平成29年司法試験 公法系第1問の感想(1)
【注意】読みたくない司法試験受験生は,以下の文書を読まないで下さい。
予想が外れた。受験生に大変申し訳ない。
平成29年司法試験 公法系第1問すなわち憲法の論点は,外国人の人権((A)妊娠に関する自己決定権及び(B)身柄拘束に関する手続的権利)であった。
しかも,問題文からすると,(A)も(B)もともに法令違憲の主張であり,処分違憲の主張は問われていない。
書くべき憲法の条文は,(A)については13条後段であり,また(B)については33条又は31条であろう。
(A)の話に60点程度の配点が,(B)の話に40点程度の配点があると思われ,現実の採点に際して調整されることが予想され,最終的には,(A)が70点程度,(B)が30点程度となるだろう。
関連判例[1]は,(A)については,マクリーン事件であり,(B)については,川崎民商事件又は成田新法事件であり,すべて最高裁判所の「大法廷」の判例である[2]。
(A)に関しては,在留権の話はともかく,21条1項についてのマクリーン事件の議論を13条後段(自己決定権)に活用できるかが問題となり,(B)に関しては,35条についての川崎民商事件又は成田新法事件の議論を33条に関係する法令の違憲性の話に活用できるかが問題となるものと考えられる。
なお,(A)に関しては立法裁量の話が出てくるだろう。
ところで,予想を外してしまった主な理由は次の3つである。すなわち,①13条(後段)2年連続はないと考えたこと,②外国人の人権は基本書・教科書では前半部分に登場するため,2年連続で前半部分の出題はないだろうと予想したこと,そして③手続的権利は,確かにプレテストでは聞かれていたように記憶しているが,憲法では出ておらず,判例からするとそう簡単には違憲になり難いテーマであるため,出ないと踏んだことである。
しかし,いずれも安易であり,外すべきではなかったかもしれない。
次のことから,外国人の人権ということについては予想ができたように思われ,残念でならない(とはいえ,それでも,自己決定権・手続的権利というところまでは難しいが)。
著名な憲法判例百選と並び,受験生が使うことの多い判例解説集として,憲法判例研究会編『判例プラクティス憲法〔増補版〕』(信山社,2014(平成26)年)がある。
「著者」は7名であるところ,うち2名が考査委員(尾形健教授,曽我部真裕教授)である。
そして,考査委員経験が比較的豊富と考えられる曽我部教授は,マクリーン事件等が著名な外国人の人権のテーマを含む「人権の主体」のところを書いている。
外国人の人権論に関する曽我部教授の考え方や問題意識等は,上記『判例プラクティス憲法〔増補版〕』4頁,6~7頁に書いてあるので,まずは読んでいただきたい。
また,同7頁で引用されている参考文献も重要である。
言いたいことは色々あるが,後日としたい。
[1] 「関連判例」の意味については,平裕介「司法試験の関連判例を学習することの意義」法苑(新日本法規)179号(2016年)1~8頁(2頁)を参照されたい。なお,この文献は,ウェブ上で公表されている。
[2] 平・前掲注(1)8頁も,司法試験論文式試験の対策として,百選掲載の「大法廷」判例を読み込むことの重要性を説いている。
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