平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

司法試験論文憲法&行政法に使える判例集 ー司法試験公法系イベント(2019年6月2日)の補足コメントー

昨日、令和元年(2019年)司法試験論文憲法&行政法を題材に、司法試験公法系科目の勉強方法を考えるイベント↓↓↓が開催され、100名で募集させていただいていた会場がほぼ満席となり、お陰様で無事(?)終えることができました。

ご参加いただきました皆様、約3時間半、お疲れ様でした&どうも有難うございました。



さて、昨日のイベントで、オススメしたい判例集があったのですが、時間の関係上、コメントできませんので、本ブログでご紹介させていただきます。


憲法判例集
略称は“判プラ”です。

判例プラクティス憲法〔増補版〕 (判例プラクティスシリーズ)

判例プラクティス憲法〔増補版〕 (判例プラクティスシリーズ)


①この判プラの各章のはじめに1頁でまとめられている「判例の流れ」で特に紙面を割いて引用・解説されている判例と、②(1頁ではなく)2頁にわたって解説されている判例については、短答式試験のみならず、論文で活用するとすればどう使って(書いて)いくのかということまで詰めて勉強することが重要になると思います。


令和元年(2019年)司法試験論文憲法の「設問」では、「判例の立場に問題があると考える場合には,そのことについても論じるように求められている」という指定があり、これは例えば、公職選挙法の個別訪問の規定を合憲とした判例の立場や伊藤補足への学説からの批判や学説の審査基準(より厳格なもの)を書くことが求められていたと考えることもできるでしょう。


(ちなみに、その学説からの批判等を活用した答案例はこちら↓です。)
yusuketaira.hatenablog.com


ところで、一昔前のことかもしれませんが、「判例はカミ,学説はゴミ」というキャッチフレーズが受験生の間で流行っていたかと思います。



しかし、設問で、「判例の立場に問題があると考える場合には,そのことについても論じるように」してください、と明確に言われてしまった以上、学説は、少なくとも司法試験においては「ゴミ」ではないということになりました。


判例はカミ、学説はゴミ」という格言の射程は、少なくともこれからの司法試験論文憲法の問題には、及ばないということがはっきりしましたので、受験生の皆様も、十分気をつけていただきたいと思います。


では、その学説はどう勉強するのか?ということが気になるわけですが、これも前期①や②の解説に出てくる学説の要点やキーワードについては、押さえておくということが重要になると思います。

個別訪問判例以外の例を挙げるとすれば、夕刊和歌山事件の規範への批判との関係で判例集の解説(や基本書等)に登場する、現実の悪意の法理でしょう。これは令和元年司法試験論文憲法でも使える判例と関係する学説の1つであったように思われます。

(ちなみに、現実の悪意の法理を活用した答案例はこちら↓です。)
yusuketaira.hatenablog.com



行政法判例集
次に行政法で使える判例集ですが、最近発売された、判例フォーカス行政法がオススメです。

判例フォーカス 行政法

判例フォーカス 行政法


こちらは、村上裕章先生&下井康史先生編の判例集ですが、押さえるべき判例と判旨等がかなり限定されています。


特に行政法は、司法試験では短答式試験もなく、また過去問演習が特に重要になる科目ということもあり、百選だと、多くの受験生にとっては情報量が多くなりすぎてしまうかなと思っています。


そこで、上記判例フォーカス行政法がオススメなのですが、情報量が限定されている(2分冊の行政判例百選の1/5くらい?)とはいえ、司法試験論文行政法や予備試験論文行政法との関係では(おそらく予備試験短答行政法との関係でも)、必要かつ十分な知識が書かれているものであると思います。


行政法判例知識を効率的に押さえ、その分、過去問検討に時間を多く割り当て、個別法の解釈の仕方を問題演習を通じて具体的に学んでいくという戦略が司法試験や予備試験の行政法ではかなり有効だと思いますが、判例フォーカス行政法は、この戦略にぴったりの判例集ではないかなと考えられます。



ということで、以上、昨日のイベントの補足でした。まだ補足すべきことはあるのですが、今回はとりあえずこのあたりで。

司法試験&予備試験受験生の皆様の参考になれば幸いです。