平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

平成30年司法試験論文公法系第2問(行政法)の感想(2) 設問1(1)の答案例

平成30年司法試験(論文行政法)を受験した司法試験受験生は,以下のコメントを見ないで下さい。

 

また,本試験を受験していない方であっても,今後,平成30年司法試験論文行政法の問題を検討することは有益なことですから,以下のコメントを見ないようにした方が良いと思います。宜しくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1 全体的な印象

  前回のブログのとおり。

 

2 元ネタとなった裁判例

  前回のブログのとおり。 

yusuketaira.hatenablog.com

  

 

3 答案例

 

第1 設問1(1)

  D及びEは,本件許可処分の名宛人以外の者であるため,D及びEに処分取消を求める原告適格が認められるか,すなわち「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)に当たるか否かが争点となる。

 【論パ】「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは,当該処分の根拠法規によって法律上保護された利益を有し,これを当該処分によって侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,かかる利益が認められるには,行訴法9条2項の考慮事項に照らし当該処分が原告の一定の利益に対する侵害を伴うものであること,その利益が当該処分に関する個々の行政法により保護される利益の範囲に含まれるものであること,及びその場合の法の趣旨が,その利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としても保護するものであることを要すると考える。[1]以下,D及びEの原告適格について検討する。

2 Dについて

(1)Dの主張

 Dとしては,墓地を経営する既存同業者であるDの営業上の利益に対する侵害を伴うこと,法10条1項が墓地を経営しようとする者は知事の許可を要するとしており,この許可は「公共の福祉」(法1条、本件条例13条柱書ただし書)に照らし行われ【180518AM追記】〔,下記第2(設問1(2)の解答)で述べるとおり,公益的見地からする行政庁の広範な裁量に委ねられているものであ〕るため,既存の許可業者の事業への影響も考慮され(本件条例13条3項ただし書参照),ゆえに上記利益は法により保護される利益の範囲に含まれること,()既存業者の経営が著しく悪化すると関係区域の「公衆衛生」(法1条)すなわち住民の健康や生活環境に被害・影響を及ぼし得ることになるから,法の趣旨は,営業上著しい被害を受けるおそれのある者の利益個々人の個別的利益としても保護するものであると解されること,()本件墓地の規模は大きいため,Dの墓地経営が悪化し,廃業もあり得るため,Dは営業上著しい被害を受けるおそれがあるといえることからすれば,Dには原告適格が認められると主張するものと考えられる。

(2)Dの主張の認否

 ア B市の反論

 法10条1項や同項に係る本件条例には,公衆浴場法のように適正配置受給調整に関する規定が置かれていないことから[2],②保護範囲要件ないし③個別保護要件を欠き,Dの原告適格は認められないとの反論が考えられる。

 イ 私見

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律には適正配置や受給調整に関する規定が置かれていないが,判例は,一般廃棄物処理業が専ら自由競争に委ねられるべき性格の事業ではなく,公共性の高い事業であることから,同法の趣旨は,一定の区域の衛生等を保持するための基礎となるものとして,既存業者の営業上の利益を個別的利益としても保護するものと解している[3]。そして,この判例の理由付けは,法(墓地埋葬法)にも妥当するといえるから,上記Dの主張のとおり,Dの原告適格は認められると考える。

3 Eについて

(1)Eの主張

 Eとしては,本件墓地の100メートル以内の区域(本件条例9条2項(4))で障害福祉サービス事業を営むEの営業上の利益に対する侵害を伴うこと,法10条1項の許可は「その他公共の福祉」(法1条)に照らし行われ,本件条例13条1項(2)などに照らすと,障害福祉サービス事業者の営業上の利益は法により保護される利益の範囲に含まれること,()同事業に著しい業務上の支障が生ずると,同事業の事業所を利用する者らの生活環境や衛生環境に被害・影響を及ぼしうることにもなるから,法の趣旨は,営業上著しい被害を受けるおそれのある同事業者の利益個々人の個別的利益としても保護するものであると解されること,()Eの事業所(本件事業所)は本件土地から100メートル以内の区域(本件条例9条2項(4))である80メートルの地点にあり,事業所の利用者にも周辺住民と同様の生活環境及び衛生環境の悪化を生じさせることから,Eが営業上著しい被害を受けるおそれがあるといえることからすれば,Eには原告適格が認められると主張するものと考えられる。

(2)Eの主張の認否

 ア B市の反論

 Eの業務侵害のおそれは著しいものとまではいえないこと,また,Eは事業所の利用者にも周辺住民と同様の生活環境及び衛生環境の悪化を生じさせることを考慮して原告適格があると主張するが,自転車競走法に基づく場外車券発売施設の設置許可処分につき,判例は,周辺住民の生活環境に係る利益が法律上の利益に当たらないとしてその原告適格を否定している[4]ことからすれば,②保護範囲要件ないし③個別保護要件を欠き,Eの原告適格は認められないとの反論が考えられる。

 イ 私見

 上記判例は,交通・風紀・教育など広い意味での周辺住民の生活環境に係る利益につき判示したものであるが,法1条に「公衆衛生」の文言が明記されていることからすれば,Eの事業所の利用者については,広い意味での生活環境の悪化にとどまらず,健康にも影響を及ぼしうるものと考えられること(飲料水の汚染のおそれにつき規定した本件条例13条2項参照)そして,このような利用者への影響も合わせ考えると,Eの業務侵害のおそれは著しいものといえる。

 よって,上記Eの主張のとおり,Eの原告適格は認められると考える。

 

  

 

 続き(設問1(2),設問2の答案例)は次回あるいは次回以降のブログで。

 

 

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[1] この論証は,小早川光郎教授の論文・基本書における記述を元考査委員である山本隆司教授が紹介し,被処分者以外の者(第三者)の原告適格についての判例の「定式」が3要件(①不利益要件,②保護範囲要件及び③個別保護要件)に「パラフレーズ」されている(山本隆司判例から探究する行政法』(有斐閣,2012年)432~433頁)とした内容を参考にしたものである。平成21年新司法試験論文公法系第2問(行政法)の超上位合格者答案(公法系科目2位・160点台,稲村晃伸ほか監修『平成21年新司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本』(辰已法律研究所,平成22年)132頁)も,やや論証の内容は異なるものの,この①~③の3要件を示してあてはめを行っており,参考になるだろう。

 なお,原告適格の論証部分は,もっと短く書いても良い。例えば,ショートバ―ジョンとして「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは,当該処分の根拠法規によって法律上保護された利益を有し,これを当該処分によって侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。」などと書いてもよい。①~③についてはあてはめの論述の中でそれを理解していることを示せば良いだろう。

[2] 最二小判昭和37119青木淳一「判批」宇賀克也=交告尚史=山本隆司編『行政判例百選Ⅱ[第7版]』(有斐閣,2017年)(以下「百選Ⅱ」という。)352~353頁・170事件,最三小判平成26128・林晃大「判批」百選Ⅱ354~355頁・171事件参照。

[3] 最三小判平成26128・林晃大「判批」百選Ⅱ354~355頁・171事件参照。

[4] 最一小判平成211015・勢一智子「判批」百選Ⅱ346~347頁・167事件参照。

 

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*このブログでの(他のブログについても同じ)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」も,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生・司法試験受験生をいうものではありません。