一定の政治的な意見を述べるなど,事実の言明と意見の言明とは区別がつかないこともありうる[14]。ゆえに,虚偽表現の自由も自己実現及び自己統治の価値を有しており,さらに,SNSを含むインターネットでは,双方向的な情報流通が可能であり[15],特に「公共の利害」(法案6条)につき公的人物や政府は比較的容易に反論を公表しうる[16]から,〔特に〕SNSというサイバースペースでは虚偽表現の弊害が比較的短い時間で一定程度是正されうるといえる。
したがって,虚偽表現を行う自由は,「(その他一切の)表現の自由」として,21条1項により保障される[17]。
(3)上記2(1)のとおり,同自由が法案6条・25条により制約されていることは明らかである。
前記のとおり,同自由にも自己実現・自己統治の価値があり,「公共の利害に関する事実」(法案6条)という政治的意見と密接に関わりうる表現が規制されることにも照らすと,一定程度重要な人権といえる。また,法案6条は,表現内容に着目した[19]強度の規制であり,SNS〔等の表現媒体〕を利用して表現を受領し閲読する者の知る自由(21条1項)〔や、SNS事業者や出版者等の情報流通の自由(同項)〕をも制限することになりうる規制でもある。さらに,同自由に制限を課す必要性についてみても,例えば,せん動行為の規制の事案類型[20]とは異なり,虚偽表現の流布による社会的混乱に際しての市民生活への平穏等への害悪・危険[21]の程度が比較的高くはない。
そこで,法案6条の違憲審査は,少なくとも目的の重要性及び目的と手段との実質的関連性を審査する中間審査基準によるべきである[22]。
(5)審査基準の具体的な適用[23]
ア 目的審査
前記のとおり,事実の真偽を予め確実に判断することはできず,例えば,政治的問題に関する歴史的事実とされる事実が,時期・時代によってその真偽が変わる場合もあるから,一時点の真偽を前提とする「社会的混乱」(法案1条)の意味は慎重に判断されるべきである。そこで,法案6条が生活上の安心という市民の主観的な感覚・感情[24]や,社会的混乱に際しての抽象的な害悪・危険の発生を防止しようとするものであれば,重要な立法目的であるとまでは言えないが,客観的・具体的で重要な害悪・危険の発生を防止しようとするものであれば重要といいうる。
イ 手段審査
立法目的が重要だとしても,規制手段については,〔SNS以外の表現媒体での虚偽表現に際しての害悪については立法事実があるとはいえず,かかる表現規制にはそもそも関連性があるとはいえない。
また,SNSでの虚偽表現についてみても,〕例えば,法案9条1項2号のように,虚偽表現の流布による社会的混乱に際しての害悪・危険が「明白」に予見されるような場合に限定すべきとも思える。しかし,SNS〔等を含むインターネット〕上の情報は当該SNS〔等の〕利用者が瞬時に閲覧でき,SNS利用者らによって情報が広く拡散されることがあり,時として短時分ないし短期間で害悪が深刻なものとなり得るため[25],「明白」性を要件にすると実効性に欠ける規定となると考えられ,上記限定は適当ではない。[26]
さらに,法案6条を合憲とする立場からは,「虚偽であることを知りながら」という要件は,いわゆる現実の悪意の法理に照らしたものであり,これは「夕刊和歌山時事」事件判決の相当性(誤信相当性)の法理よりも表現の自由を手厚く保護するものであるから[27],表現者が処罰される場合は限られており,手段の相当性はあるとの主張が予想される。
確かに,現実の悪意の法理を参考に表現の自由を手厚く保護しようとすること自体は適切である。しかし,同判決は,表現の自由の保障と人格権としての個人の名誉権の保障(憲法13条)との調和を図ったものである[28]のに対し,法案6条は虚偽表現そのものを規制しているため[29] ,表現行為への萎縮効果は同判決の場合よりも相当程度高くなるから[30],〔or しかし,現実の悪意の法理は,名誉棄損の記述が虚偽であることを知っていたなどの場合に表現者が責任を負うものであるが,虚偽表現は直ちには名誉権等を害するおそれのある記述ではないから,…★190527加筆〕 ネット上の表現の利便性の点も考慮すると,表現の自由をより手厚く保護すべきである[31]。ゆえに,少なくとも「虚偽表現」の要件を「害悪を引き起こすような虚偽表現」[32]と限定して規定すべきと考える。
よって,合憲の立場に対しては,以上のようなより制限的でない他の規制手段があり,かつ,甲県や複数の県で発生した各事例(問題文第2段落第1文)に照らせば[33],上記の通り要件を限定しても規制の実効性があると考えられるとの反論が可能である。
(6)以上より,法案6条は,目的と手段との実質的関連性があるものとはいえず[34],違憲である[35] [36]。
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今年の司法試験論文憲法も,過去問を検討することで,それなりの対応ができたのではないかと思われる(とはいえ,実際に2時間で書くのは大変だろうが)。
司法試験の過去問検討も,「一歩」・「一歩」の積み重ねが重要である。
「夢見てた未来は それほど離れちゃいない
また一歩 次の一歩 足音を踏み鳴らせ!」[37]
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[1] Mr.Children(作詞 桜井和寿)「足音 ~Be Strong」(2014年)。
[2] 木村草太『司法試験論文過去問 LIVE解説講義本 木村草太 憲法』(辰已法律研究所,2014年)(以下「木村・LIVE本」という。)327~329頁(特に329頁の「論証技術⑨」の部分)は,「必要性の基準(LRAの基準)」(平成29年出題趣旨の言及する中間審査基準と同じか概ね同じ違憲審査基準というものと思われる。)の手段審査については,「『①そもそも関連性が欠ける(ので必要性もない)』,『②関連性があっても,より制限的でない手段がある』」という2つ(「①関連性と②必要性」)の審査がある旨説く。同329頁等は,規制手段の「相当性」というキーワードではなく,規制手段の「必要性」というキーワードを用いているが,司法試験の採点実感(→注(3))からすると,「必要性」ではなく「相当性」という語を答案で使う方が無難であろう。
[3] 平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法)4頁3(5)オが「審査基準が定められたとしても,それで答えが決まるわけではない。〔1〕必要不可欠の(重要な,あるいは正当な)目的といえるのか,〔2〕厳密に定められた手段といえるか,〔2-1〕目的と手段の実質的(あるいは合理的)関連性の有無,〔2-2〕規制手段の相当性,規制手段の実効性等はどうなのかについて,事案の内容に即して個別的・具体的に検討することが必要である。」(〔1〕・〔2〕などは引用者)としているところ,〔1〕部分が目的審査を意味し,また,〔2-1〕部分が手段審査における関連性の審査を,〔2-2〕部分が手段審査における相当性の審査を意味するものと考えられる。
[4] 平成30年司法試験合格者T.K.氏「公法系1位が教える!憲法の新傾向と対策」受験新法819(2019年5月)号53~65頁(65頁)。
[5] おそらく考査委員としては,平成30年司法試験でも判例への批判については加点するつもりだったと思われるが,判例との事案の違いを指摘して判例の射程をずらすような答案はそれなりの数あっても,判例への批判をする答案は少なかったため,令和元年司法試験の問題文で,判例への批判を書いてもよい旨明記したものと予想される。
[6] (1)の部分は,冒頭部分(書き出し)である。この冒頭部分の答案の枠組みについては,2017年10月9日のブログ「平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その3 憲法答案の『冒頭パターン』」や,2017年10月20日のブログ「平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その5 出題趣旨から探究する『答案枠組み』」を参照されたい。
[7] ここ(自由・人権の保障レベル)は,本来は,第1の1(1)の最初のところで書くべき部分であるため,本来は,重複を避けるために,前述のとおり…などと書くことになる。
[8] 新井誠ほか『憲法Ⅱ 人権』(日本評論社,2016年)(以下,「新井ほか・憲法Ⅱ」という。)108~109頁〔曽我部真裕〕参照。同書は,表現の自由の「保障根拠論」(同書108頁)につき,「真理は思想の自由な競争のなかからのみ見出されるのだから、公定の「真理」に基づいて表現を規制してはならないとする思想の自由市場論も伝統的に主張されている」(同書109頁)としている。
[9] 工藤郁子「人口知能と報道倫理:『フェイクニュース』を中心として」(人口知能学会全国大会論文集第32回全国大会(2018)・セッションID: 3H2-OS-25b-03)1頁(2頁)。
[10] 成原慧「フェイクニュースの憲法問題―表現の自由と民主主義を問い直す」法学セミナー772号(2019年)18頁(21頁)。
[11] 水谷瑛嗣郎「思想の自由市場の中の『フェイクニュース』」メディア・コミュニケーション〔慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要〕69号(2019年)55頁(59頁)参照。なお,前回ブログでも言及した鈴木秀美「ドイツのSNS対策法と表現の自由」メディア・コミュニケーション68号(2018年)1~12頁も,慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所の紀要であり,令和元年司法試験論文憲法の問題との関係では,同紀要の関係論文を読んでいた受験生が(いるとすれば)それなりに有利だったのではないかと思われる。
[12] 芦部信喜,高橋和之補訂『憲法 第七版』(岩波書店,2019年)(以下「芦部・憲法」という。)180頁。
[14] 水谷・前掲注(11)59頁参照。ちなみに,「事実」の表現のことであるため,博多駅事件を引用すべきと思う方もいるかもしれないが,同判例は,同判例をより活用しやすい【立法措置②】のところで言及・活用すれば(その方が)良いだろう。
[16] 曽我部真裕「判批」(最大判昭和44年6月25日(「夕刊和歌山時事」事件)解説)淺野博宣ほか著,憲法判例研究会編『判例プラクティス憲法〔増補版〕』(信山社,2014年)(以下「判プラ」と略す。)150~151頁(151頁)参照。同151頁・解説4第4段落は,「公人ないし公的人物」が「メディアへのアクセスを有しており,批判に対して容易に反論できるのが通常である」としており,このことは,政府が一定の事実の真偽につき,政府としての見解(虚偽事実への反論)を述べる場合にも妥当すると考えられる。
[17] 松井茂記『マス・メディア法入門〔第5版〕』(日本評論社,2013年)89頁も,「虚偽の表現は憲法の保護を受けないと考えるべきではない」と説く。なお,他方で,アメリカの勲章詐称法違反被告事件で,2012年のUnited States v. Alvarez連邦最高裁判決におけるアリート裁判官反対意見は,虚偽表現は「修正1条の範囲外にある」と述べており(大林啓吾「表現の自由―修正1条絶対主義?」大林=溜箭将之『ロバーツコートの立憲主義』(成文堂,2017年)191~245頁(205頁)),虚偽表現が憲法の保護を受けない旨の見解を採る。なお,この勲章詐称法(Stolen Valor Act)につき,松井茂記『アメリカ憲法入門[第8版]』(有斐閣,2018年)260頁は,「武勇窃盗法」として紹介しており,訳し方が異なる。
[18] ここは「判断枠組み」というタイトルでも良い。
[19] 木村・LIVE本414頁参照。
[20] ①中林暁生「判批」(最大判昭和24年5月18日解説)判プラ109頁,②同「判批」(最二小判平成2年9月28日(渋谷暴動事件)解説)判プラ110頁参照。この①の最大判昭和24年5月18日については,2019年5月20日に都内某所で開催された行政事件訴訟に関する某研究会後の懇親会の席で,弁護士の伊藤建先生よりご教授いただいたものである。本答案例のこの部分で使ってよいかは定かではないため不適当な(伊藤先生の意図とは異なる)使い方である可能性もあるとは思うので,伊藤先生による本問の解説が待たれるところである。
[21] ここの記述は,平成28年採点実感1頁2「一定の制限を課す必要がある理由(反対利益への配慮)」の点や,法案1条の「社会的混乱」の文言,問題文2頁第2段落第1文の例,同2頁下から5行目の「社会的混乱」という記載等を意識したものである。
[22] United States v. Alvarez連邦最高裁判決におけるブライヤー裁判官の相対多数意見に関する結果同意意見も「中間審査」基準を採るべきであり,「法律の目的と手段とが関連しているかどうかをチェックすべきである」としている(大林・前掲注(17)205頁)。
[23] 過去の採点実感の関係コメント(平成23年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)7は,「あしき答案の象徴となってしまっている『当てはめ』という言葉を使うこと自体をやめて,平素から,事案の特性に配慮して権利自由の制約の程度や根拠を綿密に検討することを心掛けて欲しい。」とする。)に照らし,「当てはめ」という語を避けている。
[24] 木村・LIVE本415頁参照。
[25] 最大判平成22年3月15日(平和神軍観察会事件)参照。なお,同判例の解説として,曽我部真裕「判批」判プラ157頁。
[26] この「明白」性要件の点については,答案に書く必要性は低いかもしれない(書かなくてもOKだろう)。
[27] 曽我部真裕「判批」(最大判昭和44年6月25日(「夕刊和歌山時事」事件)解説)判プラ150~151頁(151頁・解説4第1段落)参照。
[28] このことを初めて示した最高裁判例は最大判昭和61年6月11日(「北方ジャーナル」事件)であるが,同事件は事前規制の事案であり,立法措置①は,事後規制であるから,判例名まで引用することはしていない。なお,この事前規制・事後規制の違いは,少なくとも本問との関係では,本質的な事案類型の違いであると考えられるため,基本的には,立法措置①との関係で「北方ジャーナル」事件を活用することは難しいのではなかろうか。
[29] この点に関しては,2019年5月20日に都内某所で開催された行政事件訴訟に関する某研究会後の懇親会の席で,弁護士の松尾剛行先生より貴重なコメントを頂戴した(アメリカの勲章詐称法(大林・前掲注(17)204頁)の問題点等についても解説していただいた。同法に関しては,伊藤建先生からも同趣旨のご意見を頂戴したと記憶している。)。もっとも,コメントを正確に理解できているか自信がない上,本答案例のこの部分で使ってよいかは定かではないため不適当な(松尾先生の意図とは異なる)使い方である可能性もあるとは思うので,松尾先生による本問に対するコメントが待たれるところである。
[30] 現実の悪意の法理との関係での「萎縮」効果に関して,曽我部真裕=林秀弥=栗田昌裕『情報法概説〔第2版〕』(有斐閣,2019(令和元)年)310頁〔栗田〕参照。なお,同書の発行日は,2019(令和元)年5月30日であるが,某有名書店の店員の方の話によると,同年5月17日か18日頃から,書店に並んでいたようである(ちなみに,令和元年司法試験論文憲法の本試験実施日は同月15日である)。
[31] 本答案例は,このように「夕刊和歌山時事」事件を活用するものであるが,判例の<相当性(誤信相当性)の法理>それ自体を活用するというよりも,むしろ,同法理よりもさらに表現の自由を厚く保護する法理である<現実の悪意の法理>の方を活用して答案を書いている(少なくともそのつもりで書いている)。令和元年司法試験論文憲法の設問では「判例の立場に問題があると考える場合」には,そのことについても「論じるように」とされており(ちなみに,この点については立法措置①ではあえて論じていないが,次回以降のブログで,立法措置②で活用する判例である個別訪問事件との関係で「論じる」予定である。),学説を(判例も学説も)今まで以上に重視する傾向になった(若干の出題傾向の変化があった)といえよう。判例も学説も深く勉強することは受験生にとっては負担が重すぎるだろうが,特に重要な判例(判プラの1頁の判例ではなく,2頁使って解説されている判例が特に重要な判例であることの重要な指標となるだろう。)の解説等に登場する学説等については,できるだけフォローしていくという対策をとるのが良いのではないかと思われる。
[32] United States v. Alvarez連邦最高裁判決におけるブライヤー裁判官の相対多数意見に関する結果同意意見も「害悪を引き起こすような虚偽表現を規制対象にするなど,より制限的でない方法がありうる」などとする(大林・前掲注(17)204頁)。なお,鈴木・前掲注(11)1頁以下等も参照。
[33] ちなみに,フェイクニュースが引き起こした現象としてよく取り上げられる出来事の一つである,いわゆるピザゲート事件につき,受験生は,水谷・前掲注(11)56頁を参照されたい。
[34] 「虚偽表現」を「害悪を引き起こすような虚偽表現」に合憲限定解釈することができるかという論点をこのタイミングで書くかどうかは悩ましい問題であると思われるが,新井ほか・憲法Ⅱ119頁〔曽我部真裕〕は,「明確性の原則」との関係で「限定解釈」につき解説していることなどから,合憲限定解釈の可否の論点は,本答案例でいうと,第1の1(漠然性のゆえに無効の項目のところ)で書くべきと思われる。ちなみに,前回ブログでは,第1の2(手段審査の後など)に書くべき旨の答案構成を示していたが,これだとやや不適当と思われるため,2019年5月22日,その答案構成を取り消し線で削除し,修正(修正箇所は太字・斜体の文字で表記)している。
[35] なお,松井・前掲注(17)『マス・メディア法入門〔第5版〕』89頁は,かつて「総司令部」が「プレス・コードのもとで課していたような制約は、今日では憲法二一条と相容れないというべきだろう。」とする。時代が逆行しないことを祈るばかりである。
[36] 立法措置①を違憲とする結論に関し,2019年5月20日に都内某所で開催された行政事件訴訟に関する某研究会後の懇親会の席で,弁護士の大島義則先生より貴重なコメントを頂戴した。大島先生のコメント内容については,本ブログで公表しないが,大島先生ご自身による本問に対するコメントが待たれるところである。
[37] Mr.Children・前掲注(1)「足音 ~Be Strong」。