平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

平成29年司法試験 公法系第2問の感想(1) 「早押しクイズ」としての司法試験行政法

平成29年司法試験 公法系第1問の感想は(1)から(5)まで書いたが,途中で少し飽きてきたので,今回は,予定を変更して,平成29年司法試験 公法系第2問(論文行政法)の感想を述べてみたい。

 

行政法は誘導がかなりある上,出題趣旨や採点実感も比較的具体的に詳しく書かれてので,ほぼ毎年のことではあるが,(憲法と異なり)問題解説は誰がやってもそこまで大きくは変わらないと思われる。そこで,問題の本筋からは大きく外れる内容のものも相当程度交えつつ,私個人の感想を述べることとする。

 

 

1 第一印象

 

平成29年司法試験論文行政法を見て,最初に感じたことは,次の3点である。

やはり当職は,普通の研究者ではないのかもしれない。

 

①X1の覚悟について

よくXらは「訴訟」まで提起したいと考えてくれた。この事案で,そしてこの日本社会で,ここまで闘う市民が実際にいるのだろうか。

 

というのも,本問の各訴訟は,小学生(X2)を巻き込んでの訴訟である。

違法事由等を立証するために,場合によっては,小学生の陳述書を巻いたりすることもあるのかもしれない。

また,いかに親権者(X1)がいるとはいえ,X2が原告の一人となる以上,X1だけにすべて訴訟に関する説明をするというわけにもいかないだろう。そこで,例えば,受任する際などには,X2も法律事務所に来てもらって,これからあなたは訴訟の原告になりますとか,あなたはX1と一緒に住んでいる自治体相手に訴訟をしますとか,あるいは簡単でも訴訟とは何かくらいは事務所等で説明すべきであろう。

これを聞いて小学生のX2はどう思うだろうか。X1もX2も,良い法教育的な側面もあるなどと感じるのだろうか。

しかし,現実の生の訴訟は,法教育とは違う。原告となる者にも,きっと良い影響だけではないと思われ,特に小学生のX2には一定の負担(特に心理的負担)が生じることとなるだろう。

 

X1はこのようなX2の負担をも考慮した上で,なお設問の各訴訟を提起しようというのか。

もう一度言うが,それでも,本問ではX1はX2とともに「訴訟」を提起するわけである。このような市民というか,子どもをもつ親が,リアルに,本当にいるのだろうか(子どもの負担については十分に考えないのか)。

小学校まで400メートル遠くなったぞー!幅員5メートルの市道の方は危ないッ!!

よって「訴訟」!!って,これは研究室の●の上だけの(以下略)。

 

いわゆる潜在的需要という観点も分からなくはないが,二回試験では公法系の科目がないことからしても,司法試験では,もう少し現実に起こり易い,そして事例の多い問題(例えば,平成19年新司法試験論文行政法入管法の事案や,近時話題となった待機児童問題の事案など)を出すべきと思われる。

 

 

②弁護士2名の着手金問題

そして,弁護士D及び弁護士Eはよくぞ受任した。これが法の光を世の隅々まで照らす理想の法曹なのか。さて,着手金はいくらだろう[1]

 

弁護士2名だから,仮に着手金40万円とすると,Xらは現に支払うのだろうか。

小学校まで400メートル遠くなった!幅員5メートルの市道の方は危ない!よって訴訟!40万ポンと出します!買ったら報酬も喜んで払います!って,今日の日本社会にこのようなお客様はいるだろうか。潜在的需要として,実は隠れているだけか。

 

仮に40万円では高いということであれば,法の支配を広めていくのに赤字覚悟で,例えば20万円とかでやるのか[2]。しかも事件は2つあるが,どうなのか。弁護士は社会の犠牲になって違法・不当の闇を照らすことが使命なのか。しかし勝訴率を考えると報酬はもらえないかもしれない。

いやいや,実はDやEは,道路法スペシャリストで,それほど事件処理に時間もかからないから(しかも良質なお仕事)比較的安く受任できて赤字にならないのか。こんな事務所がどこにあるのか。仮にあっても滅茶苦茶限られるのでは…。

 

いずれにせよ,1件でも弁護士2名で20万円で行政訴訟をやるのは,通常は大変である。このあたりの金額の感覚(経費のことなど)は,「一般人」の「社会通念」[3]からすると,中々分かっていただけないところなのかもしれないが,各弁護士があるいは日弁連・単位会の広報等によって分かっていただけるよう努力する必要があるだろう。

 

ところで,行政訴訟を多く受任されているあの先生やあの先生は,この事案,着手金いくらで受けるのだろうか。実に興味深い。

ちなみに,仮にあの先生が当職と一緒にやってくれるとしたら[4],どちらが起案の叩き台を担当するのだろう。

やはり起案は大変だから叩き台担当が負担大だが,一緒にやっていただく先生との関係を考慮すると1:1となろうか。いや,しかし,あの先生とは,他にも一緒に・・・(以下略)。

 

 

③行政事件の暗闇こそ積極的に法テラしてほしい

上記②のようなこともあり,このような案件こそ,(より)積極的に法テラスで扱うことが望ましいように思われる。

法テラスは法務省管轄だが,司法試験で行政法を必修としたのも法務省(行政)主導のはずだ(おそらく…)。とすると,きっと行政を相手にする訴訟にも法テラスは民事・刑事と同じように協力的であるはず(淡い期待)。むしろ,民事・刑事の方が得意とする弁護士が多いのであるから,行政事件こそ手厚く総合法律支援法による支援をすべきではないか。

とはいえ,法テラスには,行政法に詳しい弁護士の先生方が本当に「揃って」いるのだろうか。一般事件とは別に行政事件の窓口あるいは枠のようなものが,今はあるのか…[5]

 

あるいは,法テラスの行政事件についての報酬基準等はどうなっているのだろうか。訴訟前提で交渉した結果,結局依頼者がやめるといったら弁護士にはお金はでるのか。出てもペイするのか。

仮に,割に合わない金額でも社会における不法の闇を照らすべく,行政事件を沢山やって,いわゆる「成仏」をしたら,それは本望なのか。

しかし平均余命まではまだ結構あるし,まだ成仏は嫌である。せ,生存権!!

 

それに「成仏」というが,そもそも当職は仏教徒ではない。私人間とはいえ,また,憲法学者ではないとはいえ,信教の自由にも配慮した発言をしていただきたかったわけである。

 

 

・・・・・・と,このような余計なことに思いを馳せていては,2時間という制限時間で解かなければならない司法試験は到底合格できないので,要注意である。

 

 

以上が,当職の第一印象である。 

 

 

2 「早押しクイズ」としての司法試験行政法

 

さて,次の感想である。

平成28年は13頁まであった問題文が,平成29年では,8頁となった。

その差は実に5頁である。5頁といえば,殆ど憲法論文の分量に匹敵する。

かなりのダイエットに成功しており,私の中では,ライザップの,あのCMの効果音が流れたほどである[6]

 

設問までの事実関係の記載も,「会議録」も,さらには「関係法令」まで,それぞれ2頁になっているというのは,考査委員の先生方も相当苦労されたのではないかと思われる。この点では,考査委員の先生方に圧倒的感謝である。

 

とはいえ,予想どおり設問は4つ(1(1)・1(2)・2(1)・2(2)で4つという意味)あり,書く事項がかなり多い点は,昨年(平成28年)と変わっていない。

というか,むしろ書くことは昨年よりも多いのではないかと思われる。しかも,設問1は書き慣れていないと結構時間を食うタイプの問題といえ,また,最後の設問が25点もある。せめて設問2(2)が15点くらいであれば,ほぼ途中答案になったとしても沈まずに済むこともあるだろうが,25点はかなり大きい。考査委員の先生方もこのようなことまでは考慮してくれなかったかもしれないが,多くの受験生にとっては,なお処理が難しく心理的にも厳しい試験であったと想像する。

 

このようなことでは,行政法論文は,憲法(平成29年の問題は2~5頁まで)とは異なり,あまり深く考える時間をとれない問題となっているように思われ,現実には,要件ないし論点ごとに,いかに既存の論証パターンを早く貼りつけられるか,そして誘導にしたがって,その論パへのあてはめができるかという点がかなり重要になってくるように思われる。

というか,受かるかどうかという観点からすると,相対評価であるから,8割9割それで受かるのかもしれない。

 

このような出題傾向が続く場合(あくまでこのような出題傾向が続く限り),個別法の読み方等は要点さえつかめば,それほど難しいことではないだろうから,あとは論証の記憶と迅速な吐き出し,過去問を用いた誘導への訓練が合格にとって大切なこととなってくる。

しかし,これは,司法制度改革や法科大学院の理念に合致することだろうか。

 

確か,法科大学院が始まった年くらいに,某ロースクールの教授の先生がソクラテス・メソッド形式で授業をした際,5秒だか10秒だかで答えられなければ次の人に質問するという10秒(5秒)ルールを取り入れた(という噂)と聞いたことがあるが,まさにこの速さが司法試験でも求められているように感じられるのである。

 

司法試験論文行政法は,いつから「早押しクイズ」になったのか[7]

 

 

3 また原告適格4年連続過去4年で3回出題)

 

今年も,設問1(1)で,原告適格が出た[8]

また原告適格だ。

 

被処分者以外の者の原告適格は,取消訴訟,非申請型義務付け訴訟と,差止訴訟でも問題になるため,司法試験・予備試験では,処分性と同様に,殆ど毎年問題になっている

 具体的には,①平成25年予備試験論文行政法設問2,②平成26年司法試験論文行政法(公法系第2問)設問3,平成27年司法試験論文行政法設問1平成28年司法試験論文行政法設問1というように,予備試験と併せると4年連続で出題されており,そして④今年(平成29年司法試験論文行政法設問1(1))で5年連続5年のうち4回出題(司法試験では4年連続のうち3回出題)である。 

 【※失礼しました。上記のとおり一部訂正いたします。】 

 

なお,無効等確認訴訟でも問題となるが,まだ(新)司法試験や予備試験での出題はない(同訴訟で原告適格についての論点は出ていない)。

 

 

行政救済法(訴訟要件あるいは仮の救済の要件の)分野からの出題の頻度は,

処分性 ≧ 原告適格 >「重大な損害」という感じだろう。

 

 

このように,司法試験は,変化球は普通は来ないが,ストレートを投げますよと言っておいて160キロのストレートが来るような試験になってきているように思われる。

直球勝負なのだが,かなり早い直球に目を慣らしておかないと,うまく打ち返せない。

他方で,変化球的な論点といえるであろう国家賠償法2条1項だとか,判決の効力の話だとかは中々問われないし,国家賠償法1条1項についても(憲法よりも)殆ど問われない。

 

もちろんこのような傾向が続くとは言い切れないし,統計的な分析というものには限界がある。現に,平成29年司法試験論文憲法では,統計を無視して2年連続で憲法13条後段メインの出題がなされた。

そのため,受験生は国家賠償法2条1項などの論文では殆ど出ない論点についても一応の準備はしておくべきだろう。憲法33条を行政手続に準用等できるか?といった論点が出ても動じないようになれるはずである(いや,それでも33条は重箱の隅というべきか)。

 

平成29年の予備試験論文行政法でも平成30年の司法試験・予備試験でも,原告適格はヤマである。5度(4度)あることは6度(5度)ある。

 

原告適格の論パについては,長いものと短いものを用意しておくべきであろう。平成29年司法試験では短いものを使った方が無難であったかもしれない(特に,問題文を読む速度や,書くのが遅めの受験生は)。

そこで,以下,取消訴訟の場合ついてだけであるが,論証例等を挙げておくので,必要な受験生は,適宜参考にされたい。

 

<問題提起の書き方例>

Xは,本件処分の名宛人以外の者(第三者)であるため,Xに本件処分の取消を求める原告適格が認められるか。「法律上の利益」(行訴法9条1項)の認否が問題となる。

 

<規範・コンパクトなversion [9]

この点につき,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは,当該処分の根拠法規によって法律上保護された利益を有し,これを当該処分によって侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,同利益の認否については,9条2項の(必要的)考慮事項に照らし,個別具体的に判断する。

 

<規範・長めのversion 1 [10]

この点につき,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,行訴法9条2項の考慮事項に照らし,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,かかる利益も上記の法律上保護された利益に当た(り,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有す)るものというべきである。

 

<規範・長めのversion 2 [11]

この点につき,「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは,当該処分の根拠法規によって法律上保護された利益を有し,これを当該処分によって侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして,かかる利益が認められるには,行訴法9条2項の考慮事項に照らし,①当該処分が原告を含む不特定多数者の一定の具体的利益に対する侵害を伴うものであること,②その利益が当該処分の根拠法規(当該処分に関する個々の立法)により保護される利益の範囲に含まれるものであること,③その場合の根拠法規(立法)の趣旨が,その利益を一般的公益としてではなく,原告ら自身の個別的利益としても保護するものであることを要すると考える。

 

 

4 また裁量基準(4年連続)

今年も,設問2(2)で,裁量基準が出た。フェティッシュとしての裁量基準か。

 

前記3と同様に,平成26・27・28年と,3年連続で同じ論点が出ていたのであり,今年で(司法試験だけで)4年目である。こうなってくるとこれから毎年出てもおかしくない。どうしてこうなったのか。

 

ちなみに,裁量基準がある場合の裁量処分の違法性(裁量権の逸脱濫用)の認否を論じさせる問題では,次の3点(②と③を分けないで論じる研究者の先生が多数と思われるので,大きく分ければ2点…①と,②・③というレベルの違い)に注意すべきである。

まず,裁量権の逸脱・濫用審査については,① 裁量基準(の内容)自体の合理性[12](不合理性ないし著しい不合理性)の審査をし(…法令の趣旨に反するものか否かで判断する),②同基準が不合理ではないとしても, 裁量基準の具体的な適用(あてはめ)の段階での誤りがないかを審査し,最後に,③個別事情[13](上記裁量基準の規定内容以外のもので,当該個別法(や憲法)に照らし,要考慮(要重視)事項と解される個別の事情)を選定し[14],その上で,それを考慮したかについて問題文の事案に即してあてはめるという審査を行うべきこととなる。

 

そして,上記①・②・③すべてがべったりと問題とされる年は基本的にはないことを頭に入れておくべきであろう。

 

例えば,平成28年では,主に②が問われ,この点を厚く論じれば良かった。すなわち,(①の不合理性にかかる事情や)③の個別事情が殆ど書かれていないのにもかかわらず,②裁量基準に挙げられた事情が考慮されていないため,いわゆる判断過程審査における考慮不尽[15]の違法の有無が問題となったもの考えられる。

逆に,平成27年は,処分庁が②の裁量基準通りに判断した事案であったため,上記 ①や③の点が問題となり,①・③を厚く書くこととなった。①裁量基準自体が不合理なものであれば,判断過程の合理性を欠くこととなるし(他事考慮,考慮不尽等),あるいは③の個別事情を考慮していない場合には考慮不尽として裁量権の逸脱濫用が導かれることとなる。

 

では,平成29年はどうだったか。平成29年(設問2(2))では,処分庁が②の裁量基準通りに判断せず,これに違反して処分を行った事案であることは明白であるから,上記の平成28年の検討結果からすると,一応①と③が問題となりうるが,XらもY市も①の合理性自体はを自認するであろうから争いにならず,かつ,その内容も法の趣旨には合致するものといえるため,基本的には③のみが問題となるといえるだろう。そして,③の個別事情がない(あるいは乏しい)と言えるにもかかわらず,これ裁量基準に反する処分がなされた場合には,平等原則[16]あるいは考慮不尽[17]として裁量権の逸脱濫用が導かれることとなるのである。29年の問題は,27年の上記違法事由を多角的によく検討していれば,その検討結果が活かされるものであったといえる。

つまり,平成23年論文行政法まで過去問を遡って検討できていなくても,27年を含む過去3年分(26~28年)の検討でも十分対応可能であったと思われる。つまり,平成29年でも,裁量基準の定めが(どの程度合理性を有し,逆に)「どの程度例外を認める趣旨」(平成26年司法試験論文出題趣旨2頁)のものかの検討をすべきであったということである。

 

ちなみに,この平等原則等の点に関し,最三小判平成27年3月3日民集69巻2号143頁は,次のとおり判示する。すなわち,「行政手続法…12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準は,…不利益処分に係る判断過程の公正と透明性を確保し,その相手方の権利利益の保護に資するために〔=を保護する趣旨で〕定められ公にされるものというべきである。したがって,行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において,先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に,当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば,裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り,そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され,この意味において,当該行政庁の後行の処分における裁量権は当該処分基準に従って行使されるべきことがき束されて」(下線及び〔 〕内は筆者)いるとし,当該処分基準はこのような意味での法的効果を有するものとする。

 

なお,以上のような感じで,平成29年司法試験論文行政法については,平成26~28年の過去3年の司法試験を潰しておけば,出る論点は殆ど網羅的に潰せたと思われる。

できれば平成23年(裁量基準がある場合の違法事由と同意の関係)や平成18年(18年では問われてはいないが二項道路の(一括)指定の処分性)なども検討していれば良かったのだろうが,他の科目の勉強もあり,憲法はおそらく最低直近5年分くらいは潰さないと対応できない上,特に1回目の受験の方は時間もなく現実的には難しいだろう。

 

このように行政法は3年説,憲法は5年説というのが,(現時点では)望ましいように思われる。

もちろん,網羅できない論点(平成29年でいえば,例えば規制権限の不行使の論点)については,少なくとも論点単位で,基本書・判例集や演習書等を用いて勉強しておくべきであろう。

 

 

5 事案の背景―「保育園落ちた日本死ね!!!」問題

 

平成29年司法試験論文行政法では,「保育園」が登場するが,これには流行語にも選ばれ話題となった「保育園落ちた日本死ね!!!」(待機児童問題)の影響があるのではなかろうか…。

 

いずれにせよ,受験生は,司法試験に落ちないよう,夏もバリバリ勉強しよう。

 

 

(平成29年司法試験 公法系第2問の感想(2)に続く。)

 

 

[1] もはや研究者の発想ではない。しかし,法学の研究者の先生方には,こういった現場の問題についてもできれば発想していただきたい。事件は研究室で起きてるんじゃない,現場で起きてるんだ!

[2] 20万円でも高すぎると考える研究者の先生は,法科大学院に入り直していただき,行政訴訟というか法曹の実務を勉強していただきたい。

[3] なお,一般人の社会通念に基づく「違法」性の審査(司法審査)の限界と,専門家の集団意識を通じた「不当」性の審査(行政不服審査)の基準等について考察した小論として,平裕介「行政不服審査法活用のための『不当』性の基準」公法研究78号239頁以下。

[4] 実際の問題文ではボス弁Dとイソ弁(あるいはノキ弁?)Eの事案と思われるので,問題文の事案からやや脱線しているがお付き合い頂けると幸甚である

[5] 阿部泰隆『行政の組織的腐敗と行政訴訟最貧国 放置国家を克服する司法改革を』(現代人文社,2016年)94頁によれば,少なくとも過去の時点では,「行政訴訟を得意とする弁護士に相談したい」と言っても「一般事件になりますね」とのことであったようである。なお,阿部泰隆先生の「隆」は,正確には,正確には西郷隆盛の「隆」(「生」の上に「一」が入るもの)である。

[6] ちなみに,知り合いの先輩弁護士の先生がライザップに通われ,かなりのダイエットに成功されていて,びっくりしたことまで思い出した。人が変わったようだった。健康目的で始めたとのことである。

[7] 最初(平成18年)からかそうだったという批判もあるかもしれないが…。

[8] 関連する重要な文献として,石井昇「道路の自由使用と私人の地位―路線廃止等における反射的利益―」小早川光郎=高橋滋『行政法と法の支配』(有斐閣,平成11年)13頁以下がある。本問との関係で,受験生にはこの文献を必ず読んで欲しい。今後の試験対策に有益と思われる。なお,同書は南博方先生の古稀記念論文集であり,南先生は,「理論と実務との架橋」という法科大学院の理念に係る活動を実践された先生である(小早川光郎=高橋滋・同書はしがきⅲ頁参照)。

 

[9] 平成23年司法試験論文公法系上位1%以内の答案も同様の論述をしている。なお,司法試験で原告適格の規範部分を書く場合,基本的には,その規範の理由付けの記述は不要(法律上保護に値する利益説等への批判についての記述も不要)である。また,答案のメリハリがなくなる上に時間不足等リスクが生じることなどから,行訴法9条2項の全文言を書き写すようなことも(時間がかかるので)得策とはいえないだろう。

[10] 基本的には判例もんじゅ事件等)の言い回しを取り入れたもの。人によっては覚え難いかもしれない。

[11] 判例の定式をパラフレーズしたもので,元司法試験考査委員の山本隆司先生が言及される立場(小早川光郎先生の立場)を参考にしたものである(山本隆司判例から探究する行政法』(有斐閣,2012年)433頁参照)。ちなみに①は不利益要件,②は保護範囲要件,③は個別保護要件と呼ばれる。比較的書き易く,かつ,あてはめもし易いのではないかと思われ,オススメである。ちなみに,平成21年論文公法系論文5番以内=160点台,論文総合1位合格者答案も似たような規範を書いている。なお,①部分については,「当該処分により不利益を受け,または受けるおそれがあること」としてもよいだろう。

[12] 中原茂樹『基本行政法[第2版]』(日本評論社,2015年)156頁,高橋信行『自治体職員のためのようこそ行政法』(第一法規,平成29年)134頁参照。

[13] 中原・前掲注(12)157頁参照。

[14] 裁量基準の定めがどの程度例外を認める趣旨のものかの検討を要するということである(平成26年司法試験論文出題趣旨2頁)。

[15] 山本・前掲注(11)304頁参照。

[16] 中原・前掲注(12)156頁,高橋・前掲注(12)135頁参照。

[17] 山本・前掲注(11)304頁参照。

 

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