平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その1:受験生「中間審査基準でマクリーン判決を超えてもいいんですか?」→考査委員「いいんです。」

 

「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(4)」(平成29年5月22日ブログ)などでも述べたとおり,平成29年司法試験論文憲法には,憲法学にとって緊々の課題と評される「マクリーン判決を超える 」(愛敬浩二「判批」長谷部恭男ほか編『憲法判例百選Ⅰ〔第6版〕』(有斐閣,2013年)5頁(1事件,マクリーン事件)。)方策を受験生に問うという側面があるものと考えられるところ,このことをこのたび公表された平成29年司法試験論文式試験「出題趣旨」1頁でよく確認することができた。

  

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このマクリーン判決の超え方に関しては,マクリーン事件とは事案が異なると主張してその判断枠組み(基準)をより厳格なものにするための理由付けをどのように書くべきかが特に重要であると考えられる。今年の出題趣旨は,この点についてかなり具体的な記述をしており,大変参考になる。マクリーン判決の超え方に関して「中間審査基準(目的の重要性,手段の実質的関連性)を使って良いとしている点も注目である。

 

 

(以下「出題趣旨」の抜粋,下線及び[A]・[B]は引用者)

代理人甲としては,マクリーン事件判決のこのような判断を踏まえつつ,本件のような場合には立法裁量が限定されるべきという主張を組み立てる必要がある。様々な立論があり得るだろうが,飽くまで一例ということで示すとすれば,まず,[A]妊娠等が本人の人生にとって極めて重要な選択であり,また,人生においても妊娠等ができる期間には限りがあり(なお,新制度はそのような年代の者を専ら対象としている(特労法第4条第1項第1号)。),自己決定権の中でも特に尊重されなければならないこと,また,[B]本件が,再入国と同視される在留期間の更新拒否ではなく,強制出国の事例であってマクリーン事件とは事案が異なることなどを指摘して,立法裁量には限界があるとして中間審査基準(目的の重要性,手段の実質的関連性)によるべきだという主張をすることなどが考えられる。

(引用終わり)

 

この点に関し,「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(4)」(平成29年5月22日ブログ)でも書いたとおり,私は,違憲審査枠組みの設定に関して考慮されるべき事項・要素として,①制約される人権の重要性(いわば人権のプラス面),②他社の人権等や公益を制約する弊害的な(いわば人権のマイナス面)が小さいこと(=当該人権の制約の本来的可能性が低いこと),③規制態様の強さの3つを適宜活用すべきと考えている(①・②につき,青柳幸一『憲法』(尚学社,2015年)87頁参照)。

 

上記「出題趣旨」のAの部分は,①人権の重要性(いわば人権のプラス面)という考慮事項・要素を活用したものであり,また,Bの部分は,③規制態様の強さの考慮事項・要素を活用したものといえる。

 

ちなみに,「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(3)」(平成29年5月21日ブログ)では,上記の3つの考慮事項を活用して,私なりのマクリーンの超え方に係る文書を書いた。出題趣旨の記載と多少重なる部分があると思っているが,読者の皆様はどのように思われるだろうか。 

 

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(以下,一部を再掲,下線と[a]・[b]は引用者)

ウ 正当化理由の有無を判定する段階の要点

 上記Bの人権制約は正当化されるか。我が国の農業及び製造業に必要な労働力の確保という労働政策等(法1条)からの規制であり,制約根拠(公共の福祉,13条後段)はあるとしても,その制約が許されるものかが問題となる。

 この点については,確かに,外国人の在留権(在留の権利)は,国際慣習法上,保障されているものではないと解されている(マクリーン事件)。とすると,外国人の妊娠・出産の権利・自由の保障も,法における特定労務外国人制度の枠内で与えられているにすぎないもののようにもみえる。

 しかし,特労法は入管法の外国人在留制度と比べて在留の要件を限定しており(法4条1項),帰化・永住を希望しないことがその要件となっていること(同項4号),認証は原則として3年のみで効力を失うことなどからすると,特労法における外国人の人権行使が,…日本国民の人権や公益(国益)と衝突することは比較的少ないといえる。そのため,入管法上の在留更新等の場合よりも,手厚い人権保障が要請されるものというべきである。

 また,[a]妊娠・出産という人生の選択をする自由は,その者の日々の生活や生き方,ものの見方・思想などを大きく変えうるものであり,自身の子に,価値遺伝的素質を伝承するという意味でも人格的生存の根幹に密接にかかわるものといえる。このような意味で,妊娠・出産の権利・自由は,精神的自由等における自己実現の価値の大前提たる極めて重要な意義を有する。加えて,[b]例外を許さず,妊娠・出産の権利・自由が全面的に制約されており,その意味で比較的強い規制といえる

 とすると,マクリーン事件(外国人在留制度)で問題となった外国人の表現の自由の場合とは異なり,特労法との関係では,妊娠・出産の権利・自由は,同法の制度の枠内で保障されるという弱い保障にとどまらず,より手厚く保障されるものというべきである。具体的には,マクリーン事件の採ったような裁量権の逸脱濫用審査に係る審査密度の低い審査枠組みではなく,立法目的が重要であり,かつ立法目的と手段との間に実質的関連性があるといえる場合でなければ違憲とされる審査基準によるべきである。

(引用終わり)

 

 

なお,出題趣旨では,マクリーン判決の超え方に関して「中間審査基準」を使ってもよいとしているが,これは今日の裁判実務とは(残念ではあるが)必ずしも整合しないものであろう。そこで,出題趣旨でも「飽くまで一例ということで示すとすれば」と断っているのではないかと思われる。

 

とはいえ,この手の事案で「中間審査基準」が(一応)ありうる立論として法務省のウェブサイトで公表された事実は大きいだろう。考査委員の先生方の意気込みを感じ,感動したので,ブログを更新した次第である。

 

 

*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

 

平成29年司法試験出題趣旨(行政法)の感想 その1:出題趣旨と 『基本行政法』との考え方の違い

 

平成29年司法試験論文式試験の「出題趣旨」が公表された。

本ブログの存在を筆者自身が殆ど忘れていたが,出題趣旨の公表を契機に,久しぶりに更新することとした。

 

といっても,今回は,行政法の出題趣旨で気になった1つの点だけに言及する。

 

(以下「出題趣旨」3頁より抜粋,下線は引用者)

〔設問1⑴〕は非申請型義務付け訴訟の訴訟要件に関する基本的な理解を問うものである。行政事件訴訟法第3条第6項第1号及び第37条の2の規定に従って,本件フェンスを撤去させるために道路管理者Y市長が道路法第71条第1項の規定に基づき行うべき処分を「一定の処分」として具体的に特定した上で,当該処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあるか,また,その損害を避けるため他に適当な方法がないか,そして原告適格の有無について論じなければならない。
 重大な損害を生ずるおそれの検討に当たっては,損害の回復の困難の程度を考慮し,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質を勘案した上で,本件市道を,X2が小学校への通学路として利用できないこと及びXらが災害時の避難路として利用ができないこと(以下「本件被侵害利益」という。)がそれぞれ「重大な損害」に当たるかどうかについて論じることが求められる。
 損害を避けるための他に適当な方法の検討に当たっては,(中略)それが「他に適当な方法」に当たるかどうかを検討することが求められる。

 原告適格の検討に当たっては,行政事件訴訟法第37条の2第4項で準用されている同法第9条第2項の規定に基づき,道路法第71条第1項及び第43条第2号の規定の趣旨・目的を踏まえ,本件被侵害利益がこれらの規定によって考慮されているか,また本件被侵害利益の内容・性質及びそれが害される態様・程度を勘案しなければならない。

(以上,引用終わり)

 

ということで,この部分を読み,考査委員の1人である中原茂樹先生の『基本行政法[第2版]』(日本評論社,2015年)367~368頁のコラム「『重大な損害を生ずるおそれ』(行訴法37条の2第1項・2項)と原告適格(同条3項・4項)との関係」とは,答案の書き方に関する立場が違うとの感想を抱くに至った。

 

すなわち,同コラムでは、非申請型義務付け訴訟の訴訟要件の「検討順序」として「まず、原告適格の有無を(中略)検討した後、原告適格が認められる者について、1項にいう『重大な損害を生ずるおそれ』の有無を(中略)を検討することが考えられる。」(368頁)としているが,これは上記「出題趣旨」とは異なる立場であるといえる。

 

結局のところ,「出題趣旨」の方は,条文で各訴訟要件が規定されている順序のとおりに検討すればOKとの立場であった。

 

 

このように『基本行政法』とは異なる立場で書いても,受かるのである。

 

 

*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

 

「公共の安念」という「カミ」

司法試験受験生であれば,「公共の安寧」というキーワードは知っておかなければならない。

 

平成25年司法試験論文式試験公法系科目第1問(憲法)では,自治体(県)側の反論等で,東京都公安条例事件最高裁判決[1]の活用が求められており[2],この大法廷判決は短答式試験でも重要であることから,事案・判旨の要点を理解した上,キーワードなどを記憶しておく必要がある。

 

その判示で登場するのが「公共の安寧」である。

 

本判決は,「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」以外はデモ行進の許可が義務付けられるとしつつも,いわゆる集団暴徒化論に言及した点が有名である。

 

 

ところで,私は「公共の安念」という憲法ギャグのようなもの(?)を聴いたことがあるが,これを聴いたときは単に「公共の安寧」を意識したものだと思っていた。

 

 

安念潤司先生といえば,学会のみならず,司法試験の受験生の間でもかなり有名な先生であり,そのインパクトある発言等に,これまで多くの受験生が(も)引きつけられてきた。

 

特に,中央ロージャーナル6巻2号85頁以下(2009年)に掲載された安念先生の御玉稿「判例で書いてもいいんですか?」は,司法試験受験生の間では(も)話題になった(今でもしばしば話題になるだろう)。

 

しかし,ここでは,上記御玉稿ではなく,第1回の新司法試験を次の年に控える2005年(平成17年)の日本公法学会での安念先生の御報告内容(同学会の学会誌である『公法研究』に掲載されているもの)[3]の一部を次の枠内に引用することとしたい(下線は引用者)。

 

私は、サービス産業の片隅に身を置く一従業員にすぎないので、「教育はかくあるべし」式の理念・理想の類は持ち合わせておらず、与えられた仕事の範囲内で少しでも顧客満足度を高めることが使命だと心得ているだけである。また、今回図らずも公法学会にお招きをいただいたが、会員各位も、私の「融合教育理念論」を聞こうなどとはよもや思っておられまいから、本報告では、もっぱら私自身のささやかな体験を披話したいと思う。(中略)私の話を何らかの参考にしていただければ望外の幸せであるが、安念のようにだけはなりたくないものだという反面教師にしていただいても、単に、お笑い種として一笑に付していただいても、それは会員各位のご自由である。

 

このように,特に下線部のような発言は,中々,正面切っては言えないものと思われるが,顧客満足度を明言する点に関し,司法試験受験生(授業を受ける法科大学院生)は,大変心強く感じるであろう。

受験指導をする側にとっても,茂樹的・・・もとい刺激的[4]な内容である。

 

 

さて,この公法研究68号には,安念先生が現に法科大学院の授業で扱った,あるいはその可能性があった問題・資料の一部が数問(全7問)分掲載されているが,これらの一部が(新)司法試験の論文式の問題とかなり似ていることは案外広くは知られていないように思われる。

 

そこで,その問題の概略のみ紹介するので,司法試験受験生とくに憲法の論文に苦手意識が少しでもある受験生の皆様は,公法研究68号掲載の安念先生の研究報告を読まれると良いだろう。

 

ちなみに,この公法研究は基本的には1年に1号発行されるものであるところ,ちょうど10年後に発行された公法研究78号には拙稿(公募論文)が掲載されているので,決してステマと認識しているわけではないが,脚注でそれとなく紹介しておくこととする[5]

 

 

○問題の実例その1[6]

次の規定をもつ条約が日本国について効力を生じたとすると、いかなる憲法上の問題を生ずるか。

①たばこ製品の製造を業とする者は、たばこ製品の包装及びラベルに、「ロー・タール」、「マイルド」、「ライト」その他の、たばこ製品の有害性が低いものと誤認させる文字、図形その他の表示をしてはならない。

②たばこ製品の製造を業とする者は、たばこ製品の包装及びラベルに、〈喫煙は、肺がん、肺気腫などの呼吸器疾患、虚血性心疾患その他の致命的な疾患に罹患するリスクを著しく高める〉旨、及び、〈受動喫煙も、これら疾患に罹患するリスクを高める〉旨の簡潔な表示をしなければならない。

(以下,略)

 

平成17年10月に学会報告がなされ,酷似した事案が,平成18年5月実施の第1回新司法試験論文憲法に出題されている。的中という用語では到底表現しきれないほどの的中である。

 

 

○問題の実例その2[7]

タクシー業(一般乗用旅客自動車運送事業)は、(以下,略)

 

論点は異なるが,タクシー業の事案は,平成26年司法試験論文憲法で出題されている。

 

 

○問題の実例その3[8]

A県は、「A県私立学校経常賛助成条例」に基づいて、県内に所在する私立の小学校・中学校・高等学校(中略)に対する公費助成を行ってきた。それによれば、専任教員一人当たり一律年三〇〇万円の人件費の助成がなされる。

ところで、助成対象のひとつである武蔵野キリスト教高等学校は、学校法人武蔵野キリスト教学園が設立し経営しているプロテスタント系の私立学校であり、専任教員の大部分が牧師・伝道師などの聖職者としての資格を有してい

る。

(中略)

同高等学校に対するA県の公費助成は、憲法の政教分雌原則に反しないか。

(以下,略)

 

89条,20条3項の問題ということで,平成24年司法試験論文憲法が直ちに想起されるところである。この問題については「住民訴訟との組合せは考えられる」[9]とのコメントもあり,訴訟類型まできっちり当てているわけである。

 

 

○問題の実例その4[10]

国会法を改正して次のようなルールを採用した場合、憲法に違反するか。

(以下,略)

 

統治分野の問題ということで,平成30年以降の予備試験論文憲法での出題が予想される問題といえよう。各自,上記の省略部分を確認されたい。

 

 

○問題の実例その5[11]

次の各問題に解答せよ。

1 (略)

2 B市のC地区は、もともと閑静な住宅街であるが、近年、主要道路沿いにさまざまなジャンルの飲食店やブティックが相次いで出店し、雑誌などで取り上げられる機会が増え、遠方からの来客も多く、このことが市勢の振興に大きく貢献している。ところが、飲食応の密集に連れて悪臭が問題となりはじめ、強力な規制をとらないと、高級住宅街の中におしゃれな底舗が建ち並んでいる一角として折角育ってきたC地区のブランド価値が著しく損われかねない事態となった。

(中略)

そこで、B市は、C地区のブランド価値の維持・向上を目的として、「C地区における悪臭の防止のための条例」を新たに制定した。

(中略)

同条例の憲法上の問題点を論ぜよ。

(以下,略)

 

法律と条例との関係などにつき,徳島市公安条例事件[12]等を活用して解答させる問題であり[13]平成19年司法試験論文憲法の事案・論点を彷彿させるものである。主要論点につき,的中している。

 

 

○問題の実例その6[14]

下記の各判例を読み、問題に答えよ。

A 最大判昭和六二・四・二二(百選一〇三事件)

(以下,略)

 

「財産権の制限・正当な補償に関するもっとも基本的な判例[15]に関する問題であり,司法試験ではないが,平成29年予備試験論文憲法で活用すべきものと考えられる判例や同予備試験で出題された2つの論点について解答する問題である。的中といえよう。

 

 

○問題の実例その7[16]

 

これも29条の問題であるが,受験生自身の目で確認して欲しい。

 

確かに,平成29年予備試験で29条が出題済であるが,平成18年の司法試験では,平成19年以降(予備試験ではなく)司法試験では29条の出題がないため,平成31年司法試験あたりでは要注意である(ちなみに,平成30年は精神的自由の年と予想される)。平成31年に受験される予定の方は,問題の実例その7についてもよく読んでおくと良かろう。

 

 

・・・と,このように,安念先生は,憲法学等の研究者であるとともに,実は「預言者」なのではないかとの疑いすら抱くところである。

 

そんな安念先生の演習問題は他にもあるわけであり,比較的有名なものとしては,もう連載が終わってかなり経つが,法学教室』の演習(憲法)の連載の各問題を挙げることができる。

 

例えば,法学教室290号128~129頁(2004年)には,有害図書等の総流通量減少を目的とする条例の合憲性と問う事例問題とその解説が書かれており,これは平成20年司法試験論文憲法の対策としてかなり有益な問題であったものといえる。受験生は上記連載についてもチェックしていただきたい。

 

 

ところで,「公共」とは,不特定・多数人を意味することが多いと思われる。

 

安念潤司先生は,(研究者に対してはもとより,)まさに不特定・多数人の司法試験・予備試験受験生に対して大変有益な情報を提供してくれる「神」のような存在ではなかろうか。

 

 

判例はカミ,学説はゴミ」[17]の格言に続きがあるとすれば,

「安念もカミ」ということになろう。

 

 

 

「公共の安念」は,憲法ギャグではなかったようである。

 

 


 

[1] 最大判昭和35年7月20日刑集14巻9号1243頁,長谷部恭男石川健治=宍戸常寿『憲法判例百選Ⅰ[第6版]』(有斐閣,2013年)(以下「百選Ⅰ」)155頁(A4事件)〔木下昌彦〕。

[2] 木村草太『司法試験論文過去問 LIVE解説講義本 木村草太 憲法』(辰已法律研究所,2014年)432頁参照。

[3] 安念潤司憲法行政法の『融合』教育について」公法研究68号(2006年)100頁。

[4] 「刺激」と変換しようとしたところ,中原茂樹先生(平成29年司法試験・予備試験考査委員(行政法))のお名前の漢字が真っ先に出てきたことを念のため記しておく。とはいえ,私自身は過度の受験指導をした(している)という「認識」はなく,そのような「記憶」もない。仮にそのような事実ないし評価がありうるとしても,関係文書はすべて破棄しているか,あるいは短期間に自動的に関係データが消去されるシステムがあることに加え,復旧できぬようハードディスク等はドリルで穴を上げて水没させているので「全く問題ない」というほかないが,国会における証人喚問については断固拒否することとする。なお,私の司法試験憲法論文に関する雑感(ネットでタダで読めるもの)として,平裕介「司法試験の関連判例を学習することの意義」法苑179号(新日本法規,2016年)1頁をここで密かに紹介する。

[5] 平裕介「行政不服審査法活用のための『不当』性の基準」公法研究78号(2016年)239頁。

[6] 安念・前掲注(3)102頁。

[7] 安念・前掲注(3)104頁。

[8] 安念・前掲注(3)106頁。

[9] 安念・前掲注(3)107頁。

[10] 安念・前掲注(3)108頁。

[11] 安念・前掲注(3)108頁。

[12] 最大判昭和50年9月10日刑集29巻8号489頁,百選Ⅰ186頁(88事件)〔木村草太〕。

[13] 安念・前掲注(3)110~111頁参照。

[14] 安念・前掲注(3)111頁。

[15] 安念・前掲注(3)113頁。森林法共有林事件(最大判昭和62年4月22日民集41巻3号805頁,百選Ⅰ214頁(101事件)〔巻美矢紀〕)のことである。

[16] 安念・前掲注(3)113頁。

[17] 安念潤司判例で書いてもいいんですか?」中央ロージャーナル6巻2号(2009年)88頁。

 

*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものです。

 

 

平成29年予備試験論文憲法&平成30年司法試験論文憲法の対策(1) 25条の捌き方

Ⅰ はじめに

 

ここのところ平成29年司法試験論文憲法行政法の感想を書いてきたが,やや飽きてきてしまったため,「平成29年予備試験論文憲法平成30年司法試験論文憲法の対策」と題して,今年の予備・来年の司法試験対策のブログを書いてみたいと思う。

 

今回は,憲法25条が出題された司法試験(新司法試験)の過去問を検討する。

 

25条は,司法試験論文(憲法)では平成22年で出題されて以来,司法試験論文でも予備試験論文でも出題がない。

このように,「不気味」な論点であり,あの考査試験の先生が研究されているテーマに関わる人権でもあることから,潰しておく必要がある。

 

司法試験論文は,予備試験論文にはやや長いものとなるが,上記のように過去問が1つ(平成22年)しかないにもかかわらず,そろそろ(予備試験でも)出そうな人権であることから,この過去問を検討しておくべきであろう。受験生の方々が過去問を検討される際に本ブログも参考にしていただけると幸いである。

 

 

Ⅱ 平成22年の事案と予想される事案等(生存権関係)

 

(ア)平成22年の事案は,権利(抽象的権利)が具体化された後のケースであったのに対し,(イ)平成29年予備又は平成30年司法試験での予想される事案は,権利(抽象的権利)が具体化された給付制度が後退(減額等)するケースである。(ア)22年タイプの方は,以下の答案例(設問1部分の)のような規範(行政法判断代置的審査に近い規範)で処理すれば良いだろうが,(イ)のタイプの方は立法裁量あるいは行政裁量の判断過程統制審査の規範処理すべき(25条又は25条+14条)だろう(この点につき,下記で若干の補足をする)。

 

ただし,(ア)のような事案が再度出題されることも十分に予想される(たとえば,柴田憲司「車を借りると生活保護は廃止?」宍戸常寿編著『憲法演習ノート―憲法を楽しむ21問(弘文堂,2015年)300~303頁の事例問題(解説は303~320頁))から,(ア)の規範・あてはめも書けるようにしておく必要があり,22年を検討してく必要があるということになる。

 

また,(イ)については,宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開 第2版日本評論社,2014年)164~165頁の「生存権憲法的構成」の事例問題(解説は165~174頁)や,老齢加算廃止に関する木下和朗「第4問」原田一明=君塚正臣編『ロースクール憲法総合演習』(法律文化社,2012年)96~98頁の事例問題(解説は213~218頁)が大いに参考になる(母子加算の廃止を合憲・適法とした京都地判平成21年12月14日も参照。なお,母子加算制度は,自民党政権下で廃止されたが民主党政権下で復活した。)ので,よく読んでいただきたい。

 

 

Ⅲ 答案例(平成22年新司法試験・論文・憲法)とその検討

 

以下,いくつかの文献を参照しつつ[1],私なりに答案(答案例)を書いてみた。また,脚注で,答案例についてコメントを付している。不十分な点も多いと思われるため,批判的に読んでいただきたい。

 

なお,平等原則や選挙権の主張についてもオマケ的に書いてみたが,受験生の方々の参考程度にはなるかもしれない。ご笑覧いただきたい。

 

 

第1 設問

1 生活保護について[2]

本件でY市は,Xの生活保護の認定申請に対して却下処分をしている。そこで,Xは,同処分は[3]Xの生存権憲法(以下,法名は省略する。)[4]25条1項)を侵害するとともに,平等原則(14条1項)に反するものであるから,違憲であると主張する。以下,詳述する。

(1) 生存権(25条1項)侵害の主張

ア まず,Xが生活保護を受ける権利は,健康で文化的な最低限度の生活を営む「権利」として,25条1項により保障される。そして,同項の権利は,抽象的権利であるものの,Xの生活保護を受ける権利は,生活保護法(以下,「法」という。)19条1項により具体化されている[5]といえる。

 もっとも,Xは,Y市がインターネット・カフェやビルの軒先を「居住地」あるいは「現在地法19条1項2号)として認めないという制度運営を行っている[6]ことにより,Xの生活保護の申請が却下され,Xの生活保護を受ける権利が侵害されている。

〔論証〕  このような制度の運用は,法により具体化されたXの権利を制約するものであり,25条1項に反する。すなわち,「現在地」及び「居住地」(法19条1項2号)に該当するか否かについては,25条1項を具体化した法の目的(法1条)や趣旨に適合するように解釈運用すべきである

法1条は,生活に困窮するすべての国民」に対し「必要な保護」を行うとともに,「自立を助長」することを目的としている[7]。そして,法19条が「住所」(住民基本台帳法4条)という文言を用いず,あえて「居住地」や「現在地」という文言を用いた趣旨[8],多数の生活困窮者が生活の本拠を有していないこと(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法1条,2条)に照らし,広く生活困窮者を保護すべきものとする点にあると考えられ,これは「保護」だけではなく「自立」の助長という目的(法1条)にも適合する考え方といえる。そうであるとすれば,Xのように,シェルターでの居住実態はないものの,インターネット・カフェやビルの軒先で寝泊まりしている者については,当該店舗等の所在地が「所管区域内」(19条1項各号)にある場合には「居住地」または「現在地」を有する者として生活保護を認めるべきである。加えて,生活の本拠がない者は,「最低限度」(法1条,3条)以下の,いわば「生存」そのものが脅かされうる者といえることからしても,このような法の解釈運用がなされなければならない[9]

 Xも,生活の本拠がない上,持病があるにもかかわらず病院に行けない状況にあり,生命さえも脅かされる状況に追い詰められている者であることから,現に「生存」そのものが脅かされている者といえる。

 よって,Y市のXに対する生活保護申請の却下処分は,25条1項に反し,違憲である。

(2) 平等原則(14条1項)[10]違反の主張

 Y市は,インターネット・カフェやビルの軒先を「居住地」あるいは「現在地」と認める他の自治体があるにもかかわらず,このような法の制度運用を認めていない。そのため,XのようなY市内のインターネット・カフェ等で寝泊まりする者とその他の自治体のインターネット・カフェ等で寝泊まりする者との間の上記別異取扱いは,平等原則(14条1項)に違反する。

 この点に関し,地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果,その取扱に差別を生ずることがあっても,地域差が生じたことをもって違憲とすることはできないとする最高裁判例[11]がある。しかし,この判例は,条例制定権の認められる(94条)自治体間の区別について判示したものであるから,全国にわたり画一的に適用される必要がある法律の解釈運用についてその射程は及ばない。また,法が無差別平等の明文(2条)を定めていることに鑑みても,全国一律の統一的な法の解釈運用が求められているものといえる。

よって,Xとの関係でも,地域的差異を考慮して法の解釈運用を自治体によって別異に取り扱うことは不合理な差別をするものであるから,Yの却下処分は平等原則に違反する。

2 選挙権について

(1) 立法不作為による選挙権行使の機会の制限

Xは,住民登録が抹消されたことにより,衆議院選挙におい一時的ではなく継続的に投票をすることができないこととされている。そこで,Xは,「住所」要件を必要とする公職選挙法が「現在地」による投票を認めていないという立法不作為がXの選挙権の行使[12]を強く制限し,違憲であるから,Xは,次の衆議院議員選挙で選挙権を行使しうる地位にあることの確認訴訟(実質的当事者訴訟,行政事件訴訟法4条後段)及び国家賠償請求訴訟(国家賠償法(以下「国賠法」という。)条1項)を提起し,以下の主張をすべきである[13]

(2) 立法不作為の違憲の主張

〔論証〕  憲法は,国民主権原理前文,に基づき,全国民の代表である両議院の議員に投票することにより国政に参加する選挙権を国民固有の権利として保障し(15条1項,43条1項),併せて普通選挙の原則(15条3項)及び平等選挙の原則(44条ただし書)を規定しており,この趣旨を確たるものにするために選挙権の行使の機会も保障している。そのため,国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,そのような制限をするためには,制限することがやむをえないと認められる事由がなければならないというべきである。そして,同事由があるといえるためには,そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合であることが必要である。[14]

 以上を本件についてみると,Xが衆議院議員選挙で投票する権利の行使の機会も憲法上保障されているが,Xのように住所を有していないと選挙権を行使する機会が制限されている。すなわち,選挙権を行使するためには,「選挙人名簿」に登録されていること(公職選挙法21条1項等),同名簿登録のための住所要件(同項),そして「住民基本台帳」に記録されていること(同項,住民基本台帳法15条1項)が必要であり,さらに,住民基本台帳は「住民票」の編成により作成され(同法6条1項),住民票には「住所」が記載され(同法7条7号),この住所は地方自治法10条1項に規定する「住所」と同義であることから(住民基本台帳法4条[15],現行の法制度では,「生活の本拠」(民法22条)としての住所のない者には選挙権を行使することができないこととされている。

また,選挙人名簿への登録や住所を要件とする公職選挙法の趣旨は,主に自治体の区域を越える不正転入を防止することより選挙の公正を確保する点にある[16]が,Xのような特定の自治体のインターネット・カフェ等で寝泊まりする生活困窮者にかかる不正転入の具体的なおそれはない。よって,上記やむを得ないと認められる事由はないから,本件の立法不作為は,Xの選挙権行使の機会を奪うものであり,15条1項・3項,43条1項,44条ただし書に反し違憲である。

(3) 国賠法上の違法の主張

〔論証〕  さらに,Xは,本件の立法不作為は国賠法上,違法であると主張する。

すなわち,①国民に憲法上の権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,②それが明白であるにもかかわらず,③国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合には,国会議員の立法不作為は,国賠法1条1項の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。[17]

  本件では,①Xのような者に住所を要求することは実質的に不可能といえるため立法措置が必要不可欠であり,②それが明白といえる。そして,国会議員の任期(45条本文,46条)よりも長い7年前よりNPOから総務省に国政選挙における住所要件の改正を求める請願書が提出されていることに加え,資本主義の発展とともに半ば不可避的に生じるホームレスの国民を多角的に支援することは,少なくとも10年以上前から国会議員及び多数の一般国民に共通に認識されてきた社会的課題であるといえるから,上記③も満たす。よって,本件の立法不作為は国賠法1条1項の適用上,違法である。

第2 設問2

 1 生活保護について

(1) 生存権侵害の主張について

ア 想定されるY市の反論

Y市は,生活保護の財源を4分の1負担しており,生活保護制度はY市の財政における有限の財源を前提とするものであるから,インターネット・カフェやビルの軒先を「居住地」・「現在地」として認めないとの法の運用は,25条1項を具体化した法の目的や趣旨に適合する解釈運用の範囲内のものであると反論する。

また,Y市は,Xのように住所がなくなったホームレスであっても,団体Aのシェルターなどに居住すればそこを住所としてあらためて住民登録できるのであるから,Xのような者にまで生活保護の受給を認めると,かえってその「自立を助長」(法1条)することにはならず,逆に法の目的に反すると反論する。

イ 私見

この点につき,確かに25条1項の文言は抽象的であることから,常に財政上の理由を考慮することが許されないというわけではなく,また,「自立の助長」に資するか否かについては実質的に判断される必要があるものと考える。

もっとも,Xのように持病があり「医療扶助」を受けるために生活保護の申請をする者については,特に「保護」(1条)の必要性が高いものといえる。そこで,少なくとも,このように「生存」そのものを脅かされている者について,財政上の理由からインターネット・カフェ等を「居住地」・「現在地」に当たらないとすることは,25条1項を具体化した法の目的や趣旨に適合する解釈運用とはいえないものと解される。

また,団体Aのシェルターは,現在「飽和状態」であり,息苦しさを感じるほどであるから,起臥寝食の場として適当ではなく,そのような場所での日常生活を強いることはXの「自立の助長」に資するものではなく,かえってXの自立を妨げるものといえる。

よって,Y市の生活保護申請の却下処分は,25条1項に反し,違憲である。

(2) 平等原則違反の主張について

ア Y市の反論

Y市は,ホームレスがY市内に増えることによる市のイメージの悪化のおそれや,公衆衛生上の問題も生じうるなどの地域の実情に照らし,判例が容認する条例制定による地域差だけではなく,法19条1項2号に関して他の自治体とは異なる法の解釈運用を行うことついても,当然に予期されることであり,憲法上容認されているものであると反論する。

イ 私見

この点につき,ホームレスがY市内に増えることによる市のイメージの悪化という事情の考慮は,ホームレスになることを余儀なくされた者と「地域社会とのあつれき」(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法1条)をより大きくしうるものであり,同法の目的に反するものといえる。また,公衆衛生上の問題も抽象的なおそれにとどまるものといえ,むしろ適切な生活保護の受給によって対処すべき問題といえる。

よって,Y市の反論にあるような各事情を考慮して法19条1項2号に関して他の自治体とは異なる法の解釈運用を行うことは,当然に予期されることとはいえず,憲法上容認されているものではないから,Y市の却下処分は不合理な差別であり,平等原則(14条1項)に反し,違憲である。

 2 選挙権行使の機会の制限に関する主張について

ア 国の反論

() 被告国は,Xの主張する判断枠組みによるとしても,選挙に関する事 項には立法裁量が認められていること(47条参照)や,住所のないホームレスは住所を有する者と比較すると不正転入二重登録等のおそれが大きく,これを防ぐ有効な手段もないといえることから,住所のない者については選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であるから,Xの選挙権行使の制限は違憲ではないと反論する。

() また,立法不作為の「違法」(国賠法1条1項)性の点については,請願書が提出されたのは,国会ではなく総務省であることなどから,少なくとも,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合には当たらない旨反論することが想定される[18]

イ 私見

() 立法不作為の違憲性について

不正転入や二重登録等を防止しつつ住所のない者の選挙権の行使を認めるための手段の点については,例えば,在外選挙人名簿に類似した,(a)居住地・現在地を登録する選挙人名簿制度を整備すること,あるいは,(b)やむを得ず住所を得られない者に対して居住地・現在地とともに当該個人の氏名・年齢・性別・写真等が記載された選挙人カードを用いた選挙制度を整備することなどが考えられる[19]

確かに,(a)在外邦人については海外での現住所を前提としている点で本件とは事情が異なり,(b)上記選挙人カードが偽造されるおそれも否定できない。しかし,偽造については,刑事罰をもって事後的に処罰すればそのおそれは相当程度低減するし,(a)の在外公館投票のように一定の施設を投票場と指定した上で,(b)の選挙人カードの呈示を要件として投票をさせれば,不正転入や二重登録等は防止し得るといえる。

以上より,Xのような住所のない者についても,選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合とはいえず,やむをえないと認められる事由があるとは言えない。よって,本件の立法不作為は,Xの選挙権行使の機会の制限し,15条1項等に反するので違憲である。

() 国賠法1条1項の違法性について

確かに,ホームレスの選挙権行使の機会が制限されてきたという社会的事実は10年以上前か一般国民において問題視されてきたことといえる。しかし,このような社会問題すべてを国会で取り上げて立法措置を講じることができるわけではない。また,本件は,在外邦人選挙権訴訟の事例のように,国会が法律案を審議事項としてから10年[20]以上長期にわたって放置し,立法不作為に違法性が認められた事案と同視しうるものとまでは認められない。

よって,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合とまではいえないから,本件立法不作為は,国賠法上,違法ではない。

以上

 

 

Ⅳ 若干の補足(憲法25条1項の判断枠組みに関して)

 

前記のところで,(ア)平成22年の事案は,権利(抽象的権利)が具体化された後のケースであったのに対し,(イ)平成29年予備又は平成30年司法試験での予想される事案は,権利(抽象的権利)が具体化された給付制度が後退(減額等)するケースであり,(ア)22年の方は,以下の答案例(設問1部分の)のような規範(行政法の判断代置的審査に近いもの)で処理すれば良いだろうが,(イ)の方は,立法裁量あるいは行政裁量の判断過程統制審査で処理すべき(25条又は25条+14条)だろうと述べた。

 

具体的には,判断枠組みの「論証」について次のような違いが出てくることとなるだろう。

 

(ア)権利(抽象的権利)が具体化された後のケース(平成22年型)の判断枠組みの記載例

 

() 判断枠組み

このような法制度の解釈運用は,法により具体化されたXの生存権を侵害するものであり,25条1項に反する。すなわち,指導や保護廃止の必要性があること大前提となる「資産」の「活用」(法4条1項)[21]を満たすか否かについては,25条1項及び同項を具体化した法の目的(法1条)や趣旨に適合するように解釈運用をすべきである[22]

 

(イ)権利(抽象的権利)が具体化された給付制度が後退(減額等)するケースの判断枠組みの記載例

 

() 母子加算の廃止に伴う本件処分は,法令・基準の基準額すなわち「最低限度の生活」(25条1項,法8条2項)の需要を満たすための「基準」(同条1項)の内容を変更する行為を前提とするものであるから,不利益変更の禁止(法56条)そのものに当たるものとまでは言い難く[23]厚生労働大臣の判断に一定の専門技術的・政策的裁量が認められうる[24]と言わざるをえない。

() 判断枠組み

もっとも,いったん法令・基準が特定の基準額を「最低限度の生活」として設定した以上,それを減額することは,最低限度の生活水準を下回ることになる蓋然性が高いものといえるから,裁判所が事実に即して実質的に審査すべきである[25]。そこで,厚生労働大臣判断の過程において考慮・重視すべき事情を考慮・重視せず(考慮不尽),考慮・重視すべきではない事情を考慮・重視すること(他事考慮過大考慮[26])などにより,その判断の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合には,裁量権の逸脱濫用となり違憲(25条1項違反)・違法[27]となるものと考える。

 

 

 

最後に,繰り返しになるが,以上の答案例や記載例等は,不十分な点が多いものと思われ,批判的に読んでいただきたいわけではあるが,出来が悪いと感じるからといって,あまりに感情的なコメントを書くのはどうか控えていただきたい

 

 

例としては,「このハゲーーーーーーっ!!」(下線は引用者)である。

 

   

 

[1] 本答案の作成については,主として,①公法系科目1位(161点)の再現答案(辰已法律研究所『司法試験 論文全過去問集1 公法系憲法【第2版】』(平成27年)210~213頁),②大島義則『憲法ガール』(法律文化社,2013年)61頁以下,③木村草太『司法試験論文過去問 LIVE解説講義本 木村草太 憲法』(辰已法律研究所,2014年)を参考にした。なお,④西口竜司ほか監修『平成22年新司法試験論文過去問答案パーフェクトぶんせき本』(辰已法律研究所,平成23年)30頁によると,上記①の1位答案は,161.90点(論文総合228位の方の答案)である。

[2] 問題文3頁最終段落の1行から項目立てをし,タイトルを付けただけである。「第2 選挙権について」も同様である

[3] いわゆる処分違憲適用違憲)の問題であることをこのように明記すること。

[4] 憲法の答案では,憲法法名は,このように省略すると良いだろう。

[5] 基本的な事項であるが,このようなところを書き落としてはならない。ただし,このように,短く書くと良かろう。

[6] 問題文2頁第6段落3~4行目を殆どそのまま写し,関係条文(法19条1項2号)を書き加えただけである。写経。

[7] 1条のキーワードを写しただけである。写経。

[8] 「目的」だけではなく「趣旨」のあてはめも行っている。

[9] 出題趣旨第2段落の内容を考慮した記載である。

[10] 木村・前掲注(1)③文献は,「平等権」とするが,最大判平成33年10月15日(憲法判例百選Ⅰ[第6版]34事件)の下飯坂潤夫裁判官・奥野健一裁判官の補足意見では「憲法14条の原則」(下線は引用者)と表現されており,「平等原則」(だけ)で良いと思われる。

[11] 最大判平成33年10月15日(憲法判例百選Ⅰ[第6版]34事件)を指すものであるが,判例名や年月日を書く必要はなかろう。

[12] 最大判平成17年9月14日(憲法判例百選Ⅱ[第6版]152事件)も,選挙権それ自体の制限というよりも,「選挙権の行使」の制限行使の機会を奪うこと)である点を強調しているものと思われる。

[13] 確認訴訟(実質的当事者訴訟)については時間・スペースがなければ,省いてもおそらく合格レベルには達するだろう。

[14] 国賠法上の違法の主張の〔論証〕と混同しないように要注意である。また,どちらか一方の判断枠組み=規範(およびそのあてはめ)しか書かないというのもNGである。なお,平成22年の本試験では,上位答案であってもこの〔論証〕を正確に書けなかったものが(意外と多く)あったが,選挙権については(新)司法試験で(この22年の問題で)1度出題されており,他の受験生もかなり準備しているところであるから,規範のキーワードなどは正確に書けるようにすること。

[15] 地方自治法10条1項の「住所」は,民法22条の住所と同義と解されている。

[16] 大島・前掲注(1)②文献59頁,62~63頁,65頁*4参照。

[17] 立法不作為が国賠法1条1項の違法とされる場合の判例の3要件=①必要不可欠性,②明白性,③正当な理由なき長期の懈怠を記憶しよう。なお,あてはめでは,平成29年以降の問題でも③が特に問題になり易いものと予想される。

[18] 時間が限られているため,判例の3要件のうち,①や②の要件については意図的に争点としないようにしたが,時間・余裕があれば書いて良い(ただし困難)。

[19] 西口・前掲注(1)④文献38頁の153.86点(公法系科目論文8~10位)の再現答案(論文総合49位の方のもの)でも,似たような手段の検討がなされていた。LRAのあてはめの応用をするところといえるだろう。なお,マイナンバーのようなコード・番号のようなものを付加して個々人の特定性を高めてもよい(二重投票等をより防ぎ易くなるため)が,秘密選挙の原則(憲法15条4項前段)に反するような手段とならないように注意する必要がある。

[20] 在外邦人選挙権訴訟の事例でも実質的な審議はなされていなかったが,審議事項に挙がった時点から「10年」の起算がなされている。

[21] 平成22年とは異なり,資産活用要件(生活保護法4条1項)の認否が問われる事案を前提とした論証例である。

[22] 平成22年の上位合格答案等を参考にした記載(論証)例である。スラスラと書けるようになりたいところである。

[23] 最判平成24228の立場である。宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開 第2版日本評論社,2014年)173頁は,同判例が「制度後退禁止原則に触れず、また保護基準の変更に生活保護56条の適用を認めなかった」(下線・太字は引用者)と説明する。なお,判例で否定され,さらに研究者でも肯否が分かれる「制度後退禁止(原則)」という用語については,あえて触れないという戦略でも良いかもしれない

[24] 原告(原告訴訟代理人弁護士)の主張の場合には,「広範な裁量」「広い裁量」という(被告に有利な)言葉は避けるべきである。

[25] 宍戸・前掲注(25)173頁参照。最判平成24年2月28日の判示からすれば,本問では,原告主張段階においても,裁量の幅が狭いなどの記載はしなくても良いかもしれない。

[26] 宍戸・前掲注(25)174頁に「過大考慮」という記載があるから,このような用語を使って良いだろう。

[27] 憲法の答案では,違法(行政法)は直接は問題とならない(ことが多い)が,この部分では,この程度の記載は許されるし,実務では基本的には違法の問題として捉えられているといえるから,「違憲・違法」などと書く分にはOKだろう。

 

*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

 

司法試験の勉強でのマーカーの色分け ~私の場合~

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司法試験受験生時代、私は、伊藤塾の情報シートを使っていました。短答関係は、基本的には情報シートに一元化するように努めていました。
ちなみに、他に市販の短答式六法のような教材は基本的には使いませんでした。

f:id:YusukeTaira:20170618005922j:plain
マーカーの色分けをする勉強法もやっていました。
私は比較的細かく分けるタイプであったように思います。

今見ると少し目がチカチカしますが、当時の私にはこの方法が合っていました。

蛍光ペン
黄      条文文言等の知識
青      論点、問題点、論点の所在となる条文文言等    
紫      定義
オレンジ   判例の採る見解
オレンジ波線 判例の理由付け
赤      自説(基本的には通説、多数説) 
ピンク    自説の理由付け
緑      反対説
緑波線    反対説の理由付け

(ペン)
赤 強調したい重要箇所(間違えた所などが中心)
緑 より強調したい重要箇所(かなり基本的な事項であるにもかかわらず、間違えた所などが中心)


f:id:YusukeTaira:20170618012208j:plain
模試の解説等(情報シートでは足りない知識等)のコピーを切って穴を開けて、情報シートに加えたりしていました。別冊で間違えた問題の問題集を作る方法でも良かったのかもしれませんが。


受験生の皆さんも、自分に合ったスタイルを探してみて下さい。

6月25日(日)ロースクール説明会等の告知

法科大学院協会主催、日弁連共催の企画
「ロースクールへ行こう!! 2017 ★列島縦断★ロースクール説明会&懇親会」(東京会場)が、6月25日(日)に開催されます。

時間は13:30~17:30(13:00開場)、場所は日本大学お茶の水校舎(東京都千代田区神田駿河台1ー6、御茶ノ水駅から徒歩3分)です。

私も、第1部(13:30~)、第2部(15:30~)ともに出席いたします。
(第1部では、司会を担当する予定です。)

ロースクール(法科大学院)の受験を考えている皆様、ぜひご参加下さい!

ロースクールの入試や授業のこと、司法試験や予備試験のこと、法曹や研究者の仕事や生活のことなど、多くの様々な法曹・研究者・大学教職員が一同に集まりますので、疑問等を解消する良い機会になるのではないかと思います。
一緒に話しましょう。

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平成29年司法試験 公法系第1問の感想(8) 成田新法事件の3要素の「重さ」

前回のブログ「平成29年司法試験 公法系第1問の感想(7)」の続きである。

 

前回のブログでは,<刑事手続につき規定した憲法33条の行政手続(平成29年司法試験の特労法)への適用又は準用が認められるか?>という論点につき,憲法35条に関する川崎民商事件(最大判昭和47年11月22日刑集26巻9号554頁)[1]と成田新法事件(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁)[2]の判示を比較し,成田新法事件の千葉勝美調査官解説や平成22年司法試験論文憲法の採点実感等に触れるなどした上で,成田新法事件の規範の方を活用・応用であると述べた。詳しくは,前回のブログを読んでいただきたい。

 

yusuketaira.hatenablog.com

 

さて,今回は,前回検討しなかった,成田新法事件の規範の〔ア〕~〔ウ〕の3要素[3](前回ブログのものを次の通り再掲する。)の重み付け(加重)[4]の点をどのように考えていくかということなどに関する感想を述べてみようと思う。

 

<成田新法事件の総合判断の3要素>

 

〔ア〕行政目的達成のため不可欠

公共の福祉の維持という行政目的を達成するため欠くべからざるものか

 

〔イ〕手続の一般的作用(一般的機能)

刑事責任追及のための資料収集に直接結び付くものであるか

 

〔ウ〕強制手段の直接性

 …強制の程度、態様直接的なものであるか

 

前回も少しだけ触れたが,この3要素の加重の問題については,憲法38条のものではあるが,成田新法事件と同じく,川崎民商事件を引用する所得税法違反事件(最三小判昭和59327[5])が参考になる

 

この昭和59年判例は,38条に関してではあるものの,次の枠内の文章の通り判示しており(下線及び〔 〕内の文書は筆者),成田新法事件と同じく,川崎民商事件を引用する。

 

 憲法三八条一項の規定によるいわゆる供述拒否権の保障は、純然たる刑事手続においてばかりでなく、それ以外の手続においても、対象となる者が自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を求めることになるもので、実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続にはひとしく及ぶものと解される(最高裁昭和四四年(あ)第七三四号同四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五五四頁〔…川崎民商事件判決〕。なお、同昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日大法廷判決・刑集一一巻二号八〇二頁参照)。

 ところで、国税犯則取締法は、収税官吏に対し、犯則事件の調査のため、犯則嫌疑者等に対する質問のほか、検査、領置、臨検、捜索又は差押等をすること(以下これらを総称して「調査手続」という。)を認めている。しかして、右調査手続は、国税の公平確実な賦課徴収という行政目的を実現するためのものであり、その性質は、一種の行政手続であって、刑事手続ではないと解されるが(最高裁昭和四二年(し)第七八号同四四年一二月三日大法廷決定・刑集二三巻一二号一五二五頁)、その手続自体が捜査手続と類似し、これと共通するところがあるばかりでなく、右調査の対象となる犯則事件は、間接国税以外の国税については同法一二条ノ二又は同法一七条各所定の告発により被疑事件となって刑事手続に移行し、告発前の右調査手続において得られた質問顛末書等の資料も、右被疑事件についての捜査及び訴追の証拠資料として利用されることが予定されているのである。このような諸点にかんがみると、右調査手続は、実質的には租税犯の捜査としての機能を営むものであって、租税犯捜査の特殊性、技術性等から専門的知識経験を有する収税官吏に認められた特別の捜査手続としての性質を帯有するものと認められる。したがって、国税犯則取締法上の質問調査の手続は、犯則嫌疑者については、自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項についても供述を求めることになるもので、「実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する」ものというべきであって、前記昭和四七年等の当審大法廷判例及びその趣旨に照らし、憲法三八条一項の規定による供述拒否権の保障が及ぶものと解するのが相当である。

 

このように,昭和59年判例は,川崎民商事件の〔い〕の要素(詳しくは前回のブログ参照)すなわち「実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する」ものであることといった一要素だけで,憲法38条の保障が行政手続に及ぶものとしているように読めるのである。

 

上記〔い〕の要素は,裁量判断に係る考慮事項の問題の場合でいえば,単なる考慮事項(要考慮事項)ではなく,重視事項(要重視事項)とされるべきもの[6]といえよう。

 

とすると,判例は,川崎民商事件の〔い〕の要素,そしてこれと殆ど同じ内容の成田新法事件の上記〔イ〕の要素を重視した総合判断をしているといえ,さらにいえば(ここは論理の飛躍があるかもしれないが),1つの要素が相当程度当てはまるような場合には,35条の適用ないし準用を認めるべきと考えているものと評することが(一応)できるだろう。

 

そして,このように考えるのであれば,設問1では,33条の適用・準用の論点につき,成田新法事件の35条の規範を借用し,その上で,〔ウ〕強制手段の直接性(強制の程度,態様が直接的なものであること)を特に強調し,この要素を満たすと主張して,違憲論(33条違反)を展開すべきと考えられる[7]

 

もちろん,〔ア〕・〔イ〕には多少は触れるべきであるが,厚く論じるべきは〔ウ〕の要素であり,最悪,〔イ〕は(規範定立段階から)答案では一切言及しなくてもOKとおもわれる。ちなみに,〔ア〕については,設問1の規範でも書き,あてはめでも少しは書いておいた方が良い(設問2ではこの点のあてはめの反論(合憲主張)を一定程度論じることが必要となる)。

 

〔ウ〕や〔ア〕のあてはめについての具体的な話などについては,次回以降のブログで述べることとする。

 

 

【 追記 】

平成29年司法試験を受験した方は,短答式試験に通っているとしても,そろそろリスタートしないと,秋までズルズルいってしまうリスクがある。法律学の勉強を少しずつでも良いから,あるいは書類や机周りの整理からでもよいので,(まだ始めていない方は)明日から始めてみると良いだろう。月並みな話だが,合格する自信のある方は,要件事実や刑事事実認定の勉強を(再度)始めると良いと思う。

日頃より法律学に触れておくこと,法的な感覚を忘れないことは,重要である。9月に不合格となっていた場合,それが来年の対策になることはいうまでもないことだが,合格していた場合でも,スムーズに司法修習に入れるからである。

 

 

[1] 松井幸夫「判批」長谷部恭男ほか編『憲法判例百選Ⅱ〔第6版〕』(有斐閣,2013年)(以下,「百選Ⅱ」と略す。)258~259頁(119事件,川崎民商事件)。

[2] 宮地基「判批」百選Ⅱ250~251頁(115事件,成田新法事件)。なお,川崎民商事件も成田新法事件も大法廷の最高裁判例である。司法試験の(短答式試験の対策としてはもちろん)論文式試験の対策として百選掲載の「大法廷」の判例を読み込むことの重要性につき,平裕介「司法試験の関連判例を学習することの意義」法苑(新日本法規出版)179号(2016年)1~8頁(8頁)参照。

[3] 重み付け(加重)の対象となる「要素」につき,行政裁量の認められる処分等の違法事由論等では,「要素」ではなく「考慮事項」(要考慮事項)等の問題として議論が展開されている(例えば,芝池義一「行政決定における考慮事項」法學論叢116巻1=6号(1985年)571頁以下)。

[4] 裁量権の行使に係る「考慮事項の加重・減軽」につき,常岡孝好「裁量権行使に係る行政手続の意義」磯部力ほか編『行政法の新構想Ⅱ 行政作用・行政手続・行政情報法』(有斐閣,2008年)248頁参照。筆者は,成田新法事件の総合判断については,行政裁量は否定される(あるいは裁量が狭い)ものと考えているが,「要素」の重み付けについては,裁量権の行使に係る考慮事項の重み付けの議論を一定程度借用できるものと解している。

[5] 刑集38巻5号2037頁。

[6] 平裕介「行政不服審査法活用のための『不当』性の基準」公法78号(2016年)239頁以下(242頁)参照。

[7] なお,川崎民商事件の〔う〕の要素(前回ブログ参照)を活用(33条の論点に借用)しようとすると,強制の態様等の話と一緒に(同じ要素の中で)公益の話も論じなければならないため,原告(設問1の違憲論)にとってはやや不利になるものと考えられる。

 

 

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