平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その5 出題趣旨から探究する「答案枠組み」

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨(以下,単に「出題趣旨」ということがある。)についての感想のつづきである。

 

前回のブログでは出題趣旨第3・4段落の感想を述べ,前回までに出題趣旨の第1~5段落の感想を述べた。

  

yusuketaira.hatenablog.com

 

そこで,今回のブログでも,「人権パターン」すなわち規範(判断枠組み・違憲審査枠組み)の理由付けと規範自体,そして規範へのあてはめ・結論という流れとの関係を意識しつつ,出題趣旨第6段落の感想を述べることとする。

 

 

〔出題趣旨第6段落(下線,〔1〕~〔4〕は引用者)〕

これに対して国の主張としては,〔1〕妊娠等の自由が憲法上保障されるとしても,出入国や国内での滞在は国家主権に属する事項であって,妊娠等を理由に強制出国処分とすることについては極めて広範な裁量が認められること,〔2〕子供が日本で生まれ育つことにより,日本の社会保障制度や保育・教育及び医療サービス等の負担となる可能性があり,また,親である外国人も含め,定住の希望を持つようになる蓋然性があること,〔3〕新制度は労働力確保のためであり,妊娠等によって相当期間に渡って就労が不可能になるから禁止事項として合理性があること(特労法第15条第6号が1月以上就労しないことを禁止事項としていることも参照。),〔4〕妊娠等禁止の条件は事前に周知され,誓約(同意)もあることから基本権への制約がなく合憲であるといった点を指摘することが考えられよう。

 

 

1 「国の主張」までしか書いてくれない考査委員

 

まず,残念なのは,出題趣旨には,「国の主張」までしか書いていないということである。これを不親切である,あるいは不誠実であると感じた受験生もいるのではないだろうか。

 

ちなみに,出題趣旨で示されていない「私見」の具体例につき,考査委員自身(採点委員から担当する考査委員を含む)が法学部や法科大学院の授業の中などで(黙示的にも)具体的に示しているとすれば,直接的な問題(それ自体の)漏洩とは言えなくても,司法試験の公正さを大きく害する行為であると思われる。

 

違憲(平等原則違反行為)とまでは言えなくても,非立憲的な行為というべきである。

 

 

2 「反論」と「私見」の「型」

 

(1)採点実感「諦めるべきではない」 (修造か)

 

(出題趣旨の「国の主張」の一部を私見で書くということはあろうが)「私見」の例は出題趣旨には明記されていないから,「反論」と「私見」の型(後者がメインであるが)や内容の検討について「諦める」という選択肢もありそうなものであるが,そういうわけにはいかない。

 

平成27年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)(以下「司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)」を「採点実感」と略す。)が次のように述べるからである。

 

「将来弁護士になれば,明らかに採用の余地がない主張はすべきでないことを前提としつつも,不利な事実関係にも配慮しながら,何とか裁判所に受け入れてもらえるような説得的な法律構成がないかと思い悩み,考えなければならないであろう。そのような悩みを見せずに簡単に諦めるべきではない。」(下線は引用者)

 

一応繰り返すが,これは採点実感であって,松岡修造の応援メッセージではない。考査委員自身のコメントである。

 

さて,長い前置きはこのくらいにして,設問2の型すなわち「私見」を中心とする「反論」と「私見」の型の話に進もう。この型を探るべく,過去の採点実感(平成26年採点実感)をみてみよう。

 

平成26年採点実感3~4頁(抜粋)(下線,〔1〕~〔4〕は引用者)

・〔1〕設問2について,被告の反論なのか自己の見解なのかさえ判然としない答案があった。[1]

 

・〔2〕設問2について,「被告側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で」とあるからか,被告の反論については全体で一点だけ簡単に示して,後は全て受験者自身の見解だけを書くというスタイルも見られたが,出題者の趣旨は,設問1で論述した原告側主張と対立する被告側主張を意識した上で,自身の見解を説得的に論証してもらいたいというものであるので,少なくとも両者の対立軸を示すに足りる程度の記載は必要である。

 

・〔3〕設問2について,【ある観点からの反論→それに対する受験者自身の見解→別の観点からの反論→それに対する受験者自身の見解→更に別の観点からの反論→それに対する受験者自身の見解・・・】という構成の答案が多かった。その結果,手厚く論じてもらいたい受験者自身の見解の論述が分断されてしまい,受験者自身が,この問題について,全体として,どのように理解し,どのような見解を持っているのかが非常に分かりづらかった。さらに,極端に言えば,「原告の△△という主張に対し,被告は××と反論する。しかし,私は,原告の△△という主張が正しいと考える」という程度の記載にとどまるものもあった。

 

・〔4〕受験者自身の見解について厚く論述している答案は多くなかった。一方当事者の立場として原告の主張を記載するのに時間を費やすだけで,必ずしも多角的な視点からの検討にまで至っていないことは残念であった。

 

この平成26年採点実感からすれば,次のことが指摘できるだろう。

 

〔1〕→「反論」の部分と「私見」の部分は分けて書くこと

(両者の区分が考査委員にも分かるように書くこと)

 

〔2〕→「反論」は争点ごとに複数書くこと(争点は必ず複数ある)

「反論」では,対立軸を示すに足りる程度の記載が必要

 

〔3〕→「私見」を「反論」よりも「厚く」書くこと

 

〔4〕→「私見」は「多角的」に書くこと

 

ちなみに,〔1〕や〔2〕に関し,平成28年採点実感3頁は,「本年は,昨年と異なり,各設問の配点を明示しなかったが,設問1では付添人の主張を,設問2ではあなた自身の見解を,それぞれ問い,検察官の反論については,あなた自身の見解を述べる中で,これを『想定』すればよいこととした。したがって,検察官の反論については,仮に明示して論じるにしても簡にして要を得た記述にとどめ,あなた自身の見解が充実したものになることを期待したものである。この点では,本問は,従来の出題傾向と何ら変わらない。」(下線は引用者)とする。

 

この「反論については,仮に明示して論じるにしても」が引っ掛かるが,次の(2)で述べるとおり,平成28年司法試験論文公法系科目1位再現答案(評価A,168.90点)[2](以下「1位答案」という。)や,公法系科目4~5位再現答案(評価A,159.05点)[3](以下「5位答案」という。)も,「反論」という小タイトルを付す・付さないということはさておき,「反論」という語を答案に明記しているし,1位答案に至っては,「検察官の反論」と「私見」という小タイトルまで明記している。

 

そのため,「反論」を「明示」することは特に禁止されているというわけではなく,むしろ,上記〔1〕の<「反論」の部分と「私見」の部分は分けて書く>というルールが平成30年以降も妥当するものと考えられる。平成28年も,そして出題形式が28年と同じである平成29年[4]も,「従来の出題傾向と何ら変わらない」(平成28年採点実感3頁)のであるから,平成28年の‘上位答案の射程’が平成30年(以降)も妥当するといえよう。

 

(2)「反論」と「私見」を書く順序

~28年公法系1位答案と4~5位答案の設問2の構成を参考に~

 

以上検討したように「反論」と「私見」を分けるとして,書き方の順序が問題となる。すなわち,「反論」ですべての争点について書き,「私見」でそのすべての争点について論じるべきか(パターンA),それとも,争点ごとに反論・私見を書いていくべきか(パターンB)[5]という問題である。

 

この問題について,出題趣旨や採点実感等は必ずしもコメントをしてくれていないように思われることから,1位答案や5位答案を検討してみる必要があるといえよう。

 

まずは,1位答案の骨子を見てみよう。

 

〔1位答案の答案構成の骨子〕

(〔1〕~〔3〕,各文末の(  )内の記載は引用者)

第2 設問2

 1 13条の主張について

  (1) 検察官の反論[6]

     そもそも位置情報は,・・・であり,・・・は,重要な自由ではなく,原告のいうほど厳格に審査する必要はない。(審査基準の厳格さに関する反論[7]・3行[8]

     立法のきっかけは,・・・立法事実として十分である。(目的審査に関する反論[9]・2行)

     未然に再犯のリスクを防ぐという観点からは,・・・20年の期間が長期に過ぎるともいえない。(手段審査に関する反論・3行[10]

 (2) 私見[11]

審査基準について検討するに,〔1〕確かに・・・けれども,〔2〕例えば,・・・が考えられるし,〔3〕また,・・・のであり,・・・重要な自由というべきである。(審査基準の厳格さに関する私見・8行[12]

     一方,目的については,〔1〕・・・ではないし,〔2〕なのであって,立法事実の裏付けがないとはいえない。(目的審査に関する私見・4行)

     もっとも,手段については,・・・手段によっても同等に目的達成が可能である。つまりLRAがあるといえるので,法14条,21条,31条1号2号は違憲である。(手段審査に関する私見・5行)

2 22条の主張について

  (1) 検察官の反論

〔1〕法は,・・・規制にしており,〔2〕しかも,・・・となっており,制約が強度とはいえない。(審査基準の厳格さに関する反論・4行)

     〔1〕一般的危険地域への立ち入りを禁止していないのは,むしろ・・・であり,〔2〕・・・である。ゆえに,・・・実質的関連性を欠いているとはいえない。(手段審査[13]に関する私見・5行)

(2) 私見

〔1〕一般的危険地域への・・・〔2〕しかも・・・であり,・・・実質的に関連していないといわざるを得ない。(審査基準の厳格さに関する私見・5行)

     〔1〕また,検察官は,・・・と主張するが,〔2〕・・・は不合理であり,〔3〕実際には,・・・とは評価できないのであり,この点でも検察官の反論は採用できない。(手段審査に関する私見・5行)

     よって,憲法22条に反して違憲である。(結論違憲)・1行)

 

次に,5位答案の骨子を分析しよう。

 

〔5位答案の答案構成の骨子〕

(〔1〕~〔4〕,各文末の( )内の記載,(1)~(3)の小タイトルは引用者)

第2 設問2について

 1 13条違反について

  (1) 審査基準の厳格さに関する反論・私見①[14]

   ア[15] まず,・・・から,・・・ため,厳格な審査基準を用いるべきではないとの反論が考えられる。(反論・3行)

   イ もっとも,・・・ではない。既に・・・ということはできない。(私見・5行)

 (2) 審査基準の厳格さに関する反論・私見②[16]

   ア 次に,・・・ことから,厳格な審査基準を用いるべきではないとの反論が考えられる。(反論・3行)

   イ たしかに,・・・であるといえる。また,・・・から,上記の反論は失当である。

      そうだとしても,確かに・・・ことからすれば,・・・ではない。しかがって重要な目的のために,目的と実質的関連性を有する手段であれば制約が正当化されると考える。(私見・11行(第1段落7行+第2段落4行))

(3) 手段審査[17]に関する反論・私見

         ア さらに,手段の相当性について,・・・であるから,人権侵害の危険は・・・よりも低く,手段として必要最小限度のものであるとの反論が考えられる。(反論・4行)

   イ もっとも,〔1〕・・・と同様の効果を持つ手段である。〔2〕一方で,・・・目的達成のために有効な手段とはいえない。

     さらに,〔3〕・・・であって,・・・わけではない。〔4〕目的達成のためには,このような手段を使わなくても,・・・ことでも足りる。

     このように,・・・目的と実質的関連性があるとはいえない。(私見・13行(第1段落5行+第2段落5行+第3段落3行)))

     しかがって,法は,13条に反し違憲である。(結論違憲)・1行)

2 22条違反について

  (1) 審査基準の厳格さに関して

上記1の反論(1)は,22条にもあてはまる。(反論・1行)

(2) 手段審査に関する反論・私見

ア ・・・ことから,手段として相当であるとの反論が考えられる。(反論・4行)

   イ もっとも,・・・ではないため,このような反論は失当である。

     〔1〕法23条・24条は,・・・であり,〔2〕その一方で,・・・といえるので,立ち入りを禁ずるだけで目的が達成されるという関係にあるわけではない。(私見・8行(第1段落4行+第2段落4行))

         このようなことからすれば,手段が目的達成に必要不可欠であるとはいえないのであるから,法23条・24条は,22条1項に反し違憲である。(私見→結論・2行)

3 14条違反について

  (1) ・・・合理的な理由があるとの反論が考えられる。(反論・4行)

(2) ・・・合理的な理由も基づくものとはいえない。(私見・4行)

       したがって,法は14条に反し違憲である。(結論・1行)

 

(3)パターンAか,パターンBか → パターンB

 

以上みてきたとおり,1位答案はパターンA(:まとめて反論→まとめて私見型)で,5位答案はパターンB(:争点ごとに反論・私見型)で,それぞれ答案を書いている。

 

ここで,各パターンのフレーム(自由権侵害の主張が2つの場合)を示してみたい。

 

ア パターンA:まとめて反論→まとめて私見型

第2 設問2

1 ●●条の主張について

  (1) 反論

                  審査基準の厳格さに関する反論

     目的審査に関する反論

     手段審査に関する反論

(2) 私見

     審査基準の厳格さに関する私見

     手段審査に関する私見

     結論(違憲

2 ▲▲条の主張について

   (上記1の構成と同じ)

 

イ パターンB:争点ごとに反論・私見型

第2 設問2

1 ●●条の主張について

  (1) 審査基準の厳格さについて

   ア 反論

   イ 私見

(2) 目的審査について

   ア 反論

   イ 私見

(3) 手段審査に関する私見

   ア 反論

   イ 私見

(4) 結論

2 ▲▲条の主張について

  (上記1の構成と同じ)

 

それでは,パターンA・Bどちらの答案構成(の骨子)によるのが良いだろうか。どちらでも良さそうなものであるが,過去の採点実感は次のようなコメントを残している。

 

「『被告側の反論』の想定を求めると,判で押したように,独立の項目として『反論』を羅列する傾向が見られる。むしろ『あなた自身の見解』の中で,自らの議論を展開するに当たって,当然予想される被告側からの反論を想定してほしいのにもかかわらず,ばらばらな書き方をするために,かえって論理的な記述ができなくなっている(あるいは,非常に論旨が分かりづらくなっている)という傾向が顕著になっている。」(下線は引用者)(平成23年採点実感3~4頁)

 

ここで,考査委員は,独立の項目(小タイトル)として「反論」を書くことにネガティブな印象をもった旨のコメントをしていると考えられる。

 

そうすると,パターンAが170点近い答案なので,パターンAも捨てがたいところではあるが,上記平成23年採点実感を重視するならば,パターンBの方がベターということになるだろう。

 

(4)反論と私見の割合・・・ 1 : 2~3程度

 

ちなみに,「反論」と「私見」の割合は,1位答案・4~5位答案からすれば,1:2あるいは1:2~3程度ということになりそうである。反論を3行書いたら私見は6行程度(あるいは7行以上)書く必要があるということである。

 

ちなみに,やや繰り返しになるが,この割合の問題につき,平成28年採点実感3頁は,「本年は,昨年と異なり,各設問の配点を明示しなかったが,設問1では付添人の主張を,設問2ではあなた自身の見解を,それぞれ問い,検察官の反論については,あなた自身の見解を述べる中で,これを「想定」すればよいこととした。したがって,検察官の反論については,仮に明示して論じるにしても簡にして要を得た記述にとどめ,あなた自身の見解が充実したものになることを期待したものである。この点では,本問は,従来の出題傾向と何ら変わらない。」(下線は引用者)としていることからすれば,例えば,「たしかに,・・・とも思える。しかし,・・・。」という「反論」を明示しないようなスタイルで書いたとしても点数は入るようになっていると思われる。

 

 

3 出題趣旨第6段落の分析

 

さて,以上に述べたとおり,パターンBの骨子・フレームで憲法の答案を書くとして,次に,その骨子の中身となる出題趣旨第6段落について検討する。

 

同段落は,大別して4つの「国の主張」に言及する。

 

まず,〔1〕「妊娠等の自由が憲法上保障されるとしても出入国や国内での滞在は国家主権に属する事項であって,妊娠等を理由に強制出国処分とすることについては極めて広範な裁量が認められること」(下線は引用者,以下の〔2〕~〔4〕についても同じ)についてみる。

 

〔1〕は,「保障」レベルを積極的には争点にしない趣旨に出たものと考えられる。平成28年は「保障」レベルの話も争点となりうるし,23年などは「保障」されるか否かの話が争点の1つとなるものと考えられ,厚く書くべき問題といえるだろうが,平成29年は,これらとは逆に,問題となる自由が憲法上の自由・人権として「保障」される点は争点とはなりにくい問題であったと考えられる。

 

また,〔1〕は,立法裁量や行政裁量が肯定されうる(争点となりうる)事案・場合の問題に参考になるものといえ,(厳格ではない)規範定立の理由に係る主張である。

 

また,「〔4〕妊娠等禁止の条件は事前に周知され,誓約(同意)もあることから基本権への制約がなく合憲である」との国の主張も,(厳格ではない)規範定立の理由に係る主張である。

 

このように,〔1〕と〔4〕は基本的には,規範(判断枠組み・審査基準・違憲審査基準)定立までの理由(厳格な基準によるべきではないとする理由)に関する国の主張というべきである。

加えて,〔4〕は,規範のあてはめ・適用における規制の相当性(があること・規制が弱いこと)に関わる主張でもあるといえよう。

 

次に,〔2〕「子供が日本で生まれ育つことにより,日本の社会保障制度や保育・教育及び医療サービス等の負担となる可能性があり,また,親である外国人も含め,定住の希望を持つようになる蓋然性があること」についてみる。

 

〔2〕は,規制の効果・関連性の「可能性」や「蓋然性」(規制して意味があるであろうこと)について言及するものであり,参考になる。

 

さらに,〔3〕「新制度は労働力確保のためであり,妊娠等によって相当期間に渡って就労が不可能になるから禁止事項として合理性があること(特労法第15条第6号が1月以上就労しないことを禁止事項としていることも参照。)」について。

 

〔3〕も,規制の効果・関連性がある(規制して意味がある)可能性ないし蓋然性があることについて説明するものといえる。

 

 

4 パターンBによる‘答案枠組み’

 

以上の分析から,自由権の制約が問題となる事例につき,以下の枠内のとおり,パターンB(争点ごとに反論・私見型)による答案(設問1・設問2)の骨子の例を示しておくことにする。

 

判断枠組み・違憲審査枠組みを包含する‘答案枠組み’である,といったら少々大げさだろうか…。

 

第1 設問1

 1 ・・・法●条等の法令違憲の主張(憲法●●条違反)[18]

(1)・・・法(以下「法」という。)●条●項●号[19]は,・・・が・・・する場合に・・・する行為を禁止事項としており,その違反があった場合には・・・という強制措置がと(執)られることとされている(法●●条●項)。では,かかる措置をとることは●●権/●●の自由(憲法(以下法名略)●●条)を侵害しないか。

 (2)本件自由が憲法上保障されること

    ●●条は,・・・ことから,●●権/●●の自由を保障している。

    そして,・・・(という)自由(以下「本件自由」という。)は,・・・であり,・・・といえることから,●●条で保障されるものといえる。

 (3)判断枠組み(審査基準/違憲審査基準)

   ア まず,本件自由は,・・・であることから重要であり,●●権の中でも特に尊重されなければならない。

     また,法●●条は,・・・から,・・・という態様の制約にとどまらず,強制の程度がより大きいものであるといえ,規制の程度は強いことから,●●●●事件とは事案が異なり,国の●●裁量は限定されるべきである。

   イ そこで,・・・といった本件自由につき一定の制限を課す必要があり,このような反対利益への配慮を要する場合であるとしても,その合憲性の判定は,中間審査基準によるべきであり,目的の重要性及び手段の実質的関連性があることを要するものと考える。

 (4)審査基準の具体的な適用

 ア 目的審査 (・・・立法事実がない/十分ではない)

・・・という(更なる)規制は,・・・という従来の規制である直接的な措置と比べて周辺的なものにすぎないものであるから,立法事実が十分であるとはいえず,重要な立法目的とまではいえない。

   イ 手段審査 (・・・関連性なし,相当性を欠く・LRAがあるなど)

     仮に目的が重要だとしても,・・・という事実(事情)に照らすと,当該規制手段が全て・・・(という規制目的)につながるとは限らず,合理性に欠けるものといえる。(・・・目的・手段の関連性がない(乏しい),あるいは,規制手段の実効性を欠く(両者を一言でいえば「意味のない規制」ということ))

    さらに,・・・ことから,規制手段の相当性を欠くし、目的達成のためには,このような規制手段によらなくても,・・・でも足りるといえ,より制限的でない他の選び得る手段(LRA)がある。

    したがって,実質的関連性があるともいえない。

以上より,法は,●●条に反し違憲である。

2 ・・・法▲▲条等の法令違憲の主張(憲法▲▲条違反)

  (基本的には,上記第1の1の構成と同じ)

 

 

 

第2 設問2

1 ●●条の主張について

  (1) 審査基準の厳格さについて

   ア 被告側の/検察官の/国の反論

    まず,・・・ことから,厳格な審査基準を用いるべきではないとの反論が考えられる。

   イ 私見

    しかし,・・・ことから,上記反論は採用できない。

    また,・・・とも思えるが,・・・というべきであるから,上記中間審査基準によるべきと考える。

(2) 目的審査について

 ア 反論

       ・・・ことから,・・・となる可能性があり,目的は重要であるとの反論が考えられる。

 イ 私見

    ・・・との事実からすれば,・・・となる可能性が裏付けられるし,加えて,・・・となる蓋然性があるため,目的は重要であると考える

(3) 手段審査について

ア 反論

     ・・・であるから,規制の相当性を欠くものとはいえず,また,Xの主張する・・・という代替手段は規制の実効性があるとはいえないことから,LRAたりえず,実質的関連性があるとの反論が考えられる。

 イ 私見

    しかし,・・・と比較すると,法の規制は不相当な規制といえ,かかる規制に伴う・・・といった萎縮的効果もあるといえる。

    さらに,上記代替手段は・・・ことから,必ずしも規制の実効性があるとはいえないが,一方で,・・・という代替手段によっても,実効的な規制は可能であるといえるから,LRAがないとはいえない。

    したがって,実質的関連性があるとはいえないと考える。

(4) 結論

    よって,法は,●●条に反し違憲である。

2 ▲▲条の主張について

  (基本的には,上記第2の1の構成と同じ)

 

 

                              以上

 

 

5 考査委員が記した「希望」に関して

 

考査委員は,出題趣旨第6段落〔2〕で「親である外国人も含め,定住の希望を持つようになる蓋然性がある」とし,関連性あるいは規制の実効性の点についてコメントしている。

 

どのような形であれ,考査委員が「希望」に言及した例はこれが初めてではなかろうか。出題趣旨が公表された時期等からすれば,先見の明(?)があったというべきかもしれない。

 

いずれにせよ,少なくとも,考査委員のいう「希望」は,有用で具体的な中身があるもののようである。

 

本ブログは,どうだろうか。

 

司法試験受験生にとって,中身のあるもの,すなわち,合格への「希望」を見出す,あるいはそのきっかけとなるような内容になっているだろうか。

 

 

__________________

[1] 過去の採点実感でも同様の指摘がある。例えば,「被告側の反論が全く論じられていない答案もあった。問題文をきちんと読んでいないことがうかがえる。」(平成23年採点実感3頁)というものである。

[2] 辰已法律研究所『平成28年司法試験論文合格答案再現集 上位者7人全科目・全答案』(平成28年)(以下「上位本」と略す。)2~4頁,辰已法律研究所,西口竜司=柏谷周希=原孝至(監修)『平成28年 司法試験論文週去問答案 パーフェクトぶんせき本』(辰已法律研究所,平成29年)(以下「ぶんせき本」と略す。)32~37頁。

[3] 上位本70~72頁,ぶんせき本38~41頁。

[4] 平成28年の「〔設問2〕」は,「〔設問1〕で述べられたAの付添人の主張に対する検察官の反論を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を述べなさい。」であり,平成29年の「〔設問2〕」は,「〔設問1〕で述べられた甲の主張に対する国の反論を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を述べなさい。」である。このように両者は同一の形式を採る。

[5] 他のパターンもあるかもしれないが,大別すると,この2つのパターンを挙げることができると考える。

[6] 小タイトルは「検察官の反論」である。また,1位答案は,ア・イ・ウという,さらに下位のナンバリングをしていない。ただし,段落を変えていることに加え,接続詞やこれに準じるもの(「まず」「また」「そして」「この点については」など)を書いていない点も参考になるだろう。

[7] 1位答案は,緩やかな審査基準(合理性の基準など)の内容を具体的に明記しているわけではなく,理由のポイントを書いて「原告のいうほど厳格に審査をする必要はない」(ぶんせき本34頁)との記載にとどめている。なお,平成26年採点実感7頁によると「審査基準を『やや下げて』とか,『若干緩めて』といった記述が見られたが,判例や実務でこのような用語を使うかは疑問である。」とされているので,要注意である。

[8] 実際の正確な行数は分からない。文字の大きさ,書き方のクセなどによって多少行数は変わるだろう(例えば,ぶんせき本の場合,3行で表記されている部分が実際の答案では4行で書かれているということもありうると思われる)。

[9] 1位答案は,目的審査の部分で「立法事実」の存否・程度の検討をしているところ,これは,芦部信喜高橋和之補訂『憲法 第六版』(岩波書店,2015年)226頁と同様の立場(判例の理解)を採るもの思われる。法規制をしなければ弊害が生じるという因果関係立法事実によって合理的に裏付けることができるか否かのあてはめは,手段審査ではなく目的審査の中で検討されるべきであろう(同文献227頁参照)。

[10] 上位本7頁では3行であるが,ぶんせき本では2行となっている。上位本の方が,より正確であると思われるため,(ぶんせき本と行数が異なる場合には)上位本の行数の方を表記することとした(5位答案にいても同様)。

[11] 小タイトルは「私見」である。また,1位答案は,「(2) 私見」の部分でも,ア・イ・ウという,さらに下位のナンバリングをしていない。ただし,段落を変えていることに加え,基本的には,接続詞やこれに準じるもの(「まず」「また」「そして」「この点については」など)を書いていない点も参考になるだろう(一か所だけ「また」が登場する)。

[12] 8行書いており,「見せ場」を作っているといえる。

[13] 目的審査については,13条の主張と共通するものとし,22条の主張では,争点から外されているため,書かれていない。

[14] 5位答案は,「第2」と「1」・「2」・「3」のレベルまでしか,タイトルが付されておらず,「(1)」レベルや「ア」レベルはタイトルが付されていない。ゆえに,「審査基準の厳格さについて①」といった小タイトルは,本ブログ筆者が便宜上付したものである。

[15] 5位答案は「ア」「イ」のレベルまでナンバリングを付している(ただし,前注のとおり,小タイトルを付しているわけではない)。

[16] 5位答案は,「第2」と「1」・「2」・「3」のレベルまでしか,タイトルが付されておらず,「(1)」レベルや「ア」レベルはタイトルが付されていない。ゆえに,「審査基準の厳格さについて①」といった小タイトルは,本ブログ筆者が便宜上付したものである。

[17] 5位答案は,設問1で目的審査については,つまるところ合憲としてしまっているので(上位本70頁,ぶんせき本38頁),設問2で目的審査は行っていないということのようである。このような構成も答案政策としては(本問でそうすべきか否かはともかく)有用な場面もあるかもしれない。

[18] 第1の1は,2017年10月9日ブログの「冒頭パターン」の「2文パターン」によっている。

[19] 平成26年司法試験の採点実感等に関する意見(以下「実感」と略す。)3頁は,「条例第4条の第1号ないし第3号,あるいは第3号のイ及びロにつき,それぞれを適宜区別しながら審査しているものが見られた点は評価できる一方で,特に第3号のイ及びロについて,全てまとめて一つの審査をしているものがあり,気になった。」としている。そこで,法令違憲の主張をする際には,項数や号数等(複数ある場合は複数)まで特定すべきであろう。また,このことは処分違憲の主張の場合であっても同様であるように思われる。

ちなみに,行政法の答案で号数等までしっかり書くべきことは,次の①~③とおり,もはや受験生の間では殆ど常識となっているように思われる。①「条文の引用が正確にされているか否かも採点に当たって考慮することとした。」(20年実感5頁)/②「条文を条・項・号まで的確に挙げているか,すなわち法文を踏まえているか否かも,評価に当たって考慮した。」(21年実感5頁)/③「関係法令の規定に言及する場面で,単純な文理解釈を誤っている答案や,条文の引用が不正確な答案(項・号の記載に誤りがあるなど)が少なくなかった。また,関係しそうな条文を,よく考えずに単に羅列しただけの答案も散見された。このような答案は,条文解釈の姿勢を疑わせることになる。」(25年実感6頁)

 

 

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