平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

東京法律事務所の先生方からインタビューを受けました

このたび、東京法律事務所の弁護士・本田伊孝先生より、いわゆるコロナ休業には憲法に基づく補償が必要なのかという法的問題に関してインタビューを受けました。

Zoomによるインタビュー(4/21)で、東京法律事務所の先生方、職員の方々にもご参加いただきました。誠に有難うございます!


そして、その内容が公開されましたので、こちらのブログで(も)ご案内させていただきます。

○コロナ休業には憲法に基づく補償を!行政法研究者に聞く
http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1077354477.html


ちなみに、関連するネット記事はこちらです。
ただし、2020年4月5日(緊急事態宣言発令前)の記事です。

○自粛と給付はセットだろ」は法的に正しいのか?
 弁護士・行政法研究者が解説(美術手帖ウェブ版)
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/21630



なお、関連する最近のツイートはこちら↓です。






最後に、美術手帖ウェブ版にも掲載しましたが、このブログを初めてご覧になる方もいると思いますので、プロフィールを貼らせていただきます。
よろしくお願いいたします。

○プロフィール

平 裕介  たいら・ゆうすけ

弁護士(2008年~/東京弁護士会/鈴木三郎法律事務所(中央区銀座))。

行政争訟、自治体からの法律相談等を多く担当する。
中央大学法学部法律学科卒業。日本大学法学部助教行政法専攻)。
國學院大學法学部非常勤講師。東京弁護士会憲法問題対策センター副委員長。日本公法学会会員。

主著は、「行政不服審査法活用のための『不当』性の基準」公法研究78号(2016年)239頁、「行政不服審査における不当裁決の類型と不当性審査基準」行政法研究28号(2019年)167頁、美術の窓(生活の友社)「視点」短期連載(2019年11月~2020年2月、4月、5~6月(予定))。
最近の実務書(いずれも共著)は、『法律家のための行政手続ハンドブック』(ぎょうせい、2019年)、『新・行政不服審査の実務』(三協法規出版、2019年)、『実務解説 行政訴訟』(勁草書房、2020年)、『行政事件実務体系』(民事法研究会、近刊(2020年))など。東京都青梅市出身。

Twitterアカウント:@YusukeTaira



【告知】大島 義則弁護士編著『実務解説 行政訴訟』(勁草書房、2020年)
 ★私は、第2章の執筆を担当させていただきました。
  よろしくお願いいたします!



【記者、編集者の皆様へ】

最近、記者、編集者、雑誌等関係者の皆様から取材や記事執筆等のご依頼を頂戴することが多くなりました。有難うございます。

もし取材や記事執筆等のご依頼をご希望の場合、私のTwitter(下記)を記者、編集者、雑誌等関係者と分かるアカウントでフォローしていただければ相互フォローさせていただきますので、個別のメッセージにて、取材のご依頼や、執筆等のご依頼をしていただけますと幸いです。

なお、以上の論点に限りませんが、これまですでに多くの新聞社、通信社、雑誌の記者、編集者、関係者様から、取材のご依頼や、執筆等のご依頼を頂戴しています。

以上恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。

Twitterアカウント:@YusukeTaira

司法試験・予備試験関係のツイート まとめ(3)

「STAY
 何を犠牲にしても守るべきものがあるとして」*1



********************


前回のブログと同じ趣旨の、第3段です。

司法試験・予備試験に直接関係するツイートだけをまとめてみましたので、各ツイート(ツリーのツイートを含む)を受験勉強の空き時間等にご笑覧ください。

よろしくお願いいたします。


1 憲法

○話題の香川県条例の最大のポイントは規制態様(そもそも規制といえるか)です。



○包装容器リサイクル法(レジ袋有料化義務付け法)と29条。マツキヨのレジ袋とか、2020年4月から有料ですよね。



2 行政法

取消訴訟の処分性と判例変更について。ヤマなので一度は考えておきましょう。


○常識的に考えて、実質的当事者訴訟はそろそろ出ますよ。


行政処分の取消しと撤回の処理と違い、念のため、最終確認を。




○規制権限不行使(不作為)の違法性は、国賠だけではなく非申請型義務付け訴訟でも重要です。



3 その他

○途中答案対策は本当にとても重要です。万全の対策を!



以上、受験生の皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。

*1:Mr.Children「Everything(It's you)」『BOLERO』(TOY’S FACTORY、1997年)。ただし、今、守るべきは、Stay Homeである。

司法試験・予備試験関係のツイート まとめ(2)

「何が起きても変じゃない

 そんな時代さ覚悟はできてる」*1



********************


前回のブログと同じ趣旨の、第2段です。

yusuketaira.hatenablog.com


司法試験・予備試験に直接関係するツイートだけをまとめてみましたので、受験勉強の空き時間等にご笑覧ください。

よろしくお願いいたします。


1 憲法

○予想される出題形式に関して


○規制態様(の強さ)関係。審査基準の理由付けで必須



違憲審査基準の目的審査のポイント


違憲審査基準(中間審査基準)の手段審査のポイント


○国家の基本権保護義務に関して (目的審査、手段審査の両方で書ける場合あり)


○毎年危ない表現の自由関係。京大タテカン問題もあるので、屋外広告物条例事件は要精読


○選挙権関係は平成22年以降出題なし。本当に危険です。


○信教の自由も潰しておこう。ちなみに、令和元年予備論文に活用する剣道実技拒否事件の検討は、判断過程審査の答案対策にもなります。


○令和2年司法試験論文は三段階審査「外し」かも…



2 行政法
○個別法予想その1(入管法


○個別法予想その2(旅券法)



住民訴訟関係。平成22年に出ていますので(憲法では平成24年に出題)、そろそろ危ないです


3 その他
○答練の答案への添削コメント(答案練習会の復習)に関して


○司法試験考査委員は「試験」についてどう考えているのか


以上、少しでも参考になれば幸いです。

よろしくお願いいたします。

*1:Mr.Children「【es】~Theme of es~」『BOLERO』(TOY’S FACTORY、1997年)

司法試験・予備試験関係のツイート まとめ(1)

「もういいや もういいや 疲れ果ててちまった

 そう言って そう言って ここまで来たじゃないか」*1



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最近感じたことですが・・・↓


ということで、試験に直接関係するツイートだけ見たいという受験生向けに、ここ数日間の司法試験・予備試験に直接関係するツイートをまとめてみました。

受験生の皆様において以下の各ツイートとツリーをご覧いただけますと幸いです。

閲覧者が一定数いらっしゃるようであれば、今後も続けていきたいと思います。



1 憲法関係

生存権憲法25条1項)関係


○審査基準の選択に関する人権「制約の本来的可能性」等関係 (青柳幸一『憲法』(尚学社、2015年)87頁)


○「中間審査基準」関係



2 行政法関係

○差止訴訟、無名抗告訴訟(義務不存在確認訴訟)、実質的当事者訴訟関係


国家賠償法関係


新型コロナウィルスの影響で、受験生の皆様は本当に大変な状況であり、受験生ではない私にはその大変さは到底想像できませんが、適宜リスケをしつつ、日々の勉強を頑張っていただければと思います。

上記各ツイートが少しでも参考になれば幸甚です。

よろしくお願いいたします!

*1:Mr.Children「雨のち晴れ」『Atomic Heart』(TOY’S FACTORY、1994年)

「自粛と給付はセットだろ」は法的に正しいのか?

僕らは思っていた以上に
脆くて 小さくて 弱い

でも風に揺れる稲穂のように
柔らかく たくましく 強い*1



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本日(2020年4月5日(日))、美術手帖さんのウェブサイトに、「自粛と給付はセットだろ」を法的に検討する拙稿を掲載していただきました。

https://bijutsutecho.com/magazine/insight/21630


(以下冒頭部分を引用)

「自粛と給付はセットだろ」は法的に正しいのか? 弁護士・行政法研究者が解説

政府や自治体による大規模イベント等の中止・延期等の要請や「不急不要」の外出自粛要請、そのような自粛を呼びかける報道等により、美術・演劇・音楽等、文化芸術活動を行うアーティストや関係者らがイベント中止等により損失を受けている。こうした損失は、法的に補償されるものなのか? 「自粛と給付」はセットかという問題について、文化芸術活動への助成に関する訴訟にも携わっている弁護士兼行政法研究者が解説する。

文=平裕介(弁護士・行政法研究者)

(引用終わり)


「自粛と給付」すなわち自粛要請と【1】損失補償・【2】国家賠償はセットなのか?という問題提起をし、【1】・【2】のいずれについても、場合によっては認められる余地がある、と結論付ける内容となっています。

ウェブ版「美術手帖」の橋爪勇介編集長には大変お世話になりました。


ちなみに、こちらの拙稿は、ヤフーニュースでも取り上げていただきました。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200405-00000004-btecho-cul

ヤフーニュースですと一部しか見られない(注釈部分は見られない)ようなので、美術手帖さんのサイトで注釈部分をご確認ください。



なお、以前も、美術手帖さんのサイトに、↓の、あいちトリエンナーレ2019補助金不交付問題を法的に検討する小論をご掲載いただきました(同じくヤフーニュースでも取り上げて頂きました、同様にヤフーニュースでは全文は見られないようなので、美術手帖さんのサイトで全文をご確認ください)。


「あいトリ」補助金不交付問題は県vs国の法廷闘争へ。今後の展開を行政法学者が解説
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/20747


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191019-00000004-btecho-cul


それぞれ、やや長文になってしまっていますが、お時間がありましたら、一部だけでもご笑覧いただけますと幸いです。


司法試験受験生・予備試験受験生の皆様の学習材料(普段の勉強と日常のニュースを架橋するもの)にもなるのではと思いますので、脚注部分も含め、ご一読いただけますと幸いです。



なお、あいちトリエンナーレそれ自体の話ではないのですが、関連する法的問題として、以下の記事も参考になるかと思います。

芸術文化振興会を提訴。映画『宮本から君へ』助成金不交付で
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21096


それぞれ、今後の大学の授業(日程は延期されています)や講演などでも(まだ何とも言えませんが、ウェブでの授業等の可能性も出てきたように思いますが…)これらの記事の内容を適宜紹介できればいいなと考えています。

学部生(特に法学部生)の皆様も、ぜひ憲法や(拙稿に書かれている)行政法の条文を見ながら、お読みいただきたく存じます。


よろしくお願いいたします!

*1:Mr.Children「かぞえうた」『[(an imitation)blood orange]』(トイズファクトリー、2012年)

マスク転売禁止措置は国民生活安定緊急措置法の物価高騰要件を本当に満たしているのか?「法治主義違反」と言われるおそれもあるが、検察官は「逃げ」ずに戦うのか?

 

「いつも心にしてたアイマスクを外してやればいい」*1

 

  

 

****************

 

  

1 マスク転売禁止が本日開始 政府の説明は…

 

マスク転売禁止スタート ネット販売、業界も対策

2020年(令和2年)3月15日 共同通信

https://www.47news.jp/4614686.html

(以下記事を引用)

新型コロナウイルスの感染拡大で極度の品薄に陥っているマスクの転売禁止が15日始まった。不足に拍車を掛けている転売目的の買い占めを排除するため、政府は罰則付きで監視を強める。転売の温床となっていたインターネットを通じた販売も業界各社が相次ぎ自主規制に乗り出し、官民で流通の適正化を目指す。

 政府は転売禁止に向け、第1次石油危機時に制定した国民生活安定緊急措置法を持ち出した。10日に同法の政令改正を閣議決定し、15日午前0時以降、仕入れ価格を超えた他人への販売を取り締まれるようにした。違反すれば1年以下の懲役か100万円以下の罰金、またはその両方を科す。

(以上引用終わり)

 

政府は、2020(令和2)年3月10日、「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」の閣議決定を行った。

 

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200310002/20200310002.html

 

政府としては、上記経済産業省のウェブサイトで「国民生活緊急措置法(以下、「法」という。)第26条第1項では、生活関連物資等の供給が著しく不足するなど国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じるおそれがあると認められるときは、当該生活関連物資等を政令で指定し、譲渡の禁止などに関し必要な事項を定めることができる旨が規定されています。」と関係法律の条文を摘示した上で、「本政令は、法の規定に基づき、衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から購入した衛生マスクの譲渡を禁止する等の必要があるため、必要な措置を講ずるものです。」と説明している。

政府は、内閣だけで行える政令の改正(公布は同月11日、施行は同月15日)によって、法律を改正することなく、措置を講じたのである。

 

多くの市民にとっては歓迎すべき措置であると思われ、一見、問題なさそうな説明をしているようにも見えるが、本当にそうだろうか?

実は、そうでもなさそうである。

 

このウェブサイトには、政府があえて引用しなかったともみられる条文の要件がある

「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において」の要件である。

 

政府(経産省)は、なぜ、上記要件を引用しなかったのか?

説明が長くなるから、というわけでもなさそうである。以下、問題となる条文を含む関係条文を見てみよう。

 

 

2 国民生活安定緊急措置法と同法26条1項の第1要件

 

さて、国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)(以下「法」と省略する場合がある。) の関係条文を以下引用する。下線や太字による強調,〔①〕~〔④〕の記載は筆者によるものである。

 

(目的)

第1条 この法律は、物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする。

 

(標準価格の決定等)

第3条 物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合において、国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資(以下「生活関連物資等」という。)の価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがあるときは、政令で、当該生活関連物資等を特に価格の安定を図るべき物資として指定することができる。

2 前項に規定する事態が消滅したと認められる場合には、同項の規定による指定は、解除されるものとする。

 

(割当て又は配給等)

第26条 〔①〕物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、〔②〕生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、〔③〕その需給の均衡を回復することが相当の期間極めて困難であることにより、〔④〕国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがあると認められるときは、別に法律の定めがある場合を除き、当該生活関連物資等を政令で指定し、政令で、当該生活関連物資等の割当て若しくは配給又は当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは譲受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。

2 (略)

 

(罰則)

第37条 第26条第1項の規定に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反した者を5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する旨の規定を設けることができる。

 

 

今回のマスク転売禁止措置との関係で、問題となるのは、法26条1項である。

それでは、上記1のとおり、政府(経産省)がウェブサイトで言及しなかった(その意味で気になる)同項の①の要件(第1要件)について少し詳しく見てみよう。

 

 

3 「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれ」(法26条1項)の解釈

 

法26条1項の第1要件である物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において」の解釈については、国民生活安定緊急措置法の立法過程に関わった当時の経済企画庁物価局物価政策課長(垣水孝一氏)編著の『国民生活安定緊急措置法の解説』(経済企画協会、昭和49年)(以下「経済企画庁解説」という。)が参考になる。

 

経済企画庁解説によると、法26条1項の第1要件については、それほど詳しい解説がない(127頁)が、同様に物価要件について定めた法3条1項(ただし,「著しい」という要件が規定されていない点は法26条1項と異なる。)については、ある程度詳しい解説がある。

 

法3条1項は、「物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合」という物価要件を規定しており、経済企画庁解説56頁は、この物価要件につき、次の通り解説している。

 

「物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合とは、卸売物価、消費者物価等を総合した一般的物価水準が、過去のすう勢値を大幅に上回って上昇し又は上昇するおそれがある場合をいう、しかしながら、具体的な数値基準とすて示すことは難しく、物価要件に該当するか否かは、その時点における経済情勢等を勘案して判断することになる。

なお、高騰するおそれがある場合とは、現実に物価が高騰するに至っていない場合においても、例えば、輸入依存度の高い物資の輸入による供給が著しく阻害され、これが国内物価を高騰させるおそれがあるような状態等が該当する。」(下線は筆者)

 

このような法3条1項の物価要件の解釈と同様に考えるのであれば、法26条1項の物価要件については、「著しい」という要件が加重されていることから、単に「大幅に上昇」というだけでは足りず、卸売物価、消費者物価等を総合した一般的物価水準が、過去のすう勢値を著しく大幅に上回って上昇し又は著しく上昇するおそれがある場合をいうものと解すべきであろう。

 

ちなみに、法3条が「物価」と「国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資…の価格」(生活関連物資等の価格)とを書き分けていることからも明らかなとおり、法26条1項の物価要件の「物価」とは、個々の物資(例えば、今回の政令で言うと、マスク)の価格を指すものではない

 

なお、この物価要件について、行政裁量(要件裁量)が認められるかどうかという問題があるが、(あ)法37条の罰則規定の要件でもあること、(い)法26条の物価要件(第1要件)には、④の要件(第4要件)のように「と認める」という文言もないこと、(う)財産権(憲法29条1項)や営業の自由(憲法22条1項)の規制に係るものであることから、要件裁量は認められないものと考えられる。

 

つまり、法26条1項の物価要件については、要件裁量が認められる要件に比べて厳格に解釈適用しなければならないということであり、さらに、罪刑法定主義の要請からも、より厳格に解釈適用されるべき要件であるといえる。

 

ちなみに、この行政法の論点(要件裁量の有無・認否)は司法試験論文式試験行政法)で殆ど毎年出題されている論点である。とくに理解が怪しい受験生各位は、さしあたり以下のブログを参考にされてはどうだろうか。

 

 

yusuketaira.hatenablog.com

 

 

 

4 「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれ」(法26条1項)の当てはめ

 

それでは、今回のマスク転売禁止のための政令改正(本日施行)は、「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれ」(法26条1項)の要件を満たすものであったのか?

 

上記3のとおり、法26条1項の物価要件(第1要件)は(A)卸売物価、(B)消費者物価等を総合した(C)一般的物価水準が、過去のすう勢値を著しく大幅に上回って上昇し又は著しく上昇するおそれがある場合をいうものと解されるところ、これまで政府から(A)~(C)についての詳しい説明はなされていないように思われる。

 

以上に述べたとおり厳格に解釈適用(運用)されるべき法律の要件であることに加え、政府の説明責任の原則知る権利(憲法21条1項参照)との関係でも、(A)~(C)について、もっと詳しい説明が市民に対してなされるべきであろう。

 

また、経済企画庁解説56頁には、「高騰するおそれがある場合とは、現実に物価が高騰するに至っていない場合においても、例えば、輸入依存度の高い物資の輸入による供給が著しく阻害され、これが国内物価を高騰させるおそれがあるような状態等が該当する」との説明がある。

 

現時点で、物価が高騰しているとはいえず、ましてや著しく高騰している状態にあるとはえない(マスクの価格単体で考えてはならないことは以上に述べたとおり)。

 

そして、物価が著しく高騰していない現状(2020年(令和2年)3月15日現在)において、輸入依存度の高い物資であるマスク(とりあえずマスクがこれに当たるとしよう。)の輸入による供給が著しく阻害され、これが国内物価(繰り返すが、マスクの価格ではない)を著しく高騰させるおそれがあるような状態が認められるだろうか?

 

おそらく、認められると説明することは難しいのではないかと思われる。

 

ちなみに、第一次オイルショック当時(1973年(昭和48年))のデータが以下のサイトに掲載されており(ただし函館市のもの)、興味深い。

(なお、筆者はこの当時は生まれていないので、この頃の社会情勢や混乱を知らない。)

 

醤油(1.8kgor2kg)、味噌(1kg)、砂糖(1kg)、コーヒー(1杯)、灯油(18リットル)、洗濯代(ワイシャツ)、理髪代(大人1回)、洗濯用洗剤(2,65kg)及びちり紙(800枚)の月別物価推移(昭和48年6月~昭和49年3月)の一覧表が参考になる。

 

 

函館市史デジタル版

オイルショックと狂乱物価  消費社会、モノ不足の幻影   P860-P864

http://archives.c.fun.ac.jp/hakodateshishi/tsuusetsu_04/shishi_07-03/shishi_07-03-52.htm

 

(以下引用)

石油の削減でもろに影響を受けた運輸業、ふろ屋やクリーニング店、水産加工場など市民生活に関わりの深い業種への打撃は大きかった(昭和48年12月26日付け「道新」)。そうしたなか五月雨(さみだれ)式の値上げがあいついだ。クリーニング店は洗剤や包装用資材の値上がりを根拠にワイシャツ洗濯代を1.5倍にした。便乗値上げとの批判もあったが、背に腹は代えられないといったところであった。散髪・パーマ代も5割の値上がり、喫茶店もコーヒー豆の3割値上げや人件費の高騰などを理由に、1杯のコーヒーを150円前後から180ないし200円へと値上げしたから、気軽にコーヒーも飲めなくなったと多くのサラリーマンがこぼしたという(表参照)。

(以上引用終わり)

 

コーヒー(1杯)は、130円(1973年6月)から1年半で200円(1974年12月)になっているが、今でいえば、ドトールのコーヒー(Mサイズ)275円が2021年9月には420円くらいになるというイメージだろうか。

 

このように、国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)が成立した当時の第一次オイルショックの頃の情勢と今日の情勢とを比較してみても、法26条1項の物価要件の認定は困難ではないかと思われる。

 

 

5 検察官への職務への影響は? 再び「検察官逃げた」と言われるおそれも…

 

現実に今回の政令改正によって、法37条の罰則を現実に適用する場合、当然ながら、法26条1項の物価要件の認否について、刑事事件(刑事訴訟)の中で、争われることになるだろう。

 

刑事事件(公訴提起)まで至らなくても、捜査の段階でも、被疑者から上記のような反論(法26条1項の物価要件を満たさないとの反論)をされることが予想される。

 

今回の政令改正の問題点は、法26条1項の物価要件が認められかどうかが非常に微妙であるにもかかわらず、この要件の検討を十分にせず、政令改正(内閣)だけによって対処しようとしたことであり、本来は法律を改正すべきであったのである。

 

マスク転売禁止のための法律改正(法26条1項の物価要件等の緩和)であれば野党も特に反対しなかっただろう。

 

このような問題を引き起こした根本的な原因は、現政府が法治主義を無視・軽視していることにあると考えられる。

閣議決定政令(内閣の判断)だけで法律の内容を捻じ曲げるという行為、すなわち「法解釈」と現政府が称する本来法解釈と呼ぶに値しない行為によって、近代国家の大前提である法治主義(法律による行政の原理)を破壊する行為である。

 

最近話題になっている黒川東京高検検事長の勤務(定年)延長問題は、法治主義(ここでは検察庁法・国家公務員法を行政が守ること)の破壊行為の典型といえよう。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200309/k10012321971000.html

 

今回、26条1項の物価要件の検討を十分にせず、政令改正だけで済ませてしまったことにより、現場(検察や警察の職務)への影響が出てくることが予想される。

 

内閣の面々が法治主義を軽視すると、現場に影響が出るわけである。現場は大迷惑であろう。

 

法務大臣により、積極的な捜査・公判から「検察官が逃げた」と言われる日もくるかもしれない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56720180S0A310C2PP8000/

 

なぜなら、歴史は繰り返すからである。

  

*1:Mr.Children「I'll be」『DISCOVERY』(TOY'S FACTORY、1999年)

「安保法制違憲・東京地裁判決(差止訴訟・国賠訴訟)に対する声明」(東京地判令和2年3月13日に対して)

この星が何処へ行こうとしてるのか

もう誰にもわからない

権力(ちから)と権力(ちから)のSee-Saw-Gameから

降りることさえ出来ない*1

 

  

 

**************

 

  

安保法違憲訴訟、原告の請求退ける…東京地裁

2020/03/13 15:12 読売新聞オンライン

 

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200313-OYT1T50230/

 

(以下記事を引用)

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は違憲だとして、市民ら47人が国に集団的自衛権行使の差し止めや1人あたり10万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(森英明裁判長)は13日、請求を退ける判決を言い渡した。

(以上引用終わり)

 

 

安保関連法違憲訴訟 市民グループの訴え退ける 東京地裁

2020年3月13日 17時56分 NHK NEWS WEB

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200313/k10012330201000.html

 

 

 

本件判決すなわち東京地裁民事第2部の令和2(2020)年3月13日の判決(午後2時00分)について、同日午後3時30分から、司法記者クラブで、原告らによる記者会見が開かれた。

 

会見では、以下の声明文が配布されたが、その全文が報道されるには至っていないことから、本ブログで声明文全文を紹介する(なお、本ブログ筆者も同会見に立ち会った)。

 

ぜひとも多くの方々にご一読いただきたい。

 

(以下声明文を引用)

 

 

   安保法制違憲東京地裁判決(差止訴訟・国賠訴訟)に対する声明

 

                       2020年3月13日

 

                東京安保法制違憲訴訟弁護団   

                 

                安保法制違憲訴訟全国ネットワーク

                代表   寺   井   一   弘

 

 本日、安保法制を憲法違反とする訴訟について、東京地方裁判所民事第2部(森英明裁判長裁判官、三貫納有子裁判官、鈴鹿祥吾裁判官)は、極めて不十分な理由付けにより、差止請求を却下し、国家賠償請求を全部棄却するという判決を言い渡した。

 

 その内容は「防衛出動命令等の差止請求は処分性や原告適格を欠くため不適法」「平和的生存権は法律上保護された具体的権利ではない」、「自らの信条や信念と反する立法等によって精神的苦痛を受けたとしても社会通念上受忍されるべきもの」「平和的生存権、人格権、憲法改正・決定権の侵害はいずれも認められない」など、原告らの真摯な訴えや緊迫した中東情勢その他の軍事的状況を考慮しない不当な内容であり、特に安保法の違憲性等の憲法問題につき、「その余の点について判断するまでもなく」と述べるだけで何ら触れておらず、憲法判断をしない具体的な理由も示さないという点は、本件判決に先立つ昨年(2019年)11月7日の東京地裁民事第1部判決と同様に憲法判断を不当に回避するものであり、人権保障の最後の砦とされる司法権の役割を果たそうとしなかったものというほかない。

 

 本件訴訟で原告らは、昨年11月7日の民事第1部判決とは異なり、国家賠償請求だけではなく、行政事件訴訟法上の差止め の訴え(差止訴訟)も提起した。しかし、本件判決は、差止めの訴えに関し、その訴訟要件である処分性や原告適格が認められない旨判断することで、憲法違反の主張を含む行政処分違憲・違法についての実体判断を全くしなかったのである。しかし、本件訴訟の請求の趣旨に対応する内閣総理大臣又は防衛大臣による存立危機事態における防衛出動等の各行為は、原告らに対する行政処分ないし公権力の行使であって、本来、処分性や原告適格を満たすものであるというべきである。

 

 原告らは、本件において、主位的主張として集団的自衛権の行使等の事実行為を行政処分と捉え、予備的主張として集団的自衛権による自衛官に対する防衛出動命令等を行政処分と捉えて主張した。

 

 ところが、本件判決は、本件主位的主張との関係でいえば、存立危機事態における自衛隊の防衛出動(集団的自衛権の行使)、後方支援活動又は協力支援活動としての物品・役務の提供、駆け付け警護等の国際平和協力業務の実施及び武器等防護のための警護の実施という各事実行為は、自衛隊が武力を行使し又は武力の行使に至る危険を生じさせるものとして、原告らの平和的生存権、人格権及び憲法改正・決定権を侵害し、その侵害状態の受忍を強いるという意味で直接的な公権力の行使といえるのである。また、予備的主張との関係では、請求の趣旨に対応する内閣総理大臣ないし防衛大臣自衛隊又はその部隊等に対する行政機関における命令が自衛官に対する命令に至るものであることから(ただし、合衆国軍隊等の部隊の武器等の警護については直接自衛官に対する命令である。)、自衛官に対する上記各命令が本件差止の訴えの対象となる行政処分であり、また、原告らには当該処分に関し処分の名宛人以外の者としての法律上保護されるべき利益(原告適格)が認められるべきであるが、本件判決は、処分性につき法的効果がない旨述べ、また原告適格につき「自己の具体的な権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」ではない旨述べるだけで十分な理由を示すことなく否定し、本案審理における憲法判断等を不当に避けている。このような判断は、憲法の趣旨のみならず、実効的な権利救済を図るという行政事件訴訟法の趣旨にも反している。このように処分性や原告適格の意味を不当に狭く解釈することで実体判断・憲法判断を避けようとする本件判決の態度は、処分性や原告適格を拡大し、積極的に実体判断をしようとする今日の最高裁判決の傾向にすら反するものである。

 

 審理の仕方についてみても、原告本人尋問は行ったものの証人尋問は行わず、また、昨年末以降の自衛隊の中東海域への派遣や米・イラン間の武力攻撃の応酬・連鎖等による状況の変化から原告らが行った口頭弁論再開の申立てを事実上考慮せず、弁論を再開することなく漫然と判決をしており、裁判所の職務を十分に果たしていない。

 

 本件判決のような司法の消極的態度は、原告らが懸命に訴えてきた人権侵害の状況や武力衝突が繰り返されている世界の現状を軽視するものであり、政府が私たちの平和憲法を破壊することに手を貸す結果を生じさせている。内閣及び国会において多数を占める政権与党や首相官邸による立憲主義・法の支配の破壊行為を止められる機関は、憲法司法権の独立が保障された裁判所なのである。本件が一見して極めて明白な憲法違反が問われている重大事件であるにもかかわらず、裁判所が憲法問題について正面から回答せず、基本的人権や平和主義を中核に据える 日本国憲法の理念を無視した形式的判断をしたことに、私たち市民は、「希望」を見出すことができるのだろうか。

 

 政府による平和憲法の破壊を止めるべく、控訴審も力を合わせ、私たち市民の人権と平和憲法を守る最後の砦となるはずの「希望の裁判所」による正しい判断を求めて闘い抜くことをあらためて決意する次第である。

 

 

*1:浜田省吾「僕と彼女の週末に(IN THE WEEKEND)」『PROMISED LAND ~約束の地』(CBSソニー、1982年)、BANK BAND「僕と彼女の週末に」『沿志奏逢』(トイズファクトリー、2004年)。