令和2年司法試験論文行政法の感想(1)
令和2年司法試験受験中の受験生の皆様は試験終了まで読まないように(下にスクロールしないで)してください。
それ以外の皆様は、よろしければ、ご笑覧ください。よろしくお願いいたします。
本日実施された令和2年司法試験論文行政法の感想(1)である。
1 第一印象
第一印象は「重判で見たやつかも」である。
結構前になるが、平成30年度重要判例解説が出た当初、関係の裁判例=名古屋高判平成29年8月9日判タ1446号70頁・同重要判例解説行政法8事件(主なもとネタ裁判例と思われる)のツイート↓していた。
https://twitter.com/YusukeTaira/status/1122829717940228097?s=19
ということで、一応、注目はしていた裁判例が出題されたことにはなる。
(とはいえ、今年も個別法の予想(入管法)が外れてしまったが…。)
2 重判の裁判例を知らなくても基本判例を勉強していれば書ける(設問1(1))
会話文で、用途地域指定の処分性(否定)の判例(最一小判昭和57年4月22日民集36巻4号705頁)が引かれているので、基本的な判例の射程を正面から聞いていることが分かる。
設問1(1)は、上記1の裁判例に結論を合わせるならば、処分性を否定することになる。もっとも、事案も同一とは限らず、重判解説51頁3にもある土地区画整理事業計画事件(最大判平成20年9月10日民集62巻8号2029頁)の活用次第では処分性肯定も可能だろう。
なお、設問1(2)の設問内容自体を処分性肯定の誘導と読んでも本試験の場ではおかしくないことだと思われるため、処分性肯定で書いた受験生は多いように思われる。
3 不作為の違法確認訴訟とは…(設問1(2))
去年もマイナーな無効確認訴訟(行訴法3条4項)が出たが、今年は、設問1(2)で、(平成16年改正後は)よりマイナーな(?)不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項)が聞かれた。
申請書の返戻事案ということで古典的であるが、今さら感がある。考査委員は現場思考を望んでいるのだろうか…。
4 法規命令の限定解釈による主張か(設問2)
設問2は、行政法の教科書にはあまり書かれていないため、基本的には現場思考の問題といえる。
法規命令(政令)自体を無効にできないという会話文上の縛りがあるので、法律の趣旨に適合する限定解釈を施し(ゆえに政令自体は合理的内容となる)、本件に施行令9条を適用することは裁量権の逸脱濫用であるなどと主張することになろう。
憲法の合憲限定解釈のような考え方であるが、例えば、旧監獄法施行規則事件(最三小判平成3年7月9日民集45巻6号1049頁)の1審・2審では、上記ような法規命令の限定解釈によって法規命令自体は適法有効であるとしていた(しかし最高裁は違法無効としたが)。
なお、法規命令と行政規則とは違うため、行政規則としての裁量基準の話で登場する個別事情考慮義務を考慮すべきという筋の答案だと、何も書かないよりはよいのかもしれないが、普通は高い評価は得られないと思われる(もっとも相対評価マジックはあるかもしれない)。
5 理論と実務の架橋を図る良問
農地法、農振法は、実務で問題となりやすい個別法であるため、出題分野あるいは個別法としては、また基礎知識をベースに現場での思考力をできるだけ試そうとしている点でも、昨年に引き続き理論(研究)と実務の架橋図ろうとする良い問題であった思われる。
以上、とりあえずの全体的な感想ないし印象であるが、お読みいただいている皆様に少しでも参考になれば幸いである。