平 裕介(弁護士・公法研究者)のブログ

主に司法試験と予備試験の論文式試験(憲法・行政法)に関する感想を書いています。

もしも司法試験論文行政法で判例変更を狙う主張を論じさせる問題が出たら ~公共施設の管理者の同意の処分性(判例は否定)を肯定する答案例~

 

 Ⅰ 判例変更を狙う主張という難題

 

 「『白か黒で答えろ』という難題を突き付けられ

        ぶち当たった壁の前で僕らはまた迷っている」[1]

 

Mr.Children「GIFT」の歌詞であるが,司法試験の論文答案でも,殆どの場合,適法か違法か,合憲か違憲か,無罪か有罪かなど,「白か黒」のどちらかに決めなければならず,結論や理由付けをどう書いていくべきかなどを迷うことが少なくない。

 

弁護士も,依頼人の求めなどに応じて「白か黒」一方の立場での主張を展開しなければならないわけであるが,依頼人(あるいはボス弁など)から「判例変更」を狙う主張を(も)してほしいと求められることが(稀にだが)あるわけで,そのようなときには通常,最高裁判例の論理という「壁」にぶち当たり,構成等をどのように書いていくべきかなどを迷いながら,判例変更の主張を起案していくことになる。

 

そして,司法試験論文式試験においても,法曹の実務で問題となる以上,「難題」だとは思うが,この「判例変更」を狙う主張が出題されないとは言い切れないだろうし,仮に,判例変更の主張(の骨子)を答案に書く日が平成30年5月の本試験の日であったとしても,当たり前ではあるが,受験生は文句ひとつ言わず(人によっては試験終了後に言うだろうが)制限時間内で答案を書いていかなければならないわけである。

 

では,公法系科目で判例変更を狙う主張を書く問題が出る場合,果たしてどの判例が出題されるのだろうか。

 

この問いに対し,一番確率が高いのは,最一小判平成7323民集49巻3号1006頁[2](以下「平成7年判例」ということがある。)ではないかと思われ,司法試験論文式試験行政法(公法系科目第2問)で,平成7年判例を変更すべき旨主張する(あるいは同主張の骨子を書かせるような)問題が出題されるのではないかと考えられるのである。

 

この平成7年判例は,都市計画法(以下「法」ということがある。)上の開発許可(法29条1項)を得るための公共施設管理者の不同意(法32条参照)の処分性(行訴法32項)を否定した判例として有名であり,開発許可制度や公共施設管理者の同意の制度が法において極めて重要なものであり[3],実務的にもしばしば問題となる法制度であることからすると[4],この判例に関する事案が出る蓋然性は低くないように思われる。

 

平成7年判例については,従前から「判例変更の可能性もある」との解説があり[5],また,主に平成16年行訴法改正以降の「最高裁判例における処分性の拡張傾向」[6]に照らし,現に,高裁レベルで不同意の処分性を肯定した判決が出ている高松高判平成25530判例地方自治384号64頁(以下「平成25年高松高判」ということがある。))ことから,平成30年司法試験論文行政法でも出題されることも具体的に想定して,できれば具体的な答案を念頭におきつつ準備をしておくのが望ましいだろう。

 

そこで,本日は,まさにこの判例変更の主張を(この主張だけではないが)答案に書かせる事例問題である曽和俊文「公共施設管理者の不同意をめぐる紛争」曽和俊文=野呂充=北村和生編著『事例研究行政法[第3版]』(日本評論社2016年)172178頁の問題(第2部・問題3,同問題の解説は179頁以下答案(下記)を書いてみることにした。ちなみに,この「第2部・問題3」は,同書の事例問題の中でも特に重要なものであると考えられる。

 

もちろん,この『事例研究行政法[第3版]』については,各自購入していただくか(…良質な問題・解説以外にも「ミニ講義」や「コラム 答案を読んで」など受験生にとって役に立つ記載が多数あるといえ,購入すべき一冊といえる),図書館で借りるなどしていただきたい。

 

 

Ⅱ 『事例研究行政法[第3版]』第2部・問題3の答案例

 

第1 設問1

 1 小問1

  (1) 不同意の取消訴訟と同意の義務付け訴訟の併合提起[7] [8]

 Mは,公共施設管理者の不同意(以下単に「不同意」という。)[9]の違法性を争い,公共施設管理者の同意を得るために[10],乙市を被告として(行政事件訴訟法(以下,法律名を省略する[11]か「行訴法」と略す。)1111号,381[12]),不同意の処分取消訴訟32)と,公共施設管理者の同意(以下単に「同意」という。)の申請型義務付け訴訟(362)を併合提起(37条の32)すべきである。以下,各訴訟の訴訟要件において特に留意すべきことについて論ずる。[13]

  ア 不同意の取消訴訟32項)

   () 処分性

【論パ[14]不同意は「行政庁の処分」(32項)[15]といえるかにつき,同項の処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち(①公権力性[16]),その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが(②法効果性,法効果の直接性・具体性[17]法律上認められているもの(③法律の根拠[18])をいう。

 これを本問についてみると,確かに,「同意」という文言が用いられてはいるものの[19],不同意は,都市計画法(以下「法」という。)321に基づき行政の一方的な決定によってなされ[20]私法上の対等当事者間においてはあり得ない行為であるから[21],①公権力性及び③法律上の根拠の要件を満たす[22]

 次に,②法効果性等に関し,最高裁判例[23]は,不同意は公共施設の適正な管理上,開発行為を行うこと相当でない旨の公法上の判断の表示であって[24],同意が得られなければ公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないことなどから,不同意自体は開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえないとし,②法効果性ないし法効果の直接性を否定する[25]

 しかし,法が公共施設管理者の同意書を開発許可(法29条1項)の申請書(法30条1項)の添付書類として要求していることから(同条2項),同意が得られない場合には,開発許可申請を行っても,申請者は,相当程度の確実さをもって[26],あるいは特段の事情のない限り,同申請が適法に行われていないとして申請拒否処分がなされるとの法的地位に立たされる[27]。加えて,上記判例の後に法323項が同条に新たに付加されたため[28],同意権者に完全な自由はなく「公共施設の適切な管理」に支障を及ぼすおそれのない場合には不同意は許されないと解される。さらに,合理的理由なく不同意とされる場合に,同意に係る周辺住民等に対する第三者効のある取消訴訟321項)等による救済手段が図られなければ[29],開発行為の許可を求める者が開発行為の途を閉ざされる結果につながりかねず,ひいては憲法29条あるいは憲法22条1項の趣旨に反することとなるため,同手段のような実効的な権利救済が図られる[30]べきである。

 また,不同意の場合には,開発許可の申請手続を適法に行えなくなる仕組みとなっており(法30条2項等参照),開発許可の申請者は当該開発許可が法令上の制限に適合しているか否かの判定を受ける機会が保障されなくなるため,同申請を適法に行う地位も侵害するというべきである[31]

 したがって,上記判例は変更されるべきであり,不同意につき,②法効果の直接性も満たすと考えることから,不同意の処分性は肯定される。

   () その他の訴訟要件

 Mは,不同意処分の相手方であるから,原告適格もあり(9条1項),不同意の通知がなされた日が2009年8月20日であることからすれば出訴期間も経過していない(14条1項[32])といえるなど,その他の訴訟要件も満たす[33]

   () よって,Mは,不同意の取消訴訟を提起すべきである。

  イ 同意の申請型義務付け訴訟(362号)

   () 同意も不同意の場合と同様に直接的な法効果があるといえるから,「一定の処分」(3条6項2号)[34]に当たり,拒否処分型(37条の3第1項2号)にあたるものであるから前述した不同意の処分取消訴訟と併合提起する必要がある(同条3項)。さらに,Mは法32条1項に基づき同意を得るための申請をしたものと解される[35]ため,「法令に基づく申請」(同条2項)をしたといえ,訴訟要件をすべて満たす。

    () よって,Mは,同意の義務付け訴訟を提起すべきである。

  (2) 実質的当事者訴訟(4条後段)

   ア 「公法上の法律関係に関する訴訟」(給付訴訟)

 Mとしては,不同意・同意の処分性(3条2項)が否定される場合であっても[36],予備的に,法32条1項の同意をせよという実質的当事者訴訟としての給付訴訟(4条後段,民法414条2項ただし書参照)を提起すべきである[37]

   イ 「公法上の法律関係に関する確認の訴え」(確認訴訟)

 また,同訴訟が認められない場合に備えて[38]同意義務があることの確認訴訟[39]4条後段)を提起することが考えられる。

【論パ】この点に関し,確認訴訟の訴訟要件である確認の利益は,①確認対象選択の適切性[40],②方法選択の適切性[41],③即時確定の必要性[42]の有無によって判断すべきである[43]

 本問では,①現在の法律関係を確認するものであること[44],②同意の処分性が否定される場合には前記取消訴訟[45]では争えず,他に適切な救済手段がないこと,③同意が得られないと,老人デイサービスセンターの設置が計画通りに進まないこととなるため,Mの開発行為に係る権利ないし法的地位に現実的かつ具体的な不安・危険が現時点で生じている[46]といえることから,確認の利益を満たす。

 よって,同意義務があることの確認訴訟も提起しうる。

 2 小問2

 Mは,開発行為の申請の不許可処分の違法性を争い,開発許可を得るために,甲県を被告として(11条1項1号,38条1項),①不許可処分の取消訴訟(3条2項)[47]と,②開発許可の申請型義務付け訴訟(3条6項2号)を併合提起(37条の3第2号)すべきである。[48]

 ①については,審査請求前置[49]の訴訟要件(8条1項ただし書,法50条・52条)を満たすようにすべく,訴訟提起前に甲県開発審査会に審査請求を行い,裁決を経てから訴訟を提起する必要がある。[50]

 なお,後述するように,不同意の処分性が肯定される場合,いわゆる違法性の承継が認められると考えることなどから,①不許可処分の取消訴訟で,不同意についての違法事由を主張しうるものといえ,裁判所もこれについて実体判断をなしうるものと考える。ゆえに,不許可処分の違法性を争い,開発許可を得るための訴訟として,上記①・②は有効な[51]救済手段といえる。[52]

第2 設問2

 1 設問1-1の訴訟における違法性(法321項に係る違法)の主張

  (1) 処分要件充足を示す事実の不存在[53]

 法32条1項の「同意」は,開発許可の申請者と公共施設管理者との「協議」を前提とし(同条1~3項),かかる協議は,「公共施設の適切な管理を確保する観点から」行うものとするとされている(同条3項)。ゆえに,法32条1項の趣旨[54]公共施設の適切な管理に支障を及ぼす客観的・具体的な危険がないことを同意の処分要件とする点にあると解される。そこで,公共施設管理者は,かかる危険がない場合には,法32条1項の「同意」をなすべきであり,この場合に不同意とすることは違法というべきである。

 これをMに対する乙市市長の不同意についてみると,①市道丙号線は、老人デイサービスセンターが設置された場合の送迎車両等の頻繁な通行に対しでも十分な幅員を有しており、②同センターでは、法律の規制に適合した合併海化槽を設置することを計画しており、飲用に耐えうる水質の排水がされ、汚水等が水路に流れる可能性は全くないことから[55]、Mの開発行為により市道水路の適切な管理に支障を及ぼす客観的・具体的な危険はないといえる。

 よって,Mは,設問1-1の訴訟の本案において,本件では上記処分要件を充足する事実が存在しない旨の違法事由の主張を行うべきである。

  (2) 裁量権の逸脱濫用の主張[56]

【論パ】32条1項の「同意」に際しての公共施設の適切な管理に支障の判断に関し,仮に,専門的技術的な判断あるいは地域の特性や地域住民の意見を斟酌した判断[57]に係る行政裁量が認められるとしても[58]他事考慮重大な事実誤認[59]が認められることにより,その判断の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合には,裁量権の逸脱濫用となり違法となる(行訴法30条)ものと考える[60]

 本問では,地元の丙町協議会や水利組合等が道路や水路を事実上日常的に利用しているとしても,地元協議会等の利害関係人の同意を得たこと自体は公共施設の適切な管理に係る具体的な支障の有無と直接関係するものとはいえないから考慮事項とはならないものといえる。そこで,①丙町協議会の排水同意がないこと,②丙堰土地改良区からの陳情書・反対署名の存在,③丙町協議会からの要望書・反対署名の存在それ自体を考慮することは他事考慮である。

 また,仮に,地元協議会等の利害関係人の意見等が公共施設の適切な管理に係る事項を推認するものとして考慮事項に関係するものであるとしても,前記のとおり,道路や水路の適切な管理に支障を及ぼす客観的・具体的な危険はなく,かかる危険につき乙市が相応の調査・検証を行った形跡もみられないので,地元協議会等の抽象的な不安感等からMの開発行為に反対をしているものといえ,重大な事実誤認があるか,あるいは上記調査不足による考慮不尽といえる。

 これらのことから,乙市市長の不同意の判断の内容は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くので,Mは裁量権の逸脱濫用の違法を主張すべきである。

 2 設問1-2の訴訟における違法性の主張

  (1) Mの開発許可の申請に対する不許可処分の理由は,同申請に必要な添付書類である同意書(法30条2項)が提出されていない点にある。そこで,Mとしては,設問1-2の訴訟において,前記のとおり不同意が違法であり,本来は同意書が交付されるべきであったことから,許可処分がなされるべきであり,不許可処分は違法であるとの主張をすべきである。

  (2) 裁判所の審査範囲について

 以上の違法事由の主張に関し,確かに,同意書を開発許可の申請の添付書類とする法30条2項等の趣旨が,同意(法32条1項)するか否かの判断につき法は公共施設管理者に委ねており,知事は開発許可の申請の許否にあたって同意書の有無の形式審査をすれば足りるとする点にあるものと解されることから,裁判所の審査範囲・審査権限も,同様に同意・不同意の実体判断の適否にまでは及ばないとも思える。

 しかし,裁判所の審査権限については必ずしも知事のそれと同様である必要はないことから,裁判所は同意の適否を審査できるものと考える。

  (3) 違法性の承継について

 また,同意の処分性が肯定される場合,違法性の承継の肯否すなわち先行処分としての不同意に係る違法を後行処分である開発許可の申請に対する不許可処分の取消訴訟の中で取消事由として主張しうるのかが問題となる[61]

 【論パ】この点については,取消訴訟の排他的管轄と出訴期間制限(14条)の趣旨からすれば[62]違法性の承継は原則として否定されるが,実体法的観点及び②手続法的観点両面からみて例外的に肯定されうると解すべきである[63] [64]

 これを本問についてみると,公共施設管理者の同意は開発許可の前提として要求される行為であり,それ自体独立した意味をもつ行為ではなく,①先行処分と後行処分とが結合して周囲公益等を考慮して開発行為を許可するという一つの目的・効果の実現を目指しているといえる。また,②不同意については法35条2項のような文書による通知が法定されていないことに加え,本件のように不同意が処分であるか否かが不明確な場合には,先行処分を争うための手続的保障が十分とはいえず,不許可処分を受けるまでは争訟を提起しないことがあるとしても,その判断はあながち不合理ともいえない

 よって,本件で違法性の承継は肯定されると考える。なお,不同意の取消訴訟と不許可処分の取消訴訟を出訴期間内に提起しておけば,以上の違法性の承継の問題は生じないので,Mの訴訟代理人としては両訴訟を出訴機関内に併行して提起し,同意の違法性を主張すべきである。[65]

                                    以 上

 

 

Ⅲ GIFT

 

以上,もとより拙い答案例ではあったが,処分性(判例変更の主張)の点や,それ以外の論点に関する論述について,多少なりとも参考になっただろうか。

 

この答案が,司法試験という「壁」を超えていこうとする受験生の皆様への「GIFT」となれば幸いである。

 

 

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[1] 桜井和寿Mr.Children)「GIFT」(2008年)。

[2] 北村喜宣「判批」宇賀克也=交告尚史=山本隆司編『行政判例百選Ⅱ〔第6版〕』(有斐閣,2017年)(以下「百選Ⅱ」という。)324~325頁156事件。

[3] 碓井光明「都市計画法精義Ⅰ」(信山社,2013年)(以下「碓井都市計画法精義Ⅰ」という。)183頁は,都市計画「法における最も重要な制度として,開発許可制度が存在する」(下線は引用者)とする。かかる開発許可(都市計画法29条1項)を申請しようとする者は,予め開発行為に関係がある「公共施設の管理者と協議し,その同意を得なければならない」(同法32条1項)。

[4] 本ブログの筆者は,弁護士として,建築審査会の実務を担当することがあるが,開発審査会のみならず,建築審査会においても,この開発許可制度はしばしば問題となる(例えば,開発許可が本来必要であったにも関わらず,同許可を得ないで建築確認を得たことは違法である旨の主張などが展開されることがある)。

[5] 北村喜宣「判批」宇賀克也=交告尚史=山本隆司編『行政判例百選Ⅱ〔第6版〕』(有斐閣,2012年)338~339頁(339頁の解説6)163事件。なお,碓井都市計画法精義Ⅰ200頁も「行政処分性を肯定すべきであると考える」とし,橋本博之『行政判例ノート〔第3版〕』(弘文堂,2013年)204頁も,平成7年判例につき,「判例変更されて処分性が認められるべきである,との考え方もありえよう」とする。

[6] 南博方原編,高橋滋=市村陽典=山本隆司編『条解 行政事件訴訟法〔第4版〕』(弘文堂,2014年)(以下「高橋ほか・条解」)という。)68頁〔高橋滋〕。

[7] 曽和俊文=野呂充=北村和生編著『事例研究行政法[第3版]』(日本評論社,2016年)(以下「曽和ほか・事例研究」という。)180頁以下〔曽和〕の解説では,処分性を否定する見解に立つ場合(行政事件訴訟法4条後段の実質的当事者訴訟の構成)を先に検討しているが,①資料1の弁護士らの会話文に「最高裁での判例変更も狙って、同意の処分性を肯定する理屈を考えてくれませんか?」とあり「次に、(中略)平成7年判決を前提とすれば、(中略)開発許可を得たい者はどうすればいいのか?これも考えてみてくれますか?」とあること(曽和ほか・事例研究176頁〔曽和〕),②出題者自身が不同意の取消訴訟と同意の義務付け訴訟の併合提起が「最も妥当ではないかと思われる」と解説していること(同185頁),③「普通,行政訴訟であれば,行政処分をつかまえて取消訴訟を起こし執行停止を求めるというのが,実務家的,実務的には当たり前の話」(平成19新司法試験に関する「新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要」8頁)であり,それが「オーソードックスなやり方」(平成18年新司法試験に関する「新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要」5頁)であることなどから,本答案例では,処分性を肯定する抗告訴訟の構成を先に書いた。なお,本設問・小問には,「争訟」ないし「法的手段」ではなく,「訴訟」(行政訴訟に限定していない)について検討せよと書いてあるため,仮の救済について答案に書く必要はないが,抗告訴訟や実質的当事者訴訟等の行政訴訟のみならず民事訴訟も一応(形式的には)検討の対象となっている点に留意する必要がある。

[8] 訴訟類型(2つの抗告訴訟を挙げる必要がある問題)のタイトルのところでは,タイトルが長くなりすぎることを防ぐために,行政事件訴訟法の条文は書かない方が良いだろう(本文で書けば足りる)。他方,各訴訟要件のところでは基本的には書いた方が良いと思われる。

[9] この省略の注意書きについては,読者への便宜上一応書いたが,書かなくてもよいかもしれない(ややくどいし,採点委員も分かるので)。「同意」についても同様である。

[10] 読者への便宜上一応書いたが,設問のオウム返しにすぎないので,この訴訟の目的の部分は省略可能である。

[11] 訴訟類型・訴訟要件に関する設問・小問では,行政事件訴訟法を,以下「行訴法」とする,などと略すとだけ書くよりも,このように法律名を(すべて)省略する場合がある旨の記載を付しておいた方が良いと思われ,あるいは,より短く「(以下法律名略)」などと書いてもよいだろう。なぜなら,法律名をすべて省略しても普通は採点委員が混乱等することはなく特にマイナスになることはないと考えられ,同時に(多少は)時間ロスを防げるからである。多くの受験生にとって行政法の論文は制限時間との戦いであるから,時間は少しであっても無駄にはできない

[12] 「(行訴法)11条1項1号,38条1項」については(他の訴訟要件についてはともかく),六法を引いて確認しなくても書けるように記憶しておく方が良いだろう。前記のとおり,時間は少しでも無駄にできない。

[13] 読者への便宜上一応書いたが,殆ど設問のオウム返しにすぎないので,この一文は省略可能である。また,同様に便宜上,各訴訟の訴訟要件でそれほど問題とならないようなものについても,基本的には条文を挙げて一言でも説明を加えるように努めたが,本試験ではそのような訴訟要件については言及する必要がない場合があるので注意を要する。

[14] 「論パ」とは,「論証パターン」(井田良=細田啓介=関根澄子=宗像雄=北村由妃=星長夕貴「〔座談会〕論理的に伝える」法学教室448号23頁(2018年)〔井田〕)の略称である。論証パターンの「利点」と「危険」に関し,賢明な受験生は,同23~24頁〔宗像〕を読むと良いだろう。

[15] 受験生の答案で,処分性の論点に関し,よく「行政庁の処分その他公権力の行為に当たる行為」(行訴法3条2項)といえるかという問題提起をするものを見かけるが,不正確である。判例(最一小判昭和39年10月29日)による処分性の「定式」(中原茂樹『基本行政法[第2版]』(日本評論社,2015年)281頁(以下「中原・基本」という。)参照)を書く場合,それは,「その他公権力の行為に当たる行為」の部分ではなく「行政庁の処分」の部分の定式であるから(神橋一彦『行政救済法(第2版)』(信山社,2016年)43~44頁),「行政庁の処分」(行訴法3条2項)といえるかという問題提起をしなければならない。ちなみに,「その他公権力の行為に当たる行為」は「行政庁の処分」以外の行為で行政行為類似の優位性を持つものであり,人の収容、物の留置のような継続的な性質を持った事実行為がこれに当たる(神橋・同書79頁参照)。なお,①中原・基本281頁では,「処分性の基本的定式」,「処分の定式」という語を,②角松生史「判批」百選Ⅱ332頁は,(判例の)「定式」という語を,③山本隆司判例から探究する行政法』(有斐閣,2012年)(以下「山本・探究」という。)365頁注3)は「最高裁の定式」という語を,④宇賀克也『行政法概説Ⅱ 行政救済法〔第5版〕』(有斐閣,2015年)(以下「宇賀・概説Ⅱ」という。)158頁は,「最高裁判決における定義」という語をそれぞれ用いている。司法試験考査委員・元考査委員が「定式」という用語を使っていることなどから,受験生も法科大学院の授業やゼミなどで「処分性の判例の定式」といった用語を使って質疑応答等を行ってもよいだろう。

[16] 櫻井敬子=橋本博之『行政法〔第5版〕』(弘文堂,2016年)(以下「櫻井=橋本・行政法」という。)267頁,曽和ほか・事例研究292頁〔佐伯祐二〕。なお,山本・探究365頁は,「公権力性」ではなく「権力性」という語を用いる。

[17] ②の判示の点についてはネーミングが難しいが,野呂充=野口貴公美=飯島淳子=湊二郎『行政法』(有斐閣,2017年)(以下「野呂ほか・有斐閣ストゥディア」という。)174頁〔湊〕を参考にして,このように書いた。‘直接法効果性’や‘直接の法効果性’などとより短く書いてもよいかもしれないが,多くの基本書ではこのような短いワードは用いられていないので本答案例では避けた。とはいえ,採点委員によっては「法効果性,法効果の直接性・具体性」という表現は長くてくどいと感じるかもしれないから,「法効果の直接性・具体性」だけか,あるいは‘直接の法効果性’くらい短い方が良いのかもしれない。

[18] 山本・探究365頁,野呂ほか・有斐閣ストゥディア174頁。

[19] 北村喜宣「判批」百選Ⅱ325頁・3「否定説」の①の理由,安本典夫『都市法概説〔第2版〕』(法律文化社,2013年)(以下「安本・都市法」という。)95頁参照。なお,安本・都市法95頁は,「同意」を法50条1項に挙げていない点(なお,曽和ほか・事例研究177頁〔曽和〕では同項が一部省略されているため,この点が分からない)を同意・不同意の処分性を否定する論拠として紹介する。

[20] 曽和ほか・事例研究32頁〔北村和生〕参照。

[21] 処分性の第1要件である公権力性がメインでは問われていない場合には,このようなあてはめをすると良い。裁判例でもこのようなあてはめをしているものがある(横浜地判平成12年9月27日(判例地方自治217号69頁,裁判所ウェブサイト)事実及び理由・第三の2(二)は,「以上のような本件条例の規定の仕方からすると、本件条例九条一項に基づく指導又は勧告は、私法上の対等当事者間においてはおよそあり得ない行為であり、被告が公権力の行使として行うものであることに疑いはない。」と判示している)。なお,第1要件である公権力性がメインで問われている問題(抗告訴訟の対象となる処分か,対象とならない契約かが問題となる給付行政の事案(例:労災就学援護費不支給の処分性が争われた最一小判平成15年9月4日・百選Ⅱ326頁157事件〔太田匡彦〕)の問題,山本・探究320頁参照)では,「当該行為が国民の権利義務を一方的に変動させる行為だから処分である」との記述は「不適切ないし不十分」とされるリスクがあると考えられる(曽和ほか・事例研究42頁〔野呂充〕参照)。

[22] ①公権力性を否定する論拠については,ほかに,「私道のように私人が管理者となる場合もあるがその同意に公権力性があるとはいえない」(北村喜宣「判批」百選Ⅱ325頁・3「否定説」の④の理由)というものがあり,これに対する反論としては,「私道は法にいう公共施設にはあたらない」(同頁・3「肯定説」の理由①)というものがある。もっとも,問題文の事例や資料1の弁護士らの会話文において,「私道」の点は特に言及されていないものと考えられることから(曽和ほか・事例研究172~176頁〔曽和〕等参照),本答案例では,この点については書かなかった。

[23] 最一小判平成7年3月23日民集49巻3号1006頁(以下「平成7年判例」ということがある。)・百選Ⅱ324~325頁156事件〔北村喜宣〕。

[24] 不同意がそれ自体で開発行為を認めないという法的効果をもつ決定ではなく,開発行為に対する制限は開発不許可決定で明確になるという理由付けと考えられる(曽和ほか・事例研究181頁〔曽和〕の解説参照)。

[25] 資料1の弁護士らの会話文(曽和ほか・事例研究175頁〔曽和〕)で判例の重要判示が引用されているため,会話文を見ながら書けるが,仮にこのような引用の記載がなくても,この部分は書けた方が良いだろう。

[26] 「相当程度の確実さをもって」は,不同意の処分性を肯定した高松高判平成25年5月30日判例地方自治384号64頁(以下「平成25年高松高判」という。)が引用する最二小判平成17年7月15日民集59巻6号1661頁(百選Ⅱ332~333頁160事件〔角松生史〕)のキーワードである。なお,平成25年高松高判は,曽和ほか・事例研究184頁〔曽和〕の解説や,百選Ⅱ325頁〔北村喜宣〕の解説でも言及されており,重要な裁判例といえる。

[27] 「地位に立たされる」も,平成25年高松高判が引用する最大判平成20年9月10日民集62巻8号2029頁(百選Ⅱ316~317頁152事件〔山下竜一〕)の判示の語である。ここでは,申請拒否処分がなされるという法的地位に立たされることで,開発許可を受ける権利ないし開発行為をするする権利(財産権)に関する法的地位に変動があるという理由付けを書いている。なお,この理由付けは,後述する手続的権利(申請権)が侵害されるという理由付け(「また,」から始まる次の段落の内容)とも両立し得るものと思われ,少なくとも訴訟代理人弁護士として両方を主張して良いのではないかと考える。

[28] 平成25年高松高判も,平成7年判例の後に法が改正(平成12年)され,「法32条3項が付加されたこと」に言及する(曽和ほか・事例研究185頁〔曽和〕の解説でもこの部分が引用されている)。なお,これに対し,中川丈久=斎藤浩=石井忠雄=鶴岡稔彦編著『公法系訴訟実務の基礎〔第2版〕』(弘文堂,平成23年)(以下「中川ほか・実務の基礎」という。)384頁は,都市計画法32条の改正前(平成7年判例当時)の条文と後(現行法)の条文とで,「体裁に違いはあるものの,その規定内容に変更はなさそうである」とし,32条3項後の事案であっても平成7年判例の「射程に入る」ものと考えられるとし,同意の処分性が肯定されることを前提とする訴訟類型である「抗告訴訟で争う方法は,さしあたりは見込みがなさそうである」としており,平成25年高松高判とは異なる立場をとる。しかし,本問の会話文(「最高裁での判例例変更も狙って、同意の処分性を肯定する理屈を考えてくれませんか?」)の要請に照らすと,このように「さしあたりは見込みがなさそうである」などと答案に書いてしまうことは不適当といえるから,少なくとも本問の答案では,中川ほか・実務の基礎384頁のような立場は取るべきではない。

[29] 最一小判平成21年11月26日民集63巻9号2124頁(百選Ⅱ420~421頁204事件〔興津征雄〕)は,公法上の当事者訴訟等との比較において,条例の取消訴訟を通じて救済を与えることの意義につき,取消判決や執行停止決定に第三者効が認められていることを指摘し,「実効的な権利救済」という観点から処分性を肯定する論拠としている(高橋ほか・条解69頁)ことから,ややつまみ食い的な使い方ではあるが,この部分を本答案でも活用した。

[30] 「実効的な権利救済を図る(という観点から)」も,平成25年高松高判が引用する最大判平成20年9月10日民集62巻8号2029頁(百選Ⅱ316~317頁152事件〔山下竜一〕)の判示のキーワードである。同判例は手続的権利(申請権)ではなく実体的権利(財産権関係)についての判例であるため,本問でもこの判例のキーワードは財産権に関する理由付けとして用いることとした。ちなみに,同判例は,将来,高度の蓋然性をもって換地処分がなされるという法的地位に立たされるという理由付けだけで土地区画整理事業の事業計画の決定の処分性を肯定しているわけではなく,「実効的な権利救済を図る」観点も併せて処分性肯定の理由としている(百選Ⅱ316頁〔山下竜一〕)ので,本答案例もこの両方の理由を書いた。

[31] 曽和ほか・事例研究183~184頁〔曽和〕の解説参照。この段落では,手続的権利(申請権)が侵害されるという理由付けを併せて(付加的に)書いている。

[32] 不同意の処分性を肯定することに鑑みれば,行訴法14条3項によって処理すると解する立場の方が筋が通っている(一貫性がある)かもしれず,3項の適用があるとすれば1項ではなく3項の方で処理する必要がある。とはいえ,不同意につき3項が適用されるかについてはやや疑問が残る余地があると思われ,本答案例では同条1項で処理している。

[33] 不同意の処分取消訴訟に関しては,開発審査会に不同意に係る審査請求を行っていることから,審査請求前置(8条1項ただし書,法50条・52条。ただし,平成26年行政不服審査法改正に伴う法の改正によりこの訴訟要件は廃止された。)の点は特に触れなくてもよいだろう。曽和ほか・事例研究183頁等〔曽和〕の解説でも触れていない。

[34] 同意の処分性の理由付けは少なくとも本問ではこのくらい短くてよいだろう。ちなみに,中原・基本36頁は,「一定の処分」(3条6項2号)を37条の3第1~3項とは別立てで訴訟要件の規定と位置付けており,本答案例もこれに倣った。なお,宇賀・概説Ⅱ339頁以下は,37条の3第1~3項を訴訟要件の規定と位置付け,とくに3条6項2号はそのような規定と捉えていないようである。

[35] ここは説明が必要と思われるが,既に不同意の処分性を肯定したことから,このくらい簡単な説明で済ませている。なお,曽和ほか・事例研究183,185頁等〔曽和〕の解説でも特に37条の3第2項の「法令に基づく申請」についての説明はない。

[36] 「同意の処分性が否定された場合の争い方も考えるべき」(曽和ほか・事例研究189頁等〔曽和〕)すなわち答案に書くべきである。

[37] 碓井都市計画法精義Ⅰ200頁も,仮に不同意の処分性を否定する場合には,「公法上の当事者訴訟としての『同意義務の確認の訴え』又は『同意せよ』との給付訴訟が考えられよう。」とする。また,同頁は,この給付訴訟につき,「行政機関を被告としても差し支えないと解すべきである」としており,本問では乙市市長が給付訴訟の被告となると考えることになるが,この点については,難しい論点と思われる割には配点が殆どないものと思われることから,本答案例では触れることを避けた。

[38] 中川ほか・実務の基礎385頁は,同意請求権が成立することが難しいことから請求棄却となる可能性が高い旨指摘する。

[39] 曽和ほか・事例研究181頁〔曽和〕はこの訴訟を選択する。なお,中川ほか・実務の基礎385頁は,特定の事項について「協議する義務の不存在を確認する」という確認訴訟を提起することが「適切であろうか」としており,「協議」(法32条3項)の確認は,本問(設問1・小問1)の「同意を得るため」の訴訟としては,やや迂遠ではないかと思われるため,本答案例では書かなかった。もっとも,現実の訴訟では,このような一定の「協議」についての確認訴訟(あるいは一定の「協議」をせよ・協議を続行せよとの給付訴訟)も併せて提起しておくのが良いと思われる。

[40] 中原・基本380頁は,「確認対象の選択の適切さ」とする。

[41] 中原・基本381頁は,「確認訴訟という方法選択の適切さ」あるいは「給付訴訟等に対する補充性」・「確認訴訟の補充性」としている。

[42] 櫻井=橋本・行政法354~355頁は,③の即時確定の利益(即時確定の現実的必要性,紛争の成熟性)に関し,近時の判例は,「有効適切な手段」(在外国民選挙権訴訟最高裁(大法廷)判決)ないし「目的に即した有効適切な争訟方法」(教職員国旗国歌訴訟最高裁判決)というメルクマールを用いていおり,「紛争の成熟性を柔軟に認めるという方向性」を示している旨解説する。

[43] 行訴法4条後段の確認訴訟における確認の利益は,同法が特に規定を置いていないことから,「民事訴訟法における確認の利益論を基礎としつつ」も「行政訴訟の特質を踏まえた解釈をする必要がある」(中原・基本380頁)とされる訴訟要件である。なお,曽和ほか・事例研究182頁〔曽和〕や,中原・基本380頁以下などは,即時確定の利益(即時確定の必要性)を3番目の要件として挙げる(本答案例もこの立場による)のに対し,櫻井=橋本・行政法354~355頁は,確認の利益の要件・判断要素等として,「即時確定の現実的必要性(紛争の成熟性)」を1番目に挙げている(即時確定の利益・必要性を意味するものと考えられる)。ちなみに,この3要件のための理由付けの記載は(司法試験の答案では)要らないだろう。

[44] 曽和ほか・事例研究182頁〔曽和〕も,①のあてはめで「現在の法律関係の確認」の点のみ言及する。

[45] 給付訴訟については,②のあてはめでは特に言及しない方針を採っている(厳密には「等」に含まれている)。

[46] 中原・基本382頁(「確認訴訟が認められるためには,原告の権利や法的地位に、現実的かつ具体的な不安や危険が生じていなければならない。」)参照。

[47] なお,碓井都市計画法精義Ⅰ189頁は,都市計画「法29条の許可が行政処分であることを疑う者はいないであろう」とする。行政手続法上の申請に対する処分であり,典型的な行政行為であることから,本問の答案でも開発許可の処分性(肯定)の点を特に論じる必要はない。

[48] 小問2の答案は,このように短く書くべきである(曽和ほか・事例研究185頁〔曽和〕も同様に短く解説している)。

[49] 「審査請求前置主義」と書いてもよい(曽和ほか・事例研究185頁〔曽和〕,櫻井=橋本・行政法296頁)。

[50] 本問では,審査請求前置についても書く必要があるが,平成26年行政不服審査法改正に伴う法の改正によりこの訴訟要件は廃止された(曽和ほか・事例研究186頁〔曽和〕参照)ため,今日では問題とならないものである。

[51] 「有効な」ではなく「実効性のある」と書いてもよいだろう。

[52] この段落は,①・②の訴訟の適法性(訴訟要件の話)ではなく勝訴可能性の高さという意味での実効性・有効性の話を書いている部分である。なお,平成23年司法試験論文行政法・設問2・小問(1)は,「最も適法とされる見込みが高く,かつ,実効的な訴え」(下線は引用者)を書くことを求めている。

[53] 中川丈久「コラム 取消訴訟における実体的違法事由」中川ほか・実務の基礎511~512頁(512頁)参照。(1)では,要件裁量が(効果裁量も)否定されることを前提とする実体的違法事由(法32条1項(・3項)に係る違法性)の主張である(曽和ほか・事例研究189頁〔曽和〕の「コラム 答案を読んで」③参照)。

[54] 裁量否定の場合の判断代置方式による審査(大橋洋一行政法Ⅰ 現代行政過程論[第3版]』(有斐閣,2016年)209頁,判断代置的審査)は,できる限り(時間と答案のスペースの許す限り)条文文言→趣旨→規範→あてはめ→結論という法的三段論法の流れで書くべきである(平成21年新司法試験採点実感6頁下から2行目~7頁上から7行目参照)。

[55] この部分は問題文(曽和ほか・事例研究172~173頁(・186頁)〔曽和〕)事実関係の一部を写しただけの記載であり,事実の評価の記述がない。評価の文があった方がベターだろう。

[56] 曽和ほか・事例研究187頁〔曽和〕の解説参照。中川丈久「コラム 取消訴訟における実体的違法事由」中川ほか・実務の基礎511~512頁(512頁)は,「行政庁の法令解釈自体に誤りはないが,事実へのあてはめにあたって,行政庁の裁量に委ねられるべき判断があり,その裁量判断が合理性を欠くとして(社会通念上著しく不相当である,専門技術的な判断に看過し難い過誤がある等),違法な処分であるという主張も考えられる」とする。

[57] 宇賀克也『行政法概説Ⅰ 行政救済法〔第5版〕』(有斐閣,2013年)318~319頁参照。

[58] 平成25年高松高判の原審である徳島地判平成24年5月18日判例地方自治384号70頁は,同意・不同意につき,裁量を肯定しており,安本・都市法96頁も裁量を肯定する立場を採っているものと考えられる。なお,後掲の最一小判平成21年12月17日も,安全認定に係る「安全上の支障の有無は,専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり,知事が(中略)判断するのが適切である」(下線は引用者)と判示しており,「安全」(危険)に関する判断は,裁量が否定されるものと解される場合もあるが,本件のように裁量が肯定される場合もある。ちなみに,行政裁量が否定されるものと解されうる例(著名な憲法判例)として,泉佐野市民会館事件(長谷部恭男=石川健治=宍戸常寿編『憲法判例百選Ⅰ[第6版]』(有斐閣,2013年)182~183頁〔川岸令和〕)を挙げることができるだろう。同判例の事案では「公の秩序をみだすおそれがある場合」(市立泉佐野市民会館条例7条1号)に要件裁量が認められるかが問題となるが,この文言は不確定的法概念ではあるものの,判例が同号の「趣旨」に照らし,「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である」などといった比較的厳格な規範を定立していることからすると,要件裁量を否定しうる(要件裁量を否定した判例である)と解することができるだろう(ただし,同判例園部逸夫裁判官の補足意見は,要件裁量を肯定している)。

[59] 碓井都市計画法精義Ⅰ200~201頁,曽和ほか・事例研究186~187頁等〔曽和〕参照。

[60] 曽和ほか・事例研究186~187頁等〔曽和〕の解説でも指摘されているとおり,本問では本答案例のように,裁量が否定されることを前提とする主張を行うとともに,裁量が肯定されるとしても違法となるとの主張を行うべきである。

[61] 違法性の承継を正面から肯定した初めての最高裁判例(倉地康弘「判解」ジュリスト1415号82頁参照)として,最一小判平成21年12月17日民集63巻10号2631頁・宇賀克也=交告尚史=山本隆司編『行政判例百選Ⅰ〔第7版〕』(有斐閣,2017年)170~171頁84事件〔川合敏樹〕。

[62] 違法性の承継の根拠論に関し,板垣勝彦「建築確認の取消訴訟において建築安全に基づく安全認定の違法を主張することの可否」『住宅市場と行政法耐震偽装、まちづくり、住宅セーフティネットと法―』(第一法規,平成29年)269頁以下参照。また,違法性の承継が公定力(取消訴訟の排他的管轄)の例外なのか,不可争力(出訴期間制限)の例外なのか,という論争がある(同頁)ところ,後掲の(1つ下の)注(平成28年司法試験論文行政法の出題趣旨3頁の)のとおり,平成28年の考査委員は,公定力説と不可争力説を併記してよいとしているものと思われる。

[63] 違法性の承継の論証パターンのショートバージョンである。なお,この部分の論証パターンとそのあてはめの部分については,平成28年司法試験論文行政法の出題趣旨3頁の次の記載を参考にした。「〔設問3〕は,いわゆる違法性の承継の問題であるが,取消訴訟の排他的管轄と出訴期間制限の趣旨を重視すれば,違法性の承継は否定されることになるという原則論を踏まえた上で,まず,違法性の承継についての判断枠組みを提示することが求められる。その上で,最高裁判所平成21年12月17日第一小法廷判決(民集63巻10号2631頁)の判断枠組みによる場合には,違法性の承継が認められるための考慮要素として,実体法的観点(先行処分と後行処分とが結合して一つの目的・効果の実現を目指しているか),手続法的観点(先行処分を争うための手続的保障が十分か)という観点から,本件の具体的事情に即して違法性の承継を肯定することができるかを論じる必要がある。」(下線は引用者)

[64] 平成28年司法試験論文行政法の採点実感等5頁等も参考にした。

[65] 「(3) 違法性の承継について」の部分のショートバージョンは次の通りである。

「同意の処分性が肯定される場合には,いわゆる違法性の承継の肯否すなわち先行処分としての不同意に係る違法を後行処分である開発許可の申請に対する不許可処分の取消訴訟の中で取消事由として主張しうるのかが問題となる。もっとも,不同意の取消訴訟と不許可処分の取消訴訟を出訴期間内に提起しておけば違法性の承継の問題は生じないので,Mの訴訟代理人としては両訴訟を出訴期間内に併行して提起し,同意の違法性を主張すべきである。」

 このように,先行処分となりうる不同意の取消訴訟を出訴期間内に提起できる事案の問題(本問)では,違法性の承継の規範とあてはめを省略して短く書くことができるものといえよう。

 

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*このブログでの(他のブログについても同じ)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」も,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生・司法試験受験生をいうものではありません。

 

答案の「書き初め」 平成22年新司法試験論文憲法の答案例(25条1項関係)

Ⅰ 忘れないで

 

久しぶりの更新である。

久しぶりすぎて,MISIA「忘れない日々」を歌ってしまった。[1]

 

さて,司法試験受験生からの本試験の問題に関するご質問として,平成22年新司法試験論文憲法25条1項違反(生存権侵害)の主張のところの書き方がよく分からないというものが昨年は多かった(というかここ数年比較的多い)と感じており,私自身も,出題趣旨や採点実感等はもちろん,合格者の再現答案や法律家の書いた答案例,解説等を読んではいるものの,実際に書いてみると,特に規範のあてはめのところが書き難いなという印象を持っている。

 

そして,賢明な受験生であれば当然予想するとおり,25条1項は,平成30年のヤマの条文と1つであり,出題されれば,(新)司法試験論文憲法では8年ぶり2回目の,予備試験論文憲法では初の出題となる。

 

そこで,本日は,憲法25条1項と生活保護法についての憲法適合解釈に関する平成22年論文憲法の答案(ただし,25条1項違反の主張の部分のみ)を書いてみようと思う。

 

答案の「書き初め」である。

 

 

Ⅱ 平成22年新司法試験・論文憲法の答案例[2]

 

第1 設問

 1 生活保護について[3]

Y市は,Xの生活保護の認定申請に対し,拒否処分をしての却下処分をしている。そこで,Xとしては,同処分が[4]Xの生存権憲法(以下,法名省略)[5]25条1項)を侵害するとともに,平等原則(14条1項)に反し,違憲であると主張する[6]。以下,詳述する。

 (1) 生存権(25条1項)侵害の主張

 ア まず,Xが生活保護を受ける権利は,健康で文化的な最低限度の生活を営む「権利」として,25条1項により保障される。そして,同項の権利は,抽象的権利と解される[7]ものの,Xの生活保護を受ける権利は,生活保護法(以下,「法」という。)19条1項等により具体化されている[8]

 しかし,Y市がインターネット・カフェやビルの軒先を「居住地」あるいは「現在地法19条1項2号)として認めないという制度運用を行っている[9]ことから,上記申請拒否処分がされている。そこで,Xの生活保護を受ける権利が侵害されているといえないか。

 イ 【論証】法により生存権具体化されたにもかかわらず,これを法制度の適用・運用により請求を認めないとすることが生存権を侵害するか否かに関し,「居住地」・「現在地」(法19条1項2号)の該当性の問題[10]については,25条1項の趣旨に適合するように,すなわち,同項の趣旨を具体化した法の趣旨・目的(法1条)に適合するように解釈・適用(運用)を行うべきである。

 ウ まず,法19条が「生活の本拠」(民法22条)を意味する「住所」(住民基本台帳法4条)という文言を用いず,あえて「居住地」や「現在地」という文言を用いた趣旨[11],多数の生活困窮者が生活の本拠を有していないこと(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法1条,2条)に照らし,広く生活困窮者を保護すべきものとする点にあると考えられる。そこで,Xのようにシェルターでの居住実態はないがインターネット・カフェやビルの軒先で寝泊まりする者についても,当該店舗等の所在地が「所管区域内」(19条1項各号)にあり,具体的な事情を考慮して[12]法の目的に適合するといえる場合には,「居住地」または「現在地」を有する者に当たるとの解釈運用をすべきである[13]

 これをXについて検討すると,法の目的は,生活に困窮する国民に対し「必要な保護を行うとともに,自立を助長」(法1条)する点にある[14]ところ,Xは前述したとおり生活の本拠がない上,「貧困」というだけでなく病院に行くに行けない状況にあり,「最低限度」(法1条,3条)以下の,いわば「生存」そのものが脅かされうる者といえるため[15],「保護」(法1条)を行う要請は極めて強い。また,厳しい経済不況という状況が好転すれば,Xはより正規社員に採用され易くなると考えられるところ,それまでの間,必要な保護を継続することはXの「自立」(法1条)の助長にも資するといえる。

  よって,法の目的に適合するといえる場合であり,Xが申請日前日に宿泊していたインターネット・カフェの所在地を「居住地」または「現在地」に当たるから,Y市の生活保護の申請拒否処分は,25条1項に反し,違憲である。

 (2) 平等原則(14条1項)[16]違反の主張

  (略)

 

 2 選挙権について

  (略)

 

第2 設問2

 1 生活保護について

 (1) 生存権侵害の主張について

 ア 想定されるY市の反論[17]

 Y市は,生活保護制度がY市の財政における有限の財源を前提とするものであることから,インターネット・カフェ等を「居住地」等と認めないとの法の解釈運用も,法の趣旨目的に適合する解釈運用の範囲内のものであると反論する[18]

 また,Y市は,Xのように住所がなくなったホームレスであっても,団体Aのシェルターなどに居住すれば,そこを住所としてあらためて住民登録できるのであるから,生活保護の受給を認めるとかえって法の目的に反すると反論する[19]

 イ 私見[20]

 確かに,25条1項の文言は抽象的であり,現にY市は生活保護の財源を4分の1負担していることから,法の解釈運用に際し財政上の理由を考慮することも許される場合があるといえる。また,Xのような者にまで生活保護の受給を認めると,シェルターなどに居住するのが適当といえる場合には,かえって「自立を助長」(法1条)することにはならないから,法の目的に反することになる。

 しかし,少なくともXのように「持病」があり「医療扶助[21]を受けるためにも生活保護の申請をする者については,Xのように「生存」そのもの(25条参照)あるいは「生命」(13条後段),そして個人の尊重(13条前段)を脅かされかねない者については[22],特に「保護」(法1条)の必要性が高い。そのため,このような者に対し,財政上の理由を重視し,インターネット・カフェ等を「居住地」・「現在地」に当たらないとすることは,法の趣旨目的に適合する解釈運用とはいえないものと解される。

 また,団体Aのシェルターは,現在「飽和状態」であり,「息苦しさ」を感じるほどであるから,起臥寝食の場として適当ではなく,そのような場所での日常生活を強いることはXの就労や求職活動の意欲を削ぐことになり[23],Xの「自立の助長」(法1条)を妨げることとなるものといえる。

 よって,Xが申請日前日に宿泊していたインターネット・カフェの所在地を「居住地」あるいは「現在地」に当たる旨解釈・適用(運用)することが25条1項の趣旨を具体化した法の趣旨・目的(法1条)に適合するものといえるから,Y市の生活保護の申請拒否処分は,25条1項に反し,違憲である。

 (2) 平等原則(14条1項)違反の主張

  (略)

 

 2 選挙権について

  (略)

                                    以上

 

 

Ⅲ 司法試験「合格後」がイメージできなくたっていい

 

私の答案(といっても25条の主張のみだが)を読んで,受験生の皆様はどのような感想・意見等をもっただろうか。25条1項の憲法適合解釈の規範・あてはめなどの一例として多少参考になったと感じていただければ幸甚である。

 

もちろん,本答案例は,叩き台の1つであるし,受験生の皆様においてより良いく改善するなどしていただきたい。

 

なお,平等原則(14条1項)違反の主張や,選挙権(平成30年司法試験論文憲法では,生存権同様にヤマの1つ)についての主張については,特にリクエストやご質問等があれば,後日ブログで書くこととしたい。

 

 

最後に一言,年頭から頑張る受験生の皆様へのメッセージを追記する。

 

私が司法試験受験生の頃(大学1年生の頃で,当時はまだ旧司法試験時代で法科大学院もない時代)から,「合格後」のことを具体的に考えるべきとの受験指導が流行っていたように(おそらく今もそうではないかと)思われる。

 

合格後のことを考えることは悪いことではないが,どのような法律家になるかについては「法律家になる資格を得てから考えても遅くはない」[24]と私は(も)思う。合格後のことを具体的にしっかりとイメージできる受験生はむしろ少数派ではないだろうか。

 

 

明確な動機がない受験生にも,「合格の女神は微笑む」[25]に決まっている。

 

 

___________

[1] ただし,サビの「忘れないで」から「きっと思い出して」までである。

[2] 本答案例の作成にあたっては,①公法系科目1位(161点)の再現答案(辰已法律研究所『司法試験 論文全過去問集1 公法系憲法【第2版】』(平成27年)210~213頁)(以下「1位答案」という。),②大島義則『憲法ガール』(法律文化社,2013年)61頁以下,③木村草太『司法試験論文過去問 LIVE解説講義本 木村草太 憲法』(辰已法律研究所,2014年)(以下「木村・LIVE本」という。)などを参考にした。なお,④西口竜司ほか監修『平成22年新司法試験論文過去問答案パーフェクトぶんせき本』(辰已法律研究所,平成23年)30頁によると,1位答案の得点等は,161.90点(論文総合228位の方の答案)である。

[3] 問題文3頁最終段落の1行から項目立てをし,タイトルを付けただけである。「第2 選挙権について」も同様である。

[4] いわゆる処分違憲適用違憲)の問題であることをこのように明記すること。なお,適用違憲(芦部説・第三類型)に関し,芦部信喜著,高橋和之補訂『憲法 第六版』(岩波書店,2015年)388頁(以下「芦部・憲法」という。)参照。

[5] 憲法の答案では,憲法法名は,このように省略すると良いだろう。

[6] 〔a〕問題文「設問1」の1行上の行に「Xは(中略)生活保護と選挙権について弁護士に相談した。」とあることや,〔b〕平成22年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(以下「出題趣旨」という。)第2段落で①「生存権保障の問題」を検討して欲しい旨の記載があるとともに,②「自治体による別異取扱いに関しては(中略)先例(最大判昭和33年10月15日)がある」とされ,出題趣旨第3段落では「もう一つ」の問題として(「一つ」の問題の方は,上記生存権保障の問題」:①と②に分かれる問題である),③「選挙権(投票権)に関する問題」を検討して欲しい旨の記載があることなどからすれば,例えば,①~③の主張のほかに,22条1項(居住・移転の自由の侵害)を別の項目を立てて論じる答案(渋谷秀樹『憲法起案演習―司法試験編』(弘文堂,2017(平成29)年)206頁以下の「起案例」はこの構成を採る)は,筋が悪いと言わざるを得ないだろう。研究者の学問(研究発表)や出版は自由(憲法23条・憲法21条1項)だが,受験生が司法試験の答案で書く場合,不合格のリスク(具体的な危険)を覚悟すべき内容といわなければならない。ちなみに,このような構成を採って不合格になった場合,誰も(裁判所も)助けてはくれないことを受験生は肝に銘じておくべきである(国家試験における合格・不合格の判定は,裁判の対象にならない(芦部・憲法340頁参照))。

[7] 今日では,学説・判例は抽象的権利説を採ることでほぼ一致している(野中俊彦=中村睦男=高橋和之=高見勝利『憲法Ⅰ(第5版)』(有斐閣平成24年)507頁〔野中〕参照)ことなどから,少なくとも本問では,抽象的権利説の理由付けを書く必要はなかろう。

[8] 基本的な事項を書き落としてはならないが,このように短く書くと良い。ちなみに,「具体化されている」との点に関し,本来的には,生存権の行使要件や,Xが「要保護者」(法19条1項1号・2号)といえるかを検討する必要があると思われる(生存権の行使要件につき,木村・LIVE本267~268頁等参照)。しかし,本試験の問題文によると,Y市側も特にこの要保護者該当性(Xが該当すること)を争っているわけではないと考えられるため,(要件事実としては必要かもしれないが)本件では争点になっておらず,ゆえに配点は恐らく殆どないため,要保護者該当性(あるいは生存権の行使要件)の問題については,特に行数を割いて論じる必要はないと考えられるし,書いている時間やスペースもないだろう(この部分については異論があるだろう)。

[9] 問題文2頁第6段落3~4行目を殆どそのまま写し,関係条文(法19条1項2号)を書き加えただけである。

[10] 憲法25条1項と生活保護法についての憲法適合解釈(木村・LIVE本269頁)の請求の【論証】(論証パターン,論パ)であり,最三小判平成16年3月16日民集58巻3号647頁(以下「平成16年判例」という。)も(同判例は規範部分を明記しているものとはいえないが)多少参考にしている。法19条1項2号以外の他の条文の場合でも,基本的にこの【論証】を使い回せば良いだろう。この【論証】の規範からすると,私自身は,あてはめで,法の趣旨,法の目的(法1条:②必要な保護と③自立助長の2つ)との3つの事項を分けて検討すべきであると考えている。この点に関し,平成16年判例は,生活保護法4条1項の「資産等」等の解釈適用につき,生活保護「法の趣旨目的」に照らした判示をしており,趣旨と目的を明確に分けていないことなどから異論があるところだとは思うが,私は,趣旨と目的を,さらに目的の「保護」と「自立」を(できる限り)分けてあてはめをすべきではないかと考えており,その方が司法試験の出題趣旨に沿う答案が書き易くなるのではないかと考えている。

[11] まず生活保護法(19条)の「趣旨」の点についてのあてはめを行っている。(その次に「目的」(法1条)の点についてのあてはめを行っている。)

[12] 出題趣旨第6段落(「事案の内容に即した個別的・具体的検討を行うことが求められる」)を(一応)考慮している。

[13] 1つ前の段落(「イ」)の【論証】部分を上位ルールとすると,この「ウ」の第1段落の部分は下位ルールである。なお,上位規範・下位規範という語が用いられることもあると思われるが,宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開 第2版』(日本評論社,2014年)319頁は,「上位ルール」・「下位ルール」という語を使っている。

[14] 1条のキーワードを写しただけである。

[15] 出題趣旨第2段落の内容を考慮した記載である。

[16] 木村・LIVE本271頁は,「平等権」とするが,最大判平成33年10月15日(憲法判例百選Ⅰ[第6版]34事件)の下飯坂潤夫裁判官・奥野健一裁判官の補足意見では「憲法14条の原則」(下線は引用者)と表現されており,少なくとも司法試験の答案では「平等原則」(だけ)でも良いと思われるし,平等権を書く場合でも,平等原則違反・平等権侵害などと書いた方が良いと思われる。

[17] 「平成22年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法)」(以下「採点実感」という。)2~3頁・2(2)アの内容等を考慮して,本答案(25条関係)では,規範(前述した上位ルール・下位ルール)レベルでの反論は書かないという方針を採り,下位ルールを前提とした反論・私見を書いている。少なくともこの年のこの部分(25条1項違反の部分)では規範レベルでの争点を作るのは得策ではなかろう。

[18] 採点実感2~3頁・2(2)アの内容を重視し,「裁量」や「行政裁量」という用語は避けた

[19] このように,反論レベルでは,理由付けをすべて書かずに,「私見」の「確かに,・・・」の段落で,残りの理由付けを書くようにすると良い。このような記述ができるようになるために,多くの受験生は,一定の訓練(答案練習)をする必要があると思われる。

[20] 「反論」と「私見」の分量は,(予想・分析される)設問2の反論と私見の配点等を考慮すると,できるだけ1:2以上となるようにするのが良いと思われる。

[21] 設問1では書かなかった(その理由としては,①あえて書かなかった,②うまく書けなかった,③書き忘れたなどが挙げられるが,①のように戦略的に書かないということができるようになると,比較的合格答案が容易にかけるようになるものと思われる)事項について,私見で書いている。憲法13条後段の話や「飽和状態」等の話についても同様である。

[22] 憲法13条の話については,蛇足かもしれない。なお,生存権が個人の尊重(憲法13条)のために「不可欠の権利」であると考えることに関し,木村・LIVE本270頁参照。

[23] 「飽和状態」等の事実の評価をしている。

[24] 宮本航平「多摩研からのスタート」(司法試験合格体験記)中央大学ロースクール進学対策特別委員会現行司法試験対策特別委員会編『法律家を目指す諸君へ〔2003年度版〕』(中央大学出版部,2003年)183頁。なお,この著者は,2002(平成14)年の(旧)司法試験合格者(受験回数:択一2回,論文2回,口述1回)である。

[25] 伊藤真『合格のお守り』(日本実業出版社,2008年)80頁。

 

 

*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

 

 

 

平成29年司法試験採点実感(行政法)の感想 その1 司法試験の採点でマイナー判例を重視することに関するリスク

久しぶりの更新である。

 

受験生の皆様には本ブログの存在を忘れられてしまったかもしれないし,「忘れられない権利」は憲法上及び法律上保障・保護されないものと解されるが,細々と続けていきたい。なお,「忘れらんねえよ」の元ドラムの酒田さんは,本ブログ筆者の大学時代の先輩(同じバンドサークル)である。

 

 

さて,司法試験法(以下「法」という。)によると,司法試験は,「裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする」(法1条1項,下線は引用者)試験であり,また,「論述式による筆記試験」は,「裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識並びに法的な分析,構成及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的とする」(法3条2項柱書,下線は引用者)ものである。

 

では,この「必要な(専門的な)学識」とは具体的に何を意味し,そしてどのような学習によって習得すべきものなのか。

 

このことに関し,平成18年新司法試験終了後に公表された新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要3頁で,行政法の新司法試験考査委員(行政法)は,「判例百選等の基本的な判例をきちんと読込むことなどに重点を置いてほしい。さらに,余裕があれば判例雑誌や裁判所のホームページで行政事件の最新の裁判例を読み,具体的に生起する事象に対する行政訴訟による対応を考察してほしい。」(下線は引用者)という指摘をした(他の)考査委員がいることに言及し,さらに,このような学習方法・態度等は「法科大学院に求めるものである」としている。

 

これらのコメントや,法科大学院における教育が限られたコマ数で実施されていること,司法試験は8科目あり一つの科目だけに充てられる時間は(研究者が自分の専門分野の研究をする場合とは異なり)現実には相当程度限られていることなどを考慮すると,法曹三者に「なろうとする者に必要な(専門的な)学識」のうち,判例の知識については,「判例百選等」の基本判例で足り,また,「最新の裁判例」は基本判例を活用・応用できるかということを(基本判例を十分に理解しているかを)確認するためにできる限り読んだ方が良いものと位置付けられるものというべきである。

 

そうすると,上記の「基本判例」は,大半の基本書及び大半の判例集,特に判例百選(百選とはいっても扱われる判例の数は100を大幅に超え,行政法では2冊で263選となってはいるが…)に掲載されているものである必要があるというべきである。

 

さらに,以上のことから, 司法試験の採点(積極の・プラスの事項)において,

(あ)基本判例を知っている(正確に理解し記憶している)ことは,重視ないし考慮される事項となるべきものであるが,他方で,

(い)基本判例以外の判例を知っていることは,重視ないし考慮されることが禁止されるべきであり,少なくとも,多くの基本書や判例集,特に判例百選で取り上げられていないようなマイナーな判例を知っていることは,重視される事項となるべきではなく,考査委員もそのことを十分に念頭において問題を作り,かつ採点を行うべきであろう。

 

そのようにしなければ,ひいては「漏洩」(問題文や考査委員作成の模範答案そのものなどではなく,論点レベル・判例レベルの漏洩を含む)のリスクが高まるからである。

 

例えば,マイナー判例に係る秘密を知る者が法科大学院や学部の授業や課外講座等で一定程度あるいは詳しく扱うことによって一部の受験者が不当に得をする結果となり,司法試験の公正が害されるという事態が生じやすくなるからである(この漏洩リスクに関しては,次回以降のブログで詳しく述べたい)。

 

 

さて,以上のような見地から,「平成29年司法試験の採点実感(公法系科目第2問)」(以下,「29年採点実感行政法」という。)において登場する最判昭和62年11月24民集登載判例ではない。以下「昭和62年判例」ということがある。)が,上記「基本判例」にあたるか否かなどにつき,検討してみたいと思う。

 

29年採点実感行政法において,昭和62年判例は,次の2箇所で登場する。

 

「・・・本件フェンスの除却に加えて原状回復まで求めることなどが述べられており,・・・里道の近くに居住する者が当該里道の用途廃止処分の取消しを求めるにつき原告適格を有しないと判断した最高裁判所昭和62年11月24日判決(集民152号247頁)に言及して適切に論じている答案は,優秀な答案と判断した。」(29年採点実感行政法1頁)

 

「・・・本件市道を生活上不可欠な道路として利用していた通行者の生活に著しい支障が生ずる場合があるという観点から,前記⑴の最高裁昭和62年判決に言及している答案は,優秀な答案と判断した。 」(同2頁)

 

このように,29年採点実感行政法は,昭和62年判例に「言及」したか否かを考慮ないし重視していることから,受験者が昭和62年判例を知っているか否かという点を(当該論点に関して)優秀な答案とするか否かの考慮事項ないし重視事項としているのである。

おそらくであるが,主に「里道」というキーワードが書かれているか否かで「言及」したか否を判定したものと推察される。

 

では,この昭和62年判例は,「基本判例」だろうか。

 

結論を先に述べると,決して基本判例」などではない

 

それどころか,少なくとも司法試験では(行政法(公法)の研究者・学者の間では,という意味ではない)「マイナー判例」と称されるべきものである。

 

ゆえに,上記のような採点方法には,問題があったものと指摘せざるを得ない。

過去の司法試験の採点ではみられないものと思われる(この点についても,次回以降のブログで詳しく述べたい。)

 

以下,本ブログ筆者が調べた限りのものであり,不十分な調査とは思うが,昭和62年判例が掲載されている基本書等と,逆に掲載されていない基本書等を挙げておくこととする。

 

様々なテキストを使う司法試験受験生がいることを考慮し,受験生の皆様が読みそうな書籍についてはできる限り挙げることとしたが,学者の論文集やコンメンタールなどについては,原則として除外している。

 

 

1 昭和62年判例が掲載されている基本書・判例集・演習書等

 

A.基本書

(1)阿部泰隆(※)『行政法解釈学Ⅱ』(有斐閣,2009(平成21)年)122頁,149頁(全623頁)・関係記載は2行(122頁)+4行(149頁)=6(※「隆」は「生」の上に「一」が入る)

(2)宇賀克也『行政法』(有斐閣,2012(平成24)年)298頁,306頁(全472頁)・関係記載は6行(298頁)+5行(306頁)=11

(3)宇賀克也『行政法概説Ⅱ 行政救済法〔第5版〕』(有斐閣,2015(平成27)年)194頁,207頁(全572頁)・6行(194頁)+5行(207頁)=11

(4)大橋洋一行政法Ⅱ 現代行政救済論[第2版]』(有斐閣,2015(平成27)年)115頁(全508頁)・関係記載は32行(115~116頁)

(5)小早川光郎行政法 上』(弘文堂,1999(平成11)年)231頁(全321頁)・関係記載は3行(又は5行)

(6)高木光=常岡孝好=橋本博之=櫻井敬子『行政救済法[第2版]』(弘文堂,2015(平成27)年)330頁(全446頁)・関係記載は2

B.判例集・判例解説書

(7)稲葉馨=下井康史=中原茂樹=野呂充編『ケースブック行政法[第5版]【弘文堂ケースブックシリーズ】』(弘文堂,2014(平成26)年)337頁(全610頁)・関係記載は5行(又は8行)・もっとも,個別に掲載される12の取消訴訟原告適格判例(12-1~12-12)には選ばれていない。

(8)山本隆司判例から探究する行政法』(有斐閣,2012年)448~449頁(全641頁)・関係記載は7行(又は11行)

C.演習書・実務書等

(9)中川丈久=斎藤浩=石井忠雄=鶴岡稔彦編著『公法系訴訟の実務の基礎〔第2版〕』(弘文堂,2015(平成23)年)574頁(全656頁)・関係記載は7行(又は9行)であり,同じ頁で,平成29年司法試験論文行政法に掲載されていた最判昭和39年1月16民集18巻1号1頁も紹介(関係記載3行)されている

(10)藤山雅行=村田斉志編『新・裁判実務体系 第25巻 行政争訟〔改訂版〕』(青林書院,2012(平成24)年)476頁,478頁,480頁〔齊木敏文〕(全665頁)・関係記載は4行(476頁)+4行(478頁),480頁(11行)=19

 

 

2 昭和62年判例が掲載されていない基本書・判例解説書・演習書等

 

(1)阿部泰隆(※)『行政法再入門(上)』(信山社,2015(平成27)年)全398頁(※「隆」は「生」の上に「一」が入る)・阿部泰隆(※)『行政法再入門(下)』(信山社,2015(平成27)年)全340頁(※「隆」は「生」の上に「一」が入る)

(2)市橋克哉=榊原秀訓=本多滝夫=平田和一『アクチュアル行政法〔第2版〕』(法律文化社,2015(平成27)年)全356頁

(3)稲葉馨=人見剛=村上裕章=前田雅子『行政法 第3版』(有斐閣,2015(平成27)年)全376頁

(4)宇賀克也『ブリッジブック行政法〔第2版〕』(信山社,2012(平成24)年)全306頁

(5)神橋一彦『行政救済法〔第2版〕』(信山社,2016(平成28)年)全425頁

(6)小早川光郎行政法講義〔下Ⅱ〕』(弘文堂,2005(平成17)年)全124頁(117~240頁)(同〔下Ⅰ〕(全115頁)及び同〔下Ⅲ〕(全112頁(241~352頁))にも記載なし)

(7)櫻井敬子『行政救済法のエッセンス〈第1次改訂版〉』(学陽書房,2015(平成27)年)全242頁・櫻井敬子『行政法のエッセンス〈第1次改訂版〉』(学陽書房,2016(平成28)年)全222頁

(8)櫻井敬子=橋本博之『行政法〔第5版〕』(弘文堂,2016(平成28)年))全420頁

(9)塩野宏行政法Ⅱ[第五版補訂版]行政救済法』(有斐閣,2013(平成25)年)全389頁(Ⅰ・第六版(全410頁)及びⅢ・第四版(全406頁)にも掲載なし)

(10)芝池義一『行政法読本〔第4版〕』(有斐閣,2016(平成28)年)全463頁

(11)芝池義一『行政救済法講義〔第3版〕』(有斐閣,2007(平成19)年)全312頁

(12)下山憲治=友岡史仁=筑紫圭一『行政法』(日本評論社,2017(平成29)年)全228頁

(13)曽和俊文=山田洋=亘理格『現代行政法入門〔第3版〕』(有斐閣,2015(平成27)年)全402頁

(14)髙木光『行政法』(有斐閣,2015(平成27)年)全528頁

(15)高橋滋『行政法』(弘文堂,2016(平成28)年)全475頁

(16)高橋信行『自治体職員のための ようこそ行政法』(第一法規,2017(平成29)年)全226

(17)野呂充=野口貴公美=飯島淳子=湊二郎『行政法』(有斐閣,2017(平成29)年)全284頁

(18)橋本博之『現代行政法』(岩波書店,2017(平成29)年)全294頁

(19)原田尚彦『行政法要論(全訂第七版補訂二版)』(学陽書房,2012(平成24)年)全462頁

(20)原田大樹『例解行政法』(東京大学出版会,2013(平成25)年)全539頁

(21)藤田宙靖行政法総論』(青林書院,2013(平成25)年)(全641頁)

B.判例集・判例解説書

(22)宇賀克也=交告尚史=山本隆司編『行政判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第6版〕』(有斐閣,2012(平成24)年)全554

(23)橋本博之『行政判例ノート[第3版]』(弘文堂,2013(平成25)年)全397頁

宇賀克也『判例で学ぶ行政法』(第一法規,2015(平成27)年)全393頁

C.演習書・実務書等

(24)石森久広『ロースクール演習行政法〔第2版〕』(法学書院,2015(平成27)年)全421頁

(25)大島義則『行政法ガール』(法律文化社,2014(平成26)年)全256頁

(26)大西有二編著『設例で学ぶ 行政法の基礎』(八千代出版,2016(平成28)年)全264頁

(27)大貫裕之『ダイアローグ行政法』(日本評論社,2015年)全412頁

(28)北村和生=深澤龍一郎=飯島淳子=磯部哲『事例から行政法を考える』(有斐閣,2016(平成28)年)全436頁

(29)小早川光郎=青栁馨編著『論点体系 判例行政法 2』(第一法規,2017(平成29)年) 全652頁・・・「本書は、行政事件に携わる法律実務家のための実務コンメンタールが必要であるとの認識に基づいて企画されたもの」(はしがき(1)頁)である。

(30)曽和俊文=野呂充=北村和生編著『事例研究行政法[第3版]』(日本評論社,2016(平成28)年)全515頁

(31)高木光=高橋滋=人見剛『行政法事例演習教材』(有斐閣,2009(平成21)年)全214頁

(32)土田伸也『基礎演習行政法 第2版』(日本評論社,2016(平成28)年)全298ページ

(33)中原茂樹『基本行政法[第2版]』(日本評論社,2015(平成27)年)全447頁

(34)橋本博之『行政法解釈の基礎―『仕組み』から解く』(日本評論社,2013(平成25)年)全282頁

(35)原田大樹『演習行政法』(東京大学出版会,2014(平成26)年)全542頁

(36)亘理格=大貫裕之編『Law Practice行政法』(商事法務,2015(平成27)年)全296

 

(37)辰已法律研究所『趣旨・規範ハンドブック1 公法系[第5版]』(辰已法律研究所,2015(平成27)年)全277頁

 

 

調査結果は,以上のとおりであるところ,多くの受験は「あ,私の使っている基本書/演習書/予備校本には載っていないんだ・・・」という感想を持たれるのではなかろうか。

 

 

ここで,あえて繰り返そう。

 

基本判例以外の判例を知っていることは,重視ないし考慮されることが禁止されるべきであり,少なくとも,多くの基本書や判例集,特に判例百選で取り上げられていないようなマイナーな判例を知っていることは,重視される事項となるべきではない

 

そのようにしなければ,不公正な疑いのある司法試験が実施されることになるし,場合によっては,またあのような忌まわしき悪夢が繰り返されることになる。

 

 

 

   全ての受験生,そして法曹が思っていることである。

 

      司法試験は公正に実施されるべきである。

      それに,あんな事件は,もうたくさんだ。

 

 

 

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*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

 

司法試験採点実感の「消費期限」と「賞味期限」  -審査基準を「若干緩めて」と書くのは「不適当」(26年憲法採点実感)は「消費期限」切れか?-

 

本日,ある司法試験受験生の方から,憲法の論文答案に関する興味深いご質問を受けた。他の受験生の方にも同様の疑問をお持ちの方がいるかもしれないと思い,ブログを更新することにした。

 

<質問>

「答案に,『審査基準をやや緩和して』というような記載をしてはならないと合格者の方から言われたのですが,本当でしょうか?基本書などで似たような書き方をしているのを読んだことがあるのですが…。」

 

<回答>

「『多少とも緩和した形で適用されるべき』とか『やや緩和した審査基準を適用すべき』などと書くことは,今日の司法試験では(ゆえに平成30年司法試験でも)問題ないように思われます。とはいえ,基準を緩和する理由についての記載を答案に書いておけば,『多少とも緩和・・・』などの部分をわざわざ書かなくてもよいでしょう。」

 

 

 

<回答理由等>

 

1 26年採点実感「審査基準を『やや下げて』『若干緩めて』はNG」

 

上記ご質問について,まず想起すべきは,平成26年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)(以下「26年採点実感」という。)におけるコメントである。

 

26年採点実感7頁・2「(6) 答案の書き方等」のところでは,「答案における用語の使用方法等について気になるところを指摘する。不適当な用語の使用は,その内容によっては,受験者の概念の理解に疑いを抱かせるものであるという点に留意願いたい。」(下線は引用者)とした上で,7つの事項につきコメントしている。ここでは,その7つのうち2つを紹介しよう。

 

(A)「・本来,『立法裁量』と書くべきところを『行政裁量』と書いているものが多かった。憲法訴訟における裁量論の意味をよく考えてほしい。」

 

(B)「・審査基準を『やや下げて』とか,『若干緩めて』といった記述が見られたが,判例や実務でこのような用語を使うかは疑問である。」

 

 

このうち,(A)については,異論はなかろう。「立法裁量」と書くべきところを「行政裁量」と書いてしまったら,それは明確な間違いだからである。[1]

 

他方で,(B)については,どうだろうか。冒頭の質問と関連する採点実感である。

 

この(B)は,(A)とは違い,(「上げて」とか「下げて」ややや稚拙な表現なので良くないが)明確な間違いとまではいえないように思われるし,(B)に対しては,以下に述べるとおり,2つの批判が考えられる。

 

 

2 26年採点実感の問題点

 

(1)伊藤正己補足意見「違憲判断の基準…多少とも緩和した形で適用」

 

第1に,「判例や実務でこのような用語を使うか」否かという点まで司法試験の採点に組み込むということなのだろうか。

 

もちろん,品位を欠く表現,あるいは稚拙にすぎる表現は司法試験でもNGであろうが,そこまでではない表現があった場合,得点を相対的に低くしたりするという趣旨の採点実感であれば,問題であろう。

 

それは基本的には司法修習で学ぶなどすれば足りる(二回試験では出ないが)ことと思われるからである。

 

第2に,「審査基準を『やや下げて』」という表現は,確かに判例で(殆ど)使われないのかもしれないが,「『若干緩めて』といった記述」については,使われることがあってもおかしくないのではないかと思われる。

 

 

判例・実務の例(と考えられるもの)であるが,例えば,考査委員自身が採点実感において明確に言及した判例でもある「岐阜県青少年保護育成条例事件判決」の「伊藤補足意見」(平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法)1頁・1(1))は,次のように述べている。

 

「…違憲判断の基準についても成人の場合とは異なり、多少とも緩和した形で適用されると考えられる。」(下線は引用者)

 

 

勉強の進んでいる受験生には言うまでもないことだが,この判決(最三小判平成元年9月19日刑集43巻8号785頁)は,憲法判例百選に収録された重要判例である(同[第6版]Ⅰ・55番事件・松井茂記教授解説)[2]

 

ちなみに,松井教授は「解説」2(1)部分で,次のとおり,伊藤補足意見を要約して紹介している。

 

伊藤正己裁判官の補足意見は,青少年に対する憲法的な表現の自由の保障の程度は成人の場合に比較して低いとし,成人に対する表現の規制の場合のように,その制約の憲法適合性について厳格な基準が適用されず,多少とも緩和した形で適用されるべきだとしている。しかし,後述するように,未熟な判断能力の青少年を保護するためパターナリズムに基づいて青少年の自由を制限することが認められるからといって,その保護の程度は低く,違憲審査の基準は緩やかでよいと考えることができるかどうか異論がありえよう。」(下線は引用者)

 

以上のような解説があることから,百選をよく読んでいる受験生であれば,答案で,審査基準を「緩和」するという表現を使ってしまうこともあるだろうが,

伊藤補足意見は(判例ないし)実務の例と呼んでも問題ないように思われる。

 

(2)考査委員(研究者)「やや緩和された…審査基準を適用すべき

 

ちなみに,蛇足になるかもしれないが,研究者・学者が「緩和」という表現を使っているかどうか確認しておこう。

 

平成27年から平成29年まで司法試験考査委員を担当された曽我部先生のテキストである新井誠=曽我部真裕=佐々木くみ=横大道聡『憲法Ⅱ 人権』(日本評論社,2016年)120頁〔曽我部真裕〕には,次の記載がある。

 

「…規制内容についての違憲審査のあり方に関する重要な考え方である内容規制・内容中立規制二分論(以下、『二分論』という)について説明する。

二分論とは、端的にいえば、表現規制を表現内容に基づく規制と表現内容に関わらない規制(内容中立規制)とに二分し、前者に対しては厳格な違憲審査基準を、後者に対してはやや緩和された(しかし経済的自由に対するものほど緩やかではない)審査基準を適用すべきだという考え方であり、有力な異論もあるが、学説においては広く支持されている。」(下線は引用者)

 

ということで,「やや緩和された」審査基準を適用すべきといった表現は,考査委員自身が用いているのである。

 

ちなみに,元司法試験(新司法試験)考査委員の赤坂先生も,先生のテキスト(赤坂正浩『憲法講義(人権)』(信山社,2011年)26頁で,「より厳しい審査」・「より緩やかな審査」という表現を用いているわけであり,「緩和」とか「緩やか」とか「やや」という語は,受験生(学生)だけではなく,研究者・学者も使っているものといえる。

 

(3)東京大学名誉教授(憲法学)「審査の厳格度を緩める

 

他にも,例えば「審査の厳格度を緩めることが可能」(高橋和之立憲主義日本国憲法 第4版』(有斐閣,2017年)244頁)という表現がある。

 

さらに他にも(以下,省略)。

 

というように,上記の26年採点実感は,研究者の立場ともズレのあるもののように思われ,その「瑕疵」の程度はかなり重大だろう。

 

 

3 採点実感の射程ないし「消費期限」

 

26年採点実感7頁(6)の前記(B)のような記述は,その後の採点実感や出題趣旨では登場していないものと思われる。

それは,①特定の考査委員(採点実感につき会議等で代表して報告等する考査委員)が変わったことと,上記2のとおり,②採点実感の内容自体にいわば「瑕疵」があったことに基づくものであろう。

 

今回のブログで問題にした箇所のように,司法試験の採点実感には,その後の司法試験に「射程」が及ばない(及ばなくなる)ものがある。

いわば「消費期限」[3]が切れている(切れる)採点実感も存在するものと考えられる。

 

とはいえ,「消費期限」の切れる要素は上記①・②であると思われるが,①・②を満たす場合は,かなり限られていることから,採点実感の殆どが今日でも生きている(消費期限の切れておらず,あるいは性質上切れることのない有効な)ものと思われるので,注意が必要である。

 

 

4 判例変更ならぬ「実感変更」

 

なお,このような「射程」や「消費期限」のことが,出題趣旨や採点実感において明記されることはさすがになかろう。

 

ただし,新しい出題趣旨や採点実感において昔の採点実感が実質的に・黙示的に覆されることはありうると思われる。

 

判例変更ならぬ採点実感の変更(実感変更)である。

 

実感変更は法定されていないものの,それは観念・存在しうるだろう。

 

 

というわけで,以上より,平成30年(以降)の司法試験論文憲法の答案で,「多少とも緩和した形で適用されるべき」とか「やや緩和した審査基準を適用すべき」などと書くことは,おそらく問題ないことなのかもしれないが,それでもリスクが心配という人は,審査基準を緩和する理由に係る記載を答案に書いておけば「多少とも緩和・・・」などの部分をわざわざ書かなくても点は入ると考えられるので,その部分を書かないようにすれば良いと思われる。

 

 

5 採点実感の「賞味期限」 ~採点委員は採点実感を何年分遡って読むのか~

 

最後に,冒頭のご質問からはやや外れることだが,受験生がどの年の採点実感をどの程度力を入れて読むべきかにつき付言する。

 

もとより推測であるが,司法試験の考査委員・採点委員は,過去の採点実感を事前に読んでいるものと考えられる。

 

特に初めて採点委員になった者は,採点の便宜上,過去どのように採点がなされたか知りたいだろうし,当局としても採点の安定性(←他の採点委員と開きがありすぎては困る)という観点から,採点委員に過去の採点実感を読んでほしいと考えるのが普通だからである。

 

そうすると,ではどこまで遡るのかということであるが,感覚的には,概ね直近の3年分というところではないかと思われる(特に1年前の採点実感は最初に目を通す採点実感と予想され,注意深く読むだろう)。

 

また,もしかしたら,4年前以前のものについては,それらをまとめた資料があるのかもしれない。

 

もちろん推測の域を出ないが,1~2年分では少ない感じがする(上記採点の安定性を確保し難くなる)し,4~5年分だとやや多い気がする(量が多く頭に入らないのでやはり採点の安定性を確保し難くなる)。

 

よって,受験生としても,直近3年分くらいは,(だれかがまとめたものではなく)法務省で公表されている採点実感そのもの(自分が選択しない選択科目のものを除く全文)をある程度しっかり読むべきであり,それ以外の年のものは,まとめられたものを読んだり,過去問検討の中で適宜(部分的に)読んだりすればよいだろう。

 

つまり,私の予想によると,4年前以前の採点実感については考査委員にその全文を読まれる期限を過ぎているため,いわば「賞味期限」[4]が切れているものといえるので,相対的に重要度が少し落ちるものとなるように思われる。

 

「消費期限」と区別し「賞味期限」とした理由は,上記のとおり重要なものを当局等がまとめた資料などは用意されているのかもしれないし,あるいは採点委員経験者の頭の中では特に重要なものについては未だ生き残っているものもあるだろうといった点にあるが,例えがこれで良かったのかは微妙なところかもしれない。

 

…と,このように色々と思いを巡らせるなどしながら,採点実感等を読むのも,司法試験の研究[5]の醍醐味ではないだろうか。

 

 

以上より,司法試験受験生としては,まずは直近3年分の採点実感を良く読み,4年前以前のものについては過去問検討やゼミ,あるいは授業等に際して,重要部分と思われる部分をピックアップするような作業をすると良いのではないかと思われる。参考になれば幸甚である。 

 

______________________

 

[1] とはいえ,「憲法訴訟における裁量論の意味をよく考えてほしい」という謎かけ的・禅問答的・ソクラテス的な言い回しは何とかならないものか。なお,このような禅問答的な部分の解答ないし見解を考査委員(採点委員や元考査委員・元採点委員を含む)が法科大学院や法学部の授業などで明示等することは,①司法試験の実施に係る平等原則違背行為や②秘密漏えい罪に当たる行為とまではいえなくても,③非立憲的な行為であるものと考えられ,強く非難されるべきものである。

[2] なお,岐阜県青少年保護育成条例事件判決は,平成30年司法試験論文憲法でも活用すべき判例となる蓋然性が高い判例であると考えられる。

[3] 消費期限とは,本来は,「傷みやすい食品に表示される、安全に食べられる期限」(新村出編『広辞苑第六版』(岩波書店,2008年)1393頁)を意味するものである。

[4] 賞味期限とは,本来は「比較的長持ちする加工食品を、定められた方法によって保存した場合,その品質が十分に保ておいしく食べられる期限」を意味するものである(新村出編『広辞苑第六版』(岩波書店,2008年)1398頁)。

[5] ここでの「研究」は一種の比喩である。司法試験の問題,出題趣旨,採点実感,ヒアリング,再現答案(特に上位答案),各種解説文献等は,何度検討しても(少なくとも私には)ほぼ毎回新たな発見があるものであり,これらの検討・再検討は,興味深く大変勉強になる。受験生の方々にもこの検討等の結果をできる限り還元していきたい。

 

 *このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その5 出題趣旨から探究する「答案枠組み」

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨(以下,単に「出題趣旨」ということがある。)についての感想のつづきである。

 

前回のブログでは出題趣旨第3・4段落の感想を述べ,前回までに出題趣旨の第1~5段落の感想を述べた。

  

yusuketaira.hatenablog.com

 

そこで,今回のブログでも,「人権パターン」すなわち規範(判断枠組み・違憲審査枠組み)の理由付けと規範自体,そして規範へのあてはめ・結論という流れとの関係を意識しつつ,出題趣旨第6段落の感想を述べることとする。

 

 

〔出題趣旨第6段落(下線,〔1〕~〔4〕は引用者)〕

これに対して国の主張としては,〔1〕妊娠等の自由が憲法上保障されるとしても,出入国や国内での滞在は国家主権に属する事項であって,妊娠等を理由に強制出国処分とすることについては極めて広範な裁量が認められること,〔2〕子供が日本で生まれ育つことにより,日本の社会保障制度や保育・教育及び医療サービス等の負担となる可能性があり,また,親である外国人も含め,定住の希望を持つようになる蓋然性があること,〔3〕新制度は労働力確保のためであり,妊娠等によって相当期間に渡って就労が不可能になるから禁止事項として合理性があること(特労法第15条第6号が1月以上就労しないことを禁止事項としていることも参照。),〔4〕妊娠等禁止の条件は事前に周知され,誓約(同意)もあることから基本権への制約がなく合憲であるといった点を指摘することが考えられよう。

 

 

1 「国の主張」までしか書いてくれない考査委員

 

まず,残念なのは,出題趣旨には,「国の主張」までしか書いていないということである。これを不親切である,あるいは不誠実であると感じた受験生もいるのではないだろうか。

 

ちなみに,出題趣旨で示されていない「私見」の具体例につき,考査委員自身(採点委員から担当する考査委員を含む)が法学部や法科大学院の授業の中などで(黙示的にも)具体的に示しているとすれば,直接的な問題(それ自体の)漏洩とは言えなくても,司法試験の公正さを大きく害する行為であると思われる。

 

違憲(平等原則違反行為)とまでは言えなくても,非立憲的な行為というべきである。

 

 

2 「反論」と「私見」の「型」

 

(1)採点実感「諦めるべきではない」 (修造か)

 

(出題趣旨の「国の主張」の一部を私見で書くということはあろうが)「私見」の例は出題趣旨には明記されていないから,「反論」と「私見」の型(後者がメインであるが)や内容の検討について「諦める」という選択肢もありそうなものであるが,そういうわけにはいかない。

 

平成27年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)(以下「司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)」を「採点実感」と略す。)が次のように述べるからである。

 

「将来弁護士になれば,明らかに採用の余地がない主張はすべきでないことを前提としつつも,不利な事実関係にも配慮しながら,何とか裁判所に受け入れてもらえるような説得的な法律構成がないかと思い悩み,考えなければならないであろう。そのような悩みを見せずに簡単に諦めるべきではない。」(下線は引用者)

 

一応繰り返すが,これは採点実感であって,松岡修造の応援メッセージではない。考査委員自身のコメントである。

 

さて,長い前置きはこのくらいにして,設問2の型すなわち「私見」を中心とする「反論」と「私見」の型の話に進もう。この型を探るべく,過去の採点実感(平成26年採点実感)をみてみよう。

 

平成26年採点実感3~4頁(抜粋)(下線,〔1〕~〔4〕は引用者)

・〔1〕設問2について,被告の反論なのか自己の見解なのかさえ判然としない答案があった。[1]

 

・〔2〕設問2について,「被告側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で」とあるからか,被告の反論については全体で一点だけ簡単に示して,後は全て受験者自身の見解だけを書くというスタイルも見られたが,出題者の趣旨は,設問1で論述した原告側主張と対立する被告側主張を意識した上で,自身の見解を説得的に論証してもらいたいというものであるので,少なくとも両者の対立軸を示すに足りる程度の記載は必要である。

 

・〔3〕設問2について,【ある観点からの反論→それに対する受験者自身の見解→別の観点からの反論→それに対する受験者自身の見解→更に別の観点からの反論→それに対する受験者自身の見解・・・】という構成の答案が多かった。その結果,手厚く論じてもらいたい受験者自身の見解の論述が分断されてしまい,受験者自身が,この問題について,全体として,どのように理解し,どのような見解を持っているのかが非常に分かりづらかった。さらに,極端に言えば,「原告の△△という主張に対し,被告は××と反論する。しかし,私は,原告の△△という主張が正しいと考える」という程度の記載にとどまるものもあった。

 

・〔4〕受験者自身の見解について厚く論述している答案は多くなかった。一方当事者の立場として原告の主張を記載するのに時間を費やすだけで,必ずしも多角的な視点からの検討にまで至っていないことは残念であった。

 

この平成26年採点実感からすれば,次のことが指摘できるだろう。

 

〔1〕→「反論」の部分と「私見」の部分は分けて書くこと

(両者の区分が考査委員にも分かるように書くこと)

 

〔2〕→「反論」は争点ごとに複数書くこと(争点は必ず複数ある)

「反論」では,対立軸を示すに足りる程度の記載が必要

 

〔3〕→「私見」を「反論」よりも「厚く」書くこと

 

〔4〕→「私見」は「多角的」に書くこと

 

ちなみに,〔1〕や〔2〕に関し,平成28年採点実感3頁は,「本年は,昨年と異なり,各設問の配点を明示しなかったが,設問1では付添人の主張を,設問2ではあなた自身の見解を,それぞれ問い,検察官の反論については,あなた自身の見解を述べる中で,これを『想定』すればよいこととした。したがって,検察官の反論については,仮に明示して論じるにしても簡にして要を得た記述にとどめ,あなた自身の見解が充実したものになることを期待したものである。この点では,本問は,従来の出題傾向と何ら変わらない。」(下線は引用者)とする。

 

この「反論については,仮に明示して論じるにしても」が引っ掛かるが,次の(2)で述べるとおり,平成28年司法試験論文公法系科目1位再現答案(評価A,168.90点)[2](以下「1位答案」という。)や,公法系科目4~5位再現答案(評価A,159.05点)[3](以下「5位答案」という。)も,「反論」という小タイトルを付す・付さないということはさておき,「反論」という語を答案に明記しているし,1位答案に至っては,「検察官の反論」と「私見」という小タイトルまで明記している。

 

そのため,「反論」を「明示」することは特に禁止されているというわけではなく,むしろ,上記〔1〕の<「反論」の部分と「私見」の部分は分けて書く>というルールが平成30年以降も妥当するものと考えられる。平成28年も,そして出題形式が28年と同じである平成29年[4]も,「従来の出題傾向と何ら変わらない」(平成28年採点実感3頁)のであるから,平成28年の‘上位答案の射程’が平成30年(以降)も妥当するといえよう。

 

(2)「反論」と「私見」を書く順序

~28年公法系1位答案と4~5位答案の設問2の構成を参考に~

 

以上検討したように「反論」と「私見」を分けるとして,書き方の順序が問題となる。すなわち,「反論」ですべての争点について書き,「私見」でそのすべての争点について論じるべきか(パターンA),それとも,争点ごとに反論・私見を書いていくべきか(パターンB)[5]という問題である。

 

この問題について,出題趣旨や採点実感等は必ずしもコメントをしてくれていないように思われることから,1位答案や5位答案を検討してみる必要があるといえよう。

 

まずは,1位答案の骨子を見てみよう。

 

〔1位答案の答案構成の骨子〕

(〔1〕~〔3〕,各文末の(  )内の記載は引用者)

第2 設問2

 1 13条の主張について

  (1) 検察官の反論[6]

     そもそも位置情報は,・・・であり,・・・は,重要な自由ではなく,原告のいうほど厳格に審査する必要はない。(審査基準の厳格さに関する反論[7]・3行[8]

     立法のきっかけは,・・・立法事実として十分である。(目的審査に関する反論[9]・2行)

     未然に再犯のリスクを防ぐという観点からは,・・・20年の期間が長期に過ぎるともいえない。(手段審査に関する反論・3行[10]

 (2) 私見[11]

審査基準について検討するに,〔1〕確かに・・・けれども,〔2〕例えば,・・・が考えられるし,〔3〕また,・・・のであり,・・・重要な自由というべきである。(審査基準の厳格さに関する私見・8行[12]

     一方,目的については,〔1〕・・・ではないし,〔2〕なのであって,立法事実の裏付けがないとはいえない。(目的審査に関する私見・4行)

     もっとも,手段については,・・・手段によっても同等に目的達成が可能である。つまりLRAがあるといえるので,法14条,21条,31条1号2号は違憲である。(手段審査に関する私見・5行)

2 22条の主張について

  (1) 検察官の反論

〔1〕法は,・・・規制にしており,〔2〕しかも,・・・となっており,制約が強度とはいえない。(審査基準の厳格さに関する反論・4行)

     〔1〕一般的危険地域への立ち入りを禁止していないのは,むしろ・・・であり,〔2〕・・・である。ゆえに,・・・実質的関連性を欠いているとはいえない。(手段審査[13]に関する私見・5行)

(2) 私見

〔1〕一般的危険地域への・・・〔2〕しかも・・・であり,・・・実質的に関連していないといわざるを得ない。(審査基準の厳格さに関する私見・5行)

     〔1〕また,検察官は,・・・と主張するが,〔2〕・・・は不合理であり,〔3〕実際には,・・・とは評価できないのであり,この点でも検察官の反論は採用できない。(手段審査に関する私見・5行)

     よって,憲法22条に反して違憲である。(結論違憲)・1行)

 

次に,5位答案の骨子を分析しよう。

 

〔5位答案の答案構成の骨子〕

(〔1〕~〔4〕,各文末の( )内の記載,(1)~(3)の小タイトルは引用者)

第2 設問2について

 1 13条違反について

  (1) 審査基準の厳格さに関する反論・私見①[14]

   ア[15] まず,・・・から,・・・ため,厳格な審査基準を用いるべきではないとの反論が考えられる。(反論・3行)

   イ もっとも,・・・ではない。既に・・・ということはできない。(私見・5行)

 (2) 審査基準の厳格さに関する反論・私見②[16]

   ア 次に,・・・ことから,厳格な審査基準を用いるべきではないとの反論が考えられる。(反論・3行)

   イ たしかに,・・・であるといえる。また,・・・から,上記の反論は失当である。

      そうだとしても,確かに・・・ことからすれば,・・・ではない。しかがって重要な目的のために,目的と実質的関連性を有する手段であれば制約が正当化されると考える。(私見・11行(第1段落7行+第2段落4行))

(3) 手段審査[17]に関する反論・私見

         ア さらに,手段の相当性について,・・・であるから,人権侵害の危険は・・・よりも低く,手段として必要最小限度のものであるとの反論が考えられる。(反論・4行)

   イ もっとも,〔1〕・・・と同様の効果を持つ手段である。〔2〕一方で,・・・目的達成のために有効な手段とはいえない。

     さらに,〔3〕・・・であって,・・・わけではない。〔4〕目的達成のためには,このような手段を使わなくても,・・・ことでも足りる。

     このように,・・・目的と実質的関連性があるとはいえない。(私見・13行(第1段落5行+第2段落5行+第3段落3行)))

     しかがって,法は,13条に反し違憲である。(結論違憲)・1行)

2 22条違反について

  (1) 審査基準の厳格さに関して

上記1の反論(1)は,22条にもあてはまる。(反論・1行)

(2) 手段審査に関する反論・私見

ア ・・・ことから,手段として相当であるとの反論が考えられる。(反論・4行)

   イ もっとも,・・・ではないため,このような反論は失当である。

     〔1〕法23条・24条は,・・・であり,〔2〕その一方で,・・・といえるので,立ち入りを禁ずるだけで目的が達成されるという関係にあるわけではない。(私見・8行(第1段落4行+第2段落4行))

         このようなことからすれば,手段が目的達成に必要不可欠であるとはいえないのであるから,法23条・24条は,22条1項に反し違憲である。(私見→結論・2行)

3 14条違反について

  (1) ・・・合理的な理由があるとの反論が考えられる。(反論・4行)

(2) ・・・合理的な理由も基づくものとはいえない。(私見・4行)

       したがって,法は14条に反し違憲である。(結論・1行)

 

(3)パターンAか,パターンBか → パターンB

 

以上みてきたとおり,1位答案はパターンA(:まとめて反論→まとめて私見型)で,5位答案はパターンB(:争点ごとに反論・私見型)で,それぞれ答案を書いている。

 

ここで,各パターンのフレーム(自由権侵害の主張が2つの場合)を示してみたい。

 

ア パターンA:まとめて反論→まとめて私見型

第2 設問2

1 ●●条の主張について

  (1) 反論

                  審査基準の厳格さに関する反論

     目的審査に関する反論

     手段審査に関する反論

(2) 私見

     審査基準の厳格さに関する私見

     手段審査に関する私見

     結論(違憲

2 ▲▲条の主張について

   (上記1の構成と同じ)

 

イ パターンB:争点ごとに反論・私見型

第2 設問2

1 ●●条の主張について

  (1) 審査基準の厳格さについて

   ア 反論

   イ 私見

(2) 目的審査について

   ア 反論

   イ 私見

(3) 手段審査に関する私見

   ア 反論

   イ 私見

(4) 結論

2 ▲▲条の主張について

  (上記1の構成と同じ)

 

それでは,パターンA・Bどちらの答案構成(の骨子)によるのが良いだろうか。どちらでも良さそうなものであるが,過去の採点実感は次のようなコメントを残している。

 

「『被告側の反論』の想定を求めると,判で押したように,独立の項目として『反論』を羅列する傾向が見られる。むしろ『あなた自身の見解』の中で,自らの議論を展開するに当たって,当然予想される被告側からの反論を想定してほしいのにもかかわらず,ばらばらな書き方をするために,かえって論理的な記述ができなくなっている(あるいは,非常に論旨が分かりづらくなっている)という傾向が顕著になっている。」(下線は引用者)(平成23年採点実感3~4頁)

 

ここで,考査委員は,独立の項目(小タイトル)として「反論」を書くことにネガティブな印象をもった旨のコメントをしていると考えられる。

 

そうすると,パターンAが170点近い答案なので,パターンAも捨てがたいところではあるが,上記平成23年採点実感を重視するならば,パターンBの方がベターということになるだろう。

 

(4)反論と私見の割合・・・ 1 : 2~3程度

 

ちなみに,「反論」と「私見」の割合は,1位答案・4~5位答案からすれば,1:2あるいは1:2~3程度ということになりそうである。反論を3行書いたら私見は6行程度(あるいは7行以上)書く必要があるということである。

 

ちなみに,やや繰り返しになるが,この割合の問題につき,平成28年採点実感3頁は,「本年は,昨年と異なり,各設問の配点を明示しなかったが,設問1では付添人の主張を,設問2ではあなた自身の見解を,それぞれ問い,検察官の反論については,あなた自身の見解を述べる中で,これを「想定」すればよいこととした。したがって,検察官の反論については,仮に明示して論じるにしても簡にして要を得た記述にとどめ,あなた自身の見解が充実したものになることを期待したものである。この点では,本問は,従来の出題傾向と何ら変わらない。」(下線は引用者)としていることからすれば,例えば,「たしかに,・・・とも思える。しかし,・・・。」という「反論」を明示しないようなスタイルで書いたとしても点数は入るようになっていると思われる。

 

 

3 出題趣旨第6段落の分析

 

さて,以上に述べたとおり,パターンBの骨子・フレームで憲法の答案を書くとして,次に,その骨子の中身となる出題趣旨第6段落について検討する。

 

同段落は,大別して4つの「国の主張」に言及する。

 

まず,〔1〕「妊娠等の自由が憲法上保障されるとしても出入国や国内での滞在は国家主権に属する事項であって,妊娠等を理由に強制出国処分とすることについては極めて広範な裁量が認められること」(下線は引用者,以下の〔2〕~〔4〕についても同じ)についてみる。

 

〔1〕は,「保障」レベルを積極的には争点にしない趣旨に出たものと考えられる。平成28年は「保障」レベルの話も争点となりうるし,23年などは「保障」されるか否かの話が争点の1つとなるものと考えられ,厚く書くべき問題といえるだろうが,平成29年は,これらとは逆に,問題となる自由が憲法上の自由・人権として「保障」される点は争点とはなりにくい問題であったと考えられる。

 

また,〔1〕は,立法裁量や行政裁量が肯定されうる(争点となりうる)事案・場合の問題に参考になるものといえ,(厳格ではない)規範定立の理由に係る主張である。

 

また,「〔4〕妊娠等禁止の条件は事前に周知され,誓約(同意)もあることから基本権への制約がなく合憲である」との国の主張も,(厳格ではない)規範定立の理由に係る主張である。

 

このように,〔1〕と〔4〕は基本的には,規範(判断枠組み・審査基準・違憲審査基準)定立までの理由(厳格な基準によるべきではないとする理由)に関する国の主張というべきである。

加えて,〔4〕は,規範のあてはめ・適用における規制の相当性(があること・規制が弱いこと)に関わる主張でもあるといえよう。

 

次に,〔2〕「子供が日本で生まれ育つことにより,日本の社会保障制度や保育・教育及び医療サービス等の負担となる可能性があり,また,親である外国人も含め,定住の希望を持つようになる蓋然性があること」についてみる。

 

〔2〕は,規制の効果・関連性の「可能性」や「蓋然性」(規制して意味があるであろうこと)について言及するものであり,参考になる。

 

さらに,〔3〕「新制度は労働力確保のためであり,妊娠等によって相当期間に渡って就労が不可能になるから禁止事項として合理性があること(特労法第15条第6号が1月以上就労しないことを禁止事項としていることも参照。)」について。

 

〔3〕も,規制の効果・関連性がある(規制して意味がある)可能性ないし蓋然性があることについて説明するものといえる。

 

 

4 パターンBによる‘答案枠組み’

 

以上の分析から,自由権の制約が問題となる事例につき,以下の枠内のとおり,パターンB(争点ごとに反論・私見型)による答案(設問1・設問2)の骨子の例を示しておくことにする。

 

判断枠組み・違憲審査枠組みを包含する‘答案枠組み’である,といったら少々大げさだろうか…。

 

第1 設問1

 1 ・・・法●条等の法令違憲の主張(憲法●●条違反)[18]

(1)・・・法(以下「法」という。)●条●項●号[19]は,・・・が・・・する場合に・・・する行為を禁止事項としており,その違反があった場合には・・・という強制措置がと(執)られることとされている(法●●条●項)。では,かかる措置をとることは●●権/●●の自由(憲法(以下法名略)●●条)を侵害しないか。

 (2)本件自由が憲法上保障されること

    ●●条は,・・・ことから,●●権/●●の自由を保障している。

    そして,・・・(という)自由(以下「本件自由」という。)は,・・・であり,・・・といえることから,●●条で保障されるものといえる。

 (3)判断枠組み(審査基準/違憲審査基準)

   ア まず,本件自由は,・・・であることから重要であり,●●権の中でも特に尊重されなければならない。

     また,法●●条は,・・・から,・・・という態様の制約にとどまらず,強制の程度がより大きいものであるといえ,規制の程度は強いことから,●●●●事件とは事案が異なり,国の●●裁量は限定されるべきである。

   イ そこで,・・・といった本件自由につき一定の制限を課す必要があり,このような反対利益への配慮を要する場合であるとしても,その合憲性の判定は,中間審査基準によるべきであり,目的の重要性及び手段の実質的関連性があることを要するものと考える。

 (4)審査基準の具体的な適用

 ア 目的審査 (・・・立法事実がない/十分ではない)

・・・という(更なる)規制は,・・・という従来の規制である直接的な措置と比べて周辺的なものにすぎないものであるから,立法事実が十分であるとはいえず,重要な立法目的とまではいえない。

   イ 手段審査 (・・・関連性なし,相当性を欠く・LRAがあるなど)

     仮に目的が重要だとしても,・・・という事実(事情)に照らすと,当該規制手段が全て・・・(という規制目的)につながるとは限らず,合理性に欠けるものといえる。(・・・目的・手段の関連性がない(乏しい),あるいは,規制手段の実効性を欠く(両者を一言でいえば「意味のない規制」ということ))

    さらに,・・・ことから,規制手段の相当性を欠くし、目的達成のためには,このような規制手段によらなくても,・・・でも足りるといえ,より制限的でない他の選び得る手段(LRA)がある。

    したがって,実質的関連性があるともいえない。

以上より,法は,●●条に反し違憲である。

2 ・・・法▲▲条等の法令違憲の主張(憲法▲▲条違反)

  (基本的には,上記第1の1の構成と同じ)

 

 

 

第2 設問2

1 ●●条の主張について

  (1) 審査基準の厳格さについて

   ア 被告側の/検察官の/国の反論

    まず,・・・ことから,厳格な審査基準を用いるべきではないとの反論が考えられる。

   イ 私見

    しかし,・・・ことから,上記反論は採用できない。

    また,・・・とも思えるが,・・・というべきであるから,上記中間審査基準によるべきと考える。

(2) 目的審査について

 ア 反論

       ・・・ことから,・・・となる可能性があり,目的は重要であるとの反論が考えられる。

 イ 私見

    ・・・との事実からすれば,・・・となる可能性が裏付けられるし,加えて,・・・となる蓋然性があるため,目的は重要であると考える

(3) 手段審査について

ア 反論

     ・・・であるから,規制の相当性を欠くものとはいえず,また,Xの主張する・・・という代替手段は規制の実効性があるとはいえないことから,LRAたりえず,実質的関連性があるとの反論が考えられる。

 イ 私見

    しかし,・・・と比較すると,法の規制は不相当な規制といえ,かかる規制に伴う・・・といった萎縮的効果もあるといえる。

    さらに,上記代替手段は・・・ことから,必ずしも規制の実効性があるとはいえないが,一方で,・・・という代替手段によっても,実効的な規制は可能であるといえるから,LRAがないとはいえない。

    したがって,実質的関連性があるとはいえないと考える。

(4) 結論

    よって,法は,●●条に反し違憲である。

2 ▲▲条の主張について

  (基本的には,上記第2の1の構成と同じ)

 

 

                              以上

 

 

5 考査委員が記した「希望」に関して

 

考査委員は,出題趣旨第6段落〔2〕で「親である外国人も含め,定住の希望を持つようになる蓋然性がある」とし,関連性あるいは規制の実効性の点についてコメントしている。

 

どのような形であれ,考査委員が「希望」に言及した例はこれが初めてではなかろうか。出題趣旨が公表された時期等からすれば,先見の明(?)があったというべきかもしれない。

 

いずれにせよ,少なくとも,考査委員のいう「希望」は,有用で具体的な中身があるもののようである。

 

本ブログは,どうだろうか。

 

司法試験受験生にとって,中身のあるもの,すなわち,合格への「希望」を見出す,あるいはそのきっかけとなるような内容になっているだろうか。

 

 

__________________

[1] 過去の採点実感でも同様の指摘がある。例えば,「被告側の反論が全く論じられていない答案もあった。問題文をきちんと読んでいないことがうかがえる。」(平成23年採点実感3頁)というものである。

[2] 辰已法律研究所『平成28年司法試験論文合格答案再現集 上位者7人全科目・全答案』(平成28年)(以下「上位本」と略す。)2~4頁,辰已法律研究所,西口竜司=柏谷周希=原孝至(監修)『平成28年 司法試験論文週去問答案 パーフェクトぶんせき本』(辰已法律研究所,平成29年)(以下「ぶんせき本」と略す。)32~37頁。

[3] 上位本70~72頁,ぶんせき本38~41頁。

[4] 平成28年の「〔設問2〕」は,「〔設問1〕で述べられたAの付添人の主張に対する検察官の反論を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を述べなさい。」であり,平成29年の「〔設問2〕」は,「〔設問1〕で述べられた甲の主張に対する国の反論を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を述べなさい。」である。このように両者は同一の形式を採る。

[5] 他のパターンもあるかもしれないが,大別すると,この2つのパターンを挙げることができると考える。

[6] 小タイトルは「検察官の反論」である。また,1位答案は,ア・イ・ウという,さらに下位のナンバリングをしていない。ただし,段落を変えていることに加え,接続詞やこれに準じるもの(「まず」「また」「そして」「この点については」など)を書いていない点も参考になるだろう。

[7] 1位答案は,緩やかな審査基準(合理性の基準など)の内容を具体的に明記しているわけではなく,理由のポイントを書いて「原告のいうほど厳格に審査をする必要はない」(ぶんせき本34頁)との記載にとどめている。なお,平成26年採点実感7頁によると「審査基準を『やや下げて』とか,『若干緩めて』といった記述が見られたが,判例や実務でこのような用語を使うかは疑問である。」とされているので,要注意である。

[8] 実際の正確な行数は分からない。文字の大きさ,書き方のクセなどによって多少行数は変わるだろう(例えば,ぶんせき本の場合,3行で表記されている部分が実際の答案では4行で書かれているということもありうると思われる)。

[9] 1位答案は,目的審査の部分で「立法事実」の存否・程度の検討をしているところ,これは,芦部信喜高橋和之補訂『憲法 第六版』(岩波書店,2015年)226頁と同様の立場(判例の理解)を採るもの思われる。法規制をしなければ弊害が生じるという因果関係立法事実によって合理的に裏付けることができるか否かのあてはめは,手段審査ではなく目的審査の中で検討されるべきであろう(同文献227頁参照)。

[10] 上位本7頁では3行であるが,ぶんせき本では2行となっている。上位本の方が,より正確であると思われるため,(ぶんせき本と行数が異なる場合には)上位本の行数の方を表記することとした(5位答案にいても同様)。

[11] 小タイトルは「私見」である。また,1位答案は,「(2) 私見」の部分でも,ア・イ・ウという,さらに下位のナンバリングをしていない。ただし,段落を変えていることに加え,基本的には,接続詞やこれに準じるもの(「まず」「また」「そして」「この点については」など)を書いていない点も参考になるだろう(一か所だけ「また」が登場する)。

[12] 8行書いており,「見せ場」を作っているといえる。

[13] 目的審査については,13条の主張と共通するものとし,22条の主張では,争点から外されているため,書かれていない。

[14] 5位答案は,「第2」と「1」・「2」・「3」のレベルまでしか,タイトルが付されておらず,「(1)」レベルや「ア」レベルはタイトルが付されていない。ゆえに,「審査基準の厳格さについて①」といった小タイトルは,本ブログ筆者が便宜上付したものである。

[15] 5位答案は「ア」「イ」のレベルまでナンバリングを付している(ただし,前注のとおり,小タイトルを付しているわけではない)。

[16] 5位答案は,「第2」と「1」・「2」・「3」のレベルまでしか,タイトルが付されておらず,「(1)」レベルや「ア」レベルはタイトルが付されていない。ゆえに,「審査基準の厳格さについて①」といった小タイトルは,本ブログ筆者が便宜上付したものである。

[17] 5位答案は,設問1で目的審査については,つまるところ合憲としてしまっているので(上位本70頁,ぶんせき本38頁),設問2で目的審査は行っていないということのようである。このような構成も答案政策としては(本問でそうすべきか否かはともかく)有用な場面もあるかもしれない。

[18] 第1の1は,2017年10月9日ブログの「冒頭パターン」の「2文パターン」によっている。

[19] 平成26年司法試験の採点実感等に関する意見(以下「実感」と略す。)3頁は,「条例第4条の第1号ないし第3号,あるいは第3号のイ及びロにつき,それぞれを適宜区別しながら審査しているものが見られた点は評価できる一方で,特に第3号のイ及びロについて,全てまとめて一つの審査をしているものがあり,気になった。」としている。そこで,法令違憲の主張をする際には,項数や号数等(複数ある場合は複数)まで特定すべきであろう。また,このことは処分違憲の主張の場合であっても同様であるように思われる。

ちなみに,行政法の答案で号数等までしっかり書くべきことは,次の①~③とおり,もはや受験生の間では殆ど常識となっているように思われる。①「条文の引用が正確にされているか否かも採点に当たって考慮することとした。」(20年実感5頁)/②「条文を条・項・号まで的確に挙げているか,すなわち法文を踏まえているか否かも,評価に当たって考慮した。」(21年実感5頁)/③「関係法令の規定に言及する場面で,単純な文理解釈を誤っている答案や,条文の引用が不正確な答案(項・号の記載に誤りがあるなど)が少なくなかった。また,関係しそうな条文を,よく考えずに単に羅列しただけの答案も散見された。このような答案は,条文解釈の姿勢を疑わせることになる。」(25年実感6頁)

 

 

*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

 

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その4 出題趣旨と「人権パターン」の関係

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨(以下,単に「出題趣旨」ということがある。)についての感想のつづきである。

 

前回までに,同出題趣旨の第1・2・5段落の感想を述べた。

 

前回のブログでは,最後の方で,司法試験論文憲法で,「冒頭パターン」を活用し,その後,「人権パターン」の流れに乗った答案を書けば,スムーズに答案を書くことができる(答案構成もし易くなる)だろうとし,さらに,出題趣旨と「人権パターン」との関係については,次回言及するなどと述べた。

 

yusuketaira.hatenablog.com

 

 そこで,今回のブログでは,出題趣旨第3段落及び第4段落の感想を述べ,「人権パターン」の規範(判断枠組み・違憲審査枠組み)定立部分とあてはめ部分(設問1まで)の話をすることとしたい。

かなり長くなるが,受験生にとって有益なものとなれば幸甚である。

 

〔出題趣旨第3段落(下線,〔1〕~〔4〕は引用者)〕

〔1〕①の自己決定権の侵害については,まず,自己決定権が憲法上保障されるか,そして,その自己決定権に妊娠等の自由が含まれるかということが問題となる。さらに,妊娠等の自由が自己決定権に含まれるとしても,本問のBが外国人であることから,別途の考慮が必要となる。〔2〕この点については,マクリーン事件判決(最大判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁)及びそこで示された権利性質説が直ちに想起されることだろう。そして,権利性質説からすれば,妊娠等に関わる自己決定権は外国人にも保障されるということになろう。〔3〕しかし,注意すべきは,同判決が,外国人に対する人権保障は「外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎない」として,人権として保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として考慮されることはあり得るとしていることである。〔4〕外国人の出入国及び在留に関わる問題に関しては,単純な権利性質説に基づく議論では不十分である。

 

 1 1~2文(2~4行程度)で書くべきサブ論点

 

第1~2文等から,

①自己決定権が憲法上(憲法13条後段に基づき)「保障」されるか,

②その自己決定権に妊娠等の自由が含まれるか,

そして第3~4文も合わせて読むと,

③妊娠等の自由が外国人にも,「権利の性質」上「保障」されるか,

という3つの論点については,簡潔に触れることが求められている[1]と考えられる。

 

なぜなら,出題趣旨第4段落の「一例」の記載と関連する論点である<④妊娠等の自由が外国人にも保障されるとして,どの程度保障されるべきものか(外国人の人権の保障の程度論)[2]>とは異なり,特に,出題趣旨において考査委員による具体例を用いた説明がない[3]からである。

 

つまり,①~③の論点は,1文あるいは2文短く書くべき論点といえよう。

書かないと基礎が分かっていないと判定されるが,決して時間を使ってはならないという類の論点である。メインの論点(<メイン論点>)ではなく,サブの論点というべきである[4]

答案構成の段階で<サブ論点>には「サ」などの印を書いておくと良いだろう。

 

ちなみに,このような論点に時間を(必要以上に)消費する受験生がいるが,そのような受験生は①~③の論点を「ワナ」の論点,<ワナ論点>と位置付け,注意すべきであろう。憲法論文が苦手な人にとって<サブ論点>は<ワナ論点>となり易いのである。

 

なお,出題趣旨第3段落(特に下線部分)からすれば,外国人の在留の権利(在留権の保障を論点として展開すべきではなく,その代わりというわけではないだろうが,いずれにせよ,後述する人権の「保障」の話を書く段階で,外国人の「在留に関わる問題」であることに言及すべきであるといえよう。

 

つまり,在留権を大展開した,あるいは在留権の「保障」論からスタートしたような答案は,基本的にはNGの構成ということになるだろう。

 

 

2 「人権パターン」による答案でもOK

 

ところで,出題趣旨第3~4段落の内容からすると,おそらく考査委員は,今をときめく「三段階審査」の立場ではない,「人権パターン」[5]による答案を書くことを許容していると考えられる。

 

つまり,(A)「保護」→「制約」→「正当化」(比例原則を中心とするあてはめ)の三段階審査論によらなくても,(B)人権パターンによる型に乗せ,人権主体論→「保護」論→保護の「程度」論→審査基準論(違憲審査基準等のあてはめ)という流れで答案を書いてOKとしているように思われ,出題趣旨からすれば,むしろ(B)の方が良いのではと思われる。

 

とはいえ,疑問点あるいは注意点が2つある。

 

第1に,出題趣旨第3段落からすれば,人権パターンで一番最初に書く(ことが多いと考えられてきたように思われる)[6]「外国人」の人権共有主体性の話は,一番最初に書くわけではなく,上記③の論点の段階で書くべきではないのかという疑問点を挙げられよう。

 

この記載の順序の点につき,平成30年司法試験で再度外国人の人権が出る可能性はかなり低いだろう[7]が,仮に再度出た場合には,③の段階で外国人の人権共有主体性の議論を始めた方が無難であると思われる。採点委員としては出題趣旨と同じ順序での論述がなされている方が良い印象を持つと思われる[8]からである。

(ただし,マクリーン事件の判旨[9]からすれば,最初に人権共有主体性の話を書いても問題は殆ど減点されるということはないだろう。)

 

そして第2に,「人権パターン」の「保護」論の後の,保護の「程度」論のところで,「制約」の態様・程度(強度)の話を書いておくべきであるということである。このことについては,後述する「立論」の「一例」の部分でも解説する。

 

ちなみに,宍戸常寿教授は,平成25年の著書[10]で,次の枠内のとおり述べている。

 

学説では、裁判所が人権制限の合憲性を判断する基準を準則化する立場(二重の基準論、違憲審査基準論)が広く支持されている。他方、最近では、各人権条項がいかなる自由・利益を保護するか、憲法上保護された権利の制約があるか、その制約は憲法上正当化されるかという3段階の審査により人権制限の合憲性を判断すべきであり、特に最後の正当化の審査段階では、比例原則を中心に判断すべきだとの立場も、説かれるようになっている。もっとも、両者の立場は実際には相当程度重なり合っているとの指摘もみられる。

 

最後の一文にあるところの違憲審査基準論と三段階審査論が「両者の立場は実際には相当程度重なり合っている」とする指摘は(賢明な受験生はよく知っているとおり)重要である。

そのため,違憲審査基準論で三段階審査に比べると十分に(あるいは体系的に)意識されてこなかったものと思われる「制約」の態様・程度(強度)話を,人権パターンにおける保護の「程度」論のところで明記しておくべきと考えられる。

 

なお,このことは次の第4段落第2文(「立論」の「一例」)の〔2-2〕のの記述からも裏付けられるものと思われる。

 

〔出題趣旨第4段落(下線,〔1〕~〔3〕は引用者)〕

〔1〕B代理人甲としては,マクリーン事件判決のこのような判断を踏まえつつ,本件のような場合には立法裁量が限定されるべきという主張を組み立てる必要がある。〔2-1〕様々な立論があり得るだろうが,飽くまで一例ということで示すとすれば,まず,妊娠等が本人の人生にとって極めて重要な選択であり,また,人生においても妊娠等ができる期間には限りがあり(なお,新制度はそのような年代の者を専ら対象としている(特労法第4条第1項第1号)。),自己決定権の中でも特に尊重されなければならないこと,また,〔2-2〕本件が,再入国と同視される在留期間の更新拒否ではなく,強制出国の事例であって〔2-3〕マクリーン事件とは事案が異なることなどを指摘して,立法裁量には限界があるとして〔2-4〕中間審査基準(目的の重要性,手段の実質的関連性)によるべきだという主張をすることなどが考えられる。〔3-1〕その上で,例えば,規制目的は定住を促す生活状況を生じさせることを防止することによって定住を認めないという新制度の趣旨を徹底することであり,これは,滞在期間を限定し,永住や帰化を認めないという直接的な措置と比べて周辺的であり,重要な立法目的とまでは言えないこと,〔3-2〕仮に目的が重要だとしても,妊娠等が全て定住につながるとは限らず,合理性に欠けることなどを指摘することが考えられる。

 

 

3 規範定立と規範の理由3つ(出題趣旨第4段落〔1〕・〔2〕)

 

上記〔2-1〕以下では,「あくまで一例」ということで立論の例を挙げているが,この部分は大変重要である。あくまで一例と強調しているからといって,受験生としては,決して軽く読んではならない。殆ど答案例が示されているといってもよい極めて重要な部分である。

 

メイン論点が人権保障の「程度」論であることを示すとともに(これは明らかであるが),何と考査委員自身が,いわば,理想の(これを100点というかどうかはさておき)解答例を示したものに等しい(あるいはそれに近い)論述だからである。

 

しかも,〔2-1〕~〔2-4〕が受験生にとって有難いのは,一応制限時間内に「書ける」分量で書かれていることである。ゆえに大いに参考にすべきであり,十分な分析が必要となる。

 

(1)〔2-1〕人権の「重要」性論・・・判断枠組みの理由その1

 

人権の保障の程度論では,判断枠組みの理由付けを3つ書き,その上で,判断枠組みを選定することになる。

 

この理由の1つ目として,〔2-1〕部分は,人権保障の程度論の段階で,まず,①「妊娠等が本人の人生にとって極めて重要な選択であ」ること,②「人生においても妊娠等ができる期間には限りがあ」ることの2つのことから,人権(自由)の重要性[11]が高い旨述べている。

 

人権・自由の重要性については,単に「重要」(が高い)と答案に書くのではなく(それでも多分OKだろうが),上記〔2-1〕のとおり,●●権「の中でも特に尊重されなければならない」と書けば良いのである。

キーワードは,<特に尊重>である。

 

ちなみに,上記〔2-1〕は,「妊娠」「出産」の評価として,①「本人の人生にとって極めて重要な選択」とか②「人生」における「限り」のある(短い)期間というものを書いているが,受験生の皆様はどう感じるだろうか。

 

簡単に書けると思うのではないだろうか。

 

個人的には,もう少し具体的に書いた方が良いと思われ,例えば,①については,①´前者妊娠・出産は,妊娠した者の人生観やライフスタイル・暮らしそのものを大きく変えうることの決定に関する事項であり,人格的生存の根幹にかかわるものであるから,「本人の人生にとって極めて重要な選択」であるなどと書くべきではないかと考えられる。

 

つまり,時間不足に陥るリスクもあるので,長々と書く分は減らした方が良いが,このようなメイン論点では,人権の重要性について具体的に書くなど「見せ場」を作ると良いと思われる[12]。さらにいえば,人権の重要性の話では,短答式試験で押さえた知識と社会常識を活用し,上記①´のような具体的な記載をすることで答案の「見せ場」を作ることが比較的容易であるといえよう。

 

ちなみに,この人権の「重要性」論に関し,平成28年司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)(以下「平成28年実感」という。)1頁の「2 総論」部分は,次の枠内の記載のとおり述べており(〔1〕~〔8〕,下線は引用者),〔2〕の部分で人権の「重要性」論に言及している。

 

・本問では,〔1〕架空の性犯罪継続監視法がいかなる憲法上の人権をどのような形で制約することになるのかを正確に読み取り,〔2〕被侵害利益を特定して,その重要性や〔3〕規制の程度等を論じて〔4〕違憲審査基準を定立し,問題文中の事実に即して適用するなどして結論を導かねばならない。〔5〕その際,当該権利(自由・利益)を憲法上の人権として保障すべき理由,〔6〕これに一定の制限を課す必要がある理由反対利益への配慮),〔7〕これらを踏まえて当該違憲審査基準を採用した理由,〔8〕同基準を適用して合憲又は違憲の結論を導いた理由について,いかに説得的に論じているかが,評価の分かれた一つのポイントとなる。

 

(2)〔2-2〕制約の態様・程度論・・・判断枠組みの理由その2

 

出題趣旨第4段落〔2-2〕及び平成28年実感〔3〕のとおり,判断枠組みの理由付けとして,さらに,制約(規制)の態様・程度(強度)について書く必要がある。

 

型は,<●●●●という(弱い)態様の制約にとどまらず,強制の程度が(より)大きい●●●●の事案である(こと)>といったもので良いだろう。

 

ちなみに,〔2-2〕では,特に表現の自由で登場するところの事前規制[13]・事後規制,内容規制[14]・内容中立規制[15]という規制態様に係る類型論には(少なくとも直接は)触れていない点にも注意する必要があるだろう。更新のタイミングで日本から出ていけと言われるのか,更新のタイミングが未だ到来していないのに出ていけと言われるのかは違うという〔2-2〕の主張は,強いていうならば,事前・事後規制の応用ということになるかもしれない(この点については自信はないが…)。

 

(3)〔2-3〕当該判断枠組みの採用理由(「事案が異なる」など)・・・判断枠組みの理由の〆のワード

 

〔2-2〕及び平成28年実感〔7〕からすれば,判断枠組みの理由付けの〆の部分のキーワードの1つとして,「事案が異なること」を書くと良いだろう。もちろん,そのキーワードの前の論述を「一例」のようにしっかり書いておく必要がある。型は次のとおりとなる。

 

<〔2-1〕(人権の重要性)〔2-2〕(制約の程度等が強いこと)(など)に照らせば,●●●●事件とは事案が異なることから,・・・>

 

ちなみに,マクリーン事件の判断枠組みによる場合には,(広い)裁量を前提とする裁量権逸脱濫用の規範による判断の中で憲法論が論じられることになるところ,このような緩やかな規範を示す判例(出題趣旨等で明示又は黙示に書かれるような)関連判例である場合には,少なくとも原告(被告人)側の主張(設問1)では,その判例の規範を使わないようにすべきである[16]

 

そこで,裁量を前提とする判例の場合,<立法/行政裁量は限定されるべき>というワードもまた,判断枠組みの理由付けの〆の部分のキーワードの1つとなるものといえよう。(なお,この点につき,下記(5)参照)

 

(4)〔2-4〕規範(判断枠組み・違憲審査枠組み)の定立(審査基準論)

 

上記(3)のとおり,判例の規範が緩やかであり,判例の規範を使わない場合には, <上記判断枠組みの理由(上記(1)・(2),下記(5)の3つの理由)に照らし,●●●●事件とは事案が異なることから>などと書き,規範=判断枠組み=違憲審査枠組みを設定すると良い[17]

 

〔2-4〕では,判断枠組みとして,審査基準論における「目的の重要性,手段の実質的関連性」を審査する「中間審査基準」を採用すべきだという主張をすべきとしている。

 

異論もあるところとは思うが,「中間審査基準」の場合には,目的は「正当」よりも「重要」とする方が出題趣旨に合っているし,「合理的関連性」ではなく「実質的関連性」としている点も同じである[18]

 

(5)補足1:制限を課す必要がある理由・・・判断枠組みの理由その3

 

平成28年実感〔6〕は,個人の人権・自由についての「一定の制限を課す必要がある理由(反対利益への配慮)」に言及する。これは,上記(1)の人権の重要性(いわば人権のプラス面[19])とは逆の,他者の人権や公益を制約する弊害的な性格(いわば人権のマイナス面)が小さいか大きいか(すなわち,当該人権の制約の本来的可能性[20]が低いか高いか)というものであり,平成28年実感は,判断枠組みの理由付けとして,必要に応じてこのマイナス面を(も)答案に書いて欲しいと述べているものといえる。

 

そのため,<人権につき一定の制限を課す必要がある>というキーワードは正確に記憶しておいて答案で適宜書けるようにしておくべきである。

 

ちなみに,「立法裁量」または「行政裁量」が認められる(広いとはいえなくても肯定される)こと(その裁量肯定の根拠・理由)は,「上記一定の制約を課す必要がある理由」になると思われる。このことからすれば,〔2-3〕ではマイナス面に言及していることになるから,「厳格審査基準」ではなく「中間審査基準」ということになるのである[21]

 

(6)補足2:平成28年実感〔1〕等の説明

 

平成28年実感の〔1〕は,前回のブログの「冒頭パターン」を意味し,同〔5〕は,「人権パターン」における「保障」レベルの話に言及する部分である。

 

 

4 規範のあてはめ(出題趣旨第4段落〔3〕)

 

出題趣旨第4段落〔3〕は,「例えば」として,規範へのあてはめの一例を挙げた部分である。先の「一例」のところでも述べたとおり,「例」は決して軽視してはならない。

 

「『一例』を笑うものは『一例』に泣く」と肝に銘じ,考査委員の示す「例」を穴が空くほどよく読み,精密な分析を行うべきであり,その際に本ブログが参考になれば望外の喜びである。

 

さて,この部分を読み,少なからず‘違和感’を覚えたのは私だけだろうか。というのも,目的審査の記載(〔3-1〕)の方が手段審査のそれ(〔3-2〕)よりも長かった(約2倍の分量)からである。

 

このことに関し,平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見(以下「平成20年実感」という。)4頁は,「〔①〕必要不可欠の(重要な,あるいは正当な)目的といえるのか,〔②a〕厳密に定められた手段といえるか,〔②b〕目的と手段の実質的(あるいは合理的)関連性の有無,〔②c〕規制手段の相当性,〔②d〕規制手段の実効性〔②e〕等はどうなのかについて,事案の内容に即して個別的・具体的に検討すること」を求めている。

 

この記載は,平成23年新司法試験の採点実感等に関する意見(公法系科目第1問)(補足)2頁でも繰り返し言及されており,「審査基準の下で目的手段審査を行う場合」(同頁)における目的審査のキーワード(上記①)及び手段審査のキーワードと考慮事項を示したもの(上記②a~②e)であるため,採点実感の中でも特に重要なものといえる。

 

そして,平成20年実感4頁の上記記載などからすれば,司法試験では,通常は(多くの場合は,というべきか)手段審査の方が検討事項が多いものといえることから,普通は,手段審査のあてはめの記載が長くなるはずである。

しかし,出題趣旨第4段落〔3〕はその逆であったため,ある種の違和感を覚えることとなった。

 

とはいえ,考査委員としては,(事案にもよるが)目的審査にも点を振っておくからちゃんと書いてくれとコメントしているものと思われる。そのため,例えば,設問1(原告(被告人)の主張)で「…であるから,目的は重要といえる」などと簡単に書かない方が無難と考えられよう(事案にもよるが)。

 

以上のとおり,違和感が解消されたか否かよくわからないが,とにかく前に進む[22]こととする。

 

(1)目的審査のあてはめ(中間審査基準を採用する場合)に関して

 

〔3-1〕は,「規制目的」が①「定住を促す生活状況を生じさせることを防止することによって定住を認めないという新制度の趣旨を徹底すること」(下線は引用者,以下同じ)であり,これは,②「滞在期間を限定し,永住や帰化を認めないという直接的な措置と比べて周辺的」であり,③「重要な立法目的とまでは言えない」ものであるとしている。

 

この部分は(も)大いに参考になる。

 

なぜならば,司法試験の自由権規制の問題では,これまでの法律を新たな架空の法律や条例(条例の場合,上乗せ・横出し条例)をもって規制を厳しくするという類のものがしばしば出題されるところ,そのような問題では,<●●●という更なる法的規制は,●●●という従来の規制である直接的な措置と比べて周辺的[23]なものにすぎないものであるから,(大きな意義を有するものではなく,ゆえに)重要な立法目的とまでは言えない>という型が通用する場合が多いと考えられるからである。

 

あえて平たく言うならば,「ダメ押し」の規制目的は,「周辺的」な規制目的にすぎないから,大したイミがない!重要じゃない!ということだろう。

 

このように書くと論証パターンのような型を提示しているなどと言われそうだが,参考にするのは法務省が公表する出題趣旨であって,その記載を参考にするなというのは信義則違反となる行為といえるだろうから,上記のような型を答案作成の際に適宜(必要に応じて)参考にするのは悪いことではなかろう。

 

(2)手段審査のあてはめ(中間審査基準を採用する場合)に関して

 

次に,〔3-2〕は,「仮に目的が重要だとしても,」(下線は引用者,以下同じ)と前置き[24]をした上で,「妊娠等が全て定住につながるとは限らず合理性に欠けることなど」を指摘することが考えられると述べている。

 

思わず「え…,いや,あの,そっ……それだけですか?」などと口走ってしまった受験生[25]は,出題趣旨,採点実感等をかなり分析している人かもしれない。

 

というのも,「妊娠等が全て定住につながるとは限ら」ないとの記載は,平成20年実感の〔②b〕目的と手段の実質的関連性がないことについて言及しただけの記載であり,他の考慮事項の具体例については(少なくともこの第4段落では)一切書いてくれていない[26]からである。

 

とはいえ,〔3-2〕から,<仮に目的が重要だとしても,●●という事実に照らすと,当該規制手段が全て●●(という規制目的)につながるとは限らず,合理性に欠けるものであるから,実質的関連性はない>といった型を見出すことができるだろう。

 

なお,上記の型で「合理性」という用語が登場するところ,考査委員は,実質的関連性の基準のあてはめ(手段審査)であるにもかかわらず,「合理性の基準」でも用いられる「合理性」を使っており,問題があると思う受験生もいるかもしれない。

 

しかし,おそらく問題はないだろう。

 

薬事法違憲判決(最大判昭和50年4月30日)が中間審査基準を採用したものか否かは争いがあるところではある[27]が,同判決は,手段審査のあてはめのところで,「設置場所の地域的制限のような強力な職業の自由の制限措置をとることは, 目的と手段の均衡を著しく失するものであって, とうていその合理性を認めることができない」(下線は引用者)としていることからすれば[28],司法試験論文でも中間審査基準の手段審査のあてはめで「合理性」という用語を使うのはOKだろう(ただし,平成30年の採点委員が平成29年の出題趣旨等をしっかり読んでいる限り,という留保をつけておく)。

 

最後に,平成20年実感②の手段審査a~eについて補足しておこう。

 

まず,b.目的と手段の実質的(あるいは合理的)関連性の有無については,

上記の型で書けば良い。

 

次に,c.規制手段の相当性と,d.規制手段の実効性であるが,これらは,LRAを論じる際に,セットで書くべきものといえよう。LRAは,規制「目的を達成するため規制の程度のより少ない手段」[29]であり,c.の相当性に加えて,d.の実効性があることも前提とするものといえるからである。しばしば実効性の点を(殆ど)考えることなく答案を書く受験生がいるが,平成20年採点実感などからすれば,早く改善すべきことといえよう。

 

残ったのは,

a.厳密に定められた手段といえるか

e.等

の2つである。

 

まず,a.につき,元考査委員の文献[30]が「『厳格審査の基準』も,違憲という結論に直結した硬直した審査基準として捉えていない。『必要不可欠な公益』に仕える目的であるか否か,そして手段が目的達成のために『綿密に規定されている』(narrowly tailored)か否かを事案に即して個別的・具体的に検討しなければならない」としている。」としていることに照らすと,「厳密に定められた手段といえるか」とは厳格審査の手段審査のあてはめ(あるいはその要素)について言及したものと考えられる(これは上記(2)の小タイトルとはズレる話だが,ご容赦いただきたい)。

 

次に,e.である。出題趣旨を読む際は特に,「等」の内容についてもできる限り検討しておいた方がよいだろう。

 

「等」には,合理性の基準を採用する場合の手段審査の考慮事項(あてはめの要素)が含まれうるが,ここでは,中間審査基準の考慮事項としてさらに書きうる(と考えられる)ものを1つだけ挙げておきたい。

 

それは,手続の適正担保されていることである。

 

この考慮事項に関し,最一小決平成8年1月30日(宗教法人オウム真理教解散命令事件)は,「本件解散命令は,法81条の規定に基づき,裁判所の司法審査によって発せられたものであるから,その手続の適正も担保されている」(下線は引用者,以下同じ。)とし,「以上の諸点にかんがみれば,本件解散命令及びこれに対する即時抗告を棄却した原決定は,憲法20条1項に違背するものではないというべきであ」ると判示している[31]

 

このように,判例は精神的自由権の1つである信教の自由の違憲審査において(31条等の違憲審査においてではない),処分の手続の適正さが担保されていることを考慮事項の1つとしているのであるから,司法試験でも,精神的自由権では同様の考慮事項を考慮して構わないものと思われる。

 

 

5 判例の規範を活用する場合も十分な理由付けを書くこと

 

以上,(規範が緩やかと解される)判例の規範を活用しない場合について書いてきたが,このことは,判例の規範を活用する場合(自由権違憲審査の場合)も同様であると考えられるので,あと少し続ける。

 

すなわち,<①人権の重要性の程度,②制約の態度・程度(強弱),③人権につき一定の制限を課す必要があるか(その程度)に照らすと,●●●●事件とは事案の本質的部分が共通するものといえる。そこで,・・・・・・(:同事件の判例の規範)によるべきである。>などといった型で書くべきである。

 

つまり,漫然と人権・論点が一緒だからという理由で,十分な理由付けを書くことなく,判例の規範を採る旨書いてはならないということである。

 

平成30年は,設問1から(比較的厳格な)判例の規範を採って答案を書いていくような問題(平成22年の選挙権,平成26年のタイプ[32])が出る可能性が高いものと思われる。4年スパンとすれば,平成30年は丁度出題される頃だろう。

 

 

6 出題趣旨と向き合おう

 

以上,出題趣旨第3段落及び第4段落,とりわけ考査委員の示す「一例」や「例え」の部分についての感想を述べてきた。これらの感想は司法試験受験生が出題趣旨を「分析」する際に参考にしていだきたい。

 

今年,残念ながら不合格となってしまった方にとって,その年の問題の出題趣旨の分析は,辛い作業かもしれない。

私にもその経験があるから,少しは気持ちが分かる。

 

しかし,「コンプレックス」をも「モチベーション」に変えるつもりで[33],分析を進めてほしいと思う。

 

 

「腑甲斐無い自分に 銃口を突き付けろ」[34]

 

 

 

___________

[1] ちなみに,出題趣旨等でも,「求められ(てい)る」と「期待され(てい)る」という用語の使い分けがなされる。後者は加点事由に係る事項ということになるが,仮に多くの受験生が書いてくると(司法試験は相対評価であるから)実質的には基礎点的なものに関する事項というものになるだろう。

[2]  芦部信喜高橋和之補訂『憲法 第六版』(岩波書店,2015年)92頁は,「問題は、いかなる人権がどの程度に外国人に保障されるのかを具体的に判断していくことである。」とする。

[3]  「一例」がある部分と,ない部分とでは,基本的には,論点の重要度が客観的に異なるものと考えるべきである。

[4] 誤解しないでほしいが,一般的に人権・自由の保障レベルの話がメインの重要な論点とされないという意味ではない。現実に,このレベルの話がメインの論点となる年は少なくない(出題趣旨や上位再現答案等に照らせば,23年,25年(教室使用の自由を23条で構成する場合),28年など)。

[5] 「人権パターン」については,前回のブログ(2017年10月9日)で簡単な説明(紹介)をした。

[6] マクリーン事件最大判昭和53年10月4日)の判示に照らしてみてもそういえるだろう。司法試験受験生は,さしあたり長谷部恭男ほか編『憲法判例百選Ⅰ〔第6版〕』(有斐閣,2013年)(以下「百選Ⅰ」と略す。)4頁〔愛敬浩二〕の判旨(ⅲ)部分を参照されたい。

[7] しかし,予備試験では十分出題されうるだろう。

[8] この論述順序の点について,特に実務家委員は,特段の事情のない限り(おそらくマクリーンの判示の順序がどうだとかそういった点についてのこだわりをもっていないと思われるので)「出題趣旨」記載の順序に従って論述されている答案に好印象を抱くと考えられる。

[9] 愛敬・前掲注(6)4頁。

[10] 戸松秀典=今井功『論点体系 判例憲法 1 ~裁判に憲法を活かすために~』(第一法規,平成25年)117頁〔宍戸常寿〕。

[11] 青柳幸一『憲法』(尚学舎,2015年)87頁参照。

[12] とはいえ,「見せ場」を作ろうとして失敗するというリスクがあることは否定できない。もっとも,司法試験論文はリスクとの戦いの連続と言っても良い。リスクを避けて答案を書くべきとき(「守り」の答案)もあれば,あえてチャレンジしてみるべきとき(「攻め」の答案)もあるだろう。

[13] 芦部・前掲(2)198頁(事前抑制の理論)参照。

[14] 芦部・前掲(2)195頁。

[15] 芦部・前掲(2)196頁。

[16] ただし,これは自由権侵害の主張の場合である。憲法25条1項違反の主張の場合,別途検討を要する。

[17] ちなみに,出題趣旨第4段落〔1〕は,要するにマクリーン事件判決の規範を外し,別の規範を立てるべきとの主張をするとよいと述べるものである。

[18] 司法試験論文憲法との関係では,他説を採用するのは止した方がよいだろう。なお,平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法)4頁も,「中間審査基準における目的審査で『正当な目的』とするのは誤りである。中間審査基準では,『重要な目的』であることが求められる。」と断じている。

ちなみに,同頁が「厳格審査の基準であるのか,それとも審査基準が緩和されるのか等について,論ずる必要がある」としていることからすれば,審査基準の厳格度を「上げて」とか「下げて」とか書くよりも(このような書き方はNG),<厳格審査基準を緩和した基準によるべきであり,中間審査基準により判定する>などと書くとよいだろう。

[19] なお,平成23年新司法試験論文式試験問題出題趣旨2頁「ユーザーにとっての利便性の向上等は,情報提供側〔引用者注:原告側のこと〕のプラス面として挙げることができる」と述べており,「プラス面」という用語を使っている。

[20] 青柳・前掲注(11)87頁参照。

[21] 司法試験では,設問1段階から,あえて「中間審査基準」で書くというのは(私は)答案政策上,良いことであると考えている。①原告(被告人)側の主張で,あえて最初に「確かに」としてマイナス面などを書いておくと,かえって自分の弱点を認識している(そしてその部分をフォローしている)点で印象が良くなる場合が多いと思われること,②その弱点(双方に弱点がある。弱点のない事案はでない)が事案の特殊性であり,出題者が気付いて欲しい部分であることが少なくないと思われること,③私見では厳格審査基準は採り難いが,(別の理由を付して・加えて)中間審査基準(同じ規範)を取れば省エネ答案となる上,設問2のあてはめが設問1のそれとかみ合ったものとなりやすくなる(あたかもかみ合っているように読まれ易くなる)ことなどがその理由である。

 なお,平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法)4頁は,「『厳格な審査が求められる』と一般的な言い回しをしながら,直ちに『厳格審査の基準』あるいは『中間審査の基準』と書くことには,問題がある。合理性の基準よりも審査の厳格度が高められるものには,『厳格審査の基準』と『中間審査の基準』とがあるので,なぜ,どちらの基準を選択するのかについて,説明が必要である。」(下線は引用者)としており,この指摘にも注意を要する。

[22] ちなみに,司法試験論文の問題文の誘導(会話文)で意味が分からないと思ったときも,とりあえず次の会話等を読めばその前の文の意味が分かるときもある。とはいえ,会話文は特に重要であるから,適宜立ち止まって考えれるべきときもある。このように,司法試験論文には「人生」が凝縮されているというと言いすぎだろうか。

[23] 「周辺的」を「補充的」などと言い換えてもいいかもしれない。

[24] この前置きの記載もぜひ真似して欲しい。司法試験論文憲法の答案で重要な記載の1つであり,代理人(弁護人)としてのスピリットを感じるものといえよう。法曹適格を推認させる記載と言うとやや言いすぎかもしれないが…。

[25] 大黒摩季の「チョット」(1993年)のイントロが頭の中で流れた,これを歌い出しそうになった,又は「チョット待ってよ…」と歌ってしまった受験生についても同様である。

 なお,この選曲につき時代錯誤だと思う人は,より時代錯誤な(中世の人のような意識をもった,特に高齢の)政治屋の方々をまずは批判されたい。批判の方法はいくつかあるが,とりあえず選挙権の行使という方法を挙げることができる。

 雨が降っても投票に行こう。

[26] ただし,出題趣旨第6段落の記載からすれば,他の考慮事項のことも読み取れるように思われるが,この点については次回のブログで感想を述べる予定である。

[27] この点に関し,平成26年司法試験論文式試験問題出題趣旨1頁は,薬事法違憲判決(最高裁)の「判断枠組みが『中間審査の基準』(厳格な合理性の基準)を採用した判決と解するのか,それとも事実に基づいて個別的・具体的に審査した結果,違憲という結論も導かれる『合理性の基準』を採った判決と捉えるのか検討する必要がある」と述べている。

[28] 司法試験受験生は,さしあたり百選Ⅰ206頁〔石川健治〕の判旨(ⅸ)を参照されたい。

[29] 芦部・前掲注(2)210頁。

[30] 青柳幸一「審査基準と比例原則」戸松秀典=野坂泰司『憲法訴訟の現状分析』(有斐閣,2012年)140頁。

[31] 司法試験受験生は,さしあたり百選Ⅰ90頁〔光信一宏〕の判旨(ⅱ)・(ⅲ)を参照されたい。 

[32] ただし,平成26年については議論があろう。

[33] Mr.Children「I’ll be」(同『DISCOVERY』(1999年)の7曲目)の歌詞「コンプレックスさえも いわばモチベーション」参照。

[34] Mr.Children・前掲注(33)。

 

 

*このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。

 

平成29年司法試験出題趣旨(憲法)の感想 その3 憲法答案の「冒頭パターン」

平成29年司法試験論文憲法の出題趣旨についての感想のつづきである。

 

前回は,同出題趣旨の第1段落の感想を述べた。

   

yusuketaira.hatenablog.com

 

そこで,今回のブログでは,同出題趣旨の第2段落(及び第5段落)の感想を述べることとする。

 

〔平成29年司法試験論文憲法・出題趣旨第2段落〕

本問での主な論点は,問題文にもヒントがあるように,①妊娠・出産(以下「妊娠等」という。)を滞在の際の禁止事項とし,違反があった場合には強制出国させることが,自己決定権(憲法第13条)の侵害ではないか,②令状等なくして収容を認めることが人身の自由や適正な手続的処遇を受ける権利(根拠条文は立場によるが,憲法第13条,第31条,第33条等。)を侵害するのではないか,ということである。」(下線は引用者)

 

この①・②のうち,このブログでは,①についてだけ感想を述べる。

 

②(人身の自由や適正な手続的処遇を受ける権利)については,さすがに平成30年では連続して出ないものと予想される上,他の人権(自由権・請求権…平成30年で出題可能性の高いもの)への応用がし難いと思われる内容であるため,受験生の関心との関係でも①(の一部)に絞ってコメントした方がよいと思ったからである。

 

 

1 優秀答案に「特定のパターン」はない?

 

ところで,平成27年司法試験の採点実感等に関する意見1頁1は,「優秀な答案に特定のパターンはなく,良い意味でそれぞれに個性的である。」(下線は引用者)と言い切る。

 

しかし,旧司法試験時代から多くの司法試験合格者を出してきた司法試験受験予備校の「伊藤塾」では,従前より,憲法の人権(自由権)の問題については,「処理手続」があるものと「塾生」(伊藤塾の受講者)らに解説しており,これは多くの合格者によって支持されてきたものと思われる。

 

そして,司法試験受験業界において,この「処理手続」が「人権パターン」と呼ばれ続けてきたことは,あまりに有名な話である。

 

「人権パターン」について,伊藤真憲法[第3版]【伊藤真試験対策講座5】』(弘文堂,平成19年)94,95頁は,次のとおり述べる。

 

憲法の問題は、人権の問題と統治機構の問題とに分かれますが、人権の問題の場合には、ある人が人権を制限されて、そのような人権制限が合憲か違憲かを問う問題が出題されることが多く、この場合の人権の処理手順としては、①だれの、②どのような内容の人権が、③だれによって制約され、④その制約が許されるか、そしてそれが憲法法訴訟上問題となった場合における問題点というものを論じていくことになります。」(94頁)

「人権の問題は、(中略)一定の処理手続がありますから、通常は、この処理手続にのせて検討すれば足ります。」(95頁)

 

さて,懸命な司法試験受験生であれば,憲法の論文答案について,特定の「パターン」を意識しないで論述を展開することがいかに無謀なことであるか知っているはずである。2時間という短い時間内で憲法の答案を書き切るには,いつくかの「パターン」を活用する必要がある。

 

なお,平成21年新司法試験論文式試験問題出題趣旨1頁が,憲法の論文式問題につき「判例及び学説に関する知識を単に『書き連ね』たような,観念的,定型的,『自動販売機』型の答案を求めるものではなく,『考える』ことを求めている。すなわち,判例及び学説に関する正確な理解と検討に基づいて問題を解くための精緻な判断枠組みを構築し,そして事案の内容に即した個別的・具体的な検討を求めている。」と述べているとおり,基本書の文書やキーワードをそのまま貼り付けただけのような答案が問答無用で「F」となることはもはや説明不要であろう。

 

しかし,ここでいう「定型的」な答案というのは,答案を書き易くするための特定の「パターン」・「型」を使ってはならないという意味ではない。

 

上記「人権パターン」のように,憲法答案で書く内容の「順序」のようなものは決まっているのであり,それについて事前に良く押さえなければ,安定して良い答案を書くことはできないはずである。

 

 

2 答案の「書き出し」の型 ~3要素説~

 

上記「順序」の点に関し,特に憲法の論文に苦手意識のある受験生が悩む問題として,答案の「書き出し」の内容のことが挙げられよう。

 

「人権パターン」も,答案の「書き出し」の部分について詳しく述べているわけではないことから,特に憲法の答案を書き慣れていない方は,「書き出し」部分で時間を無駄に使ってしまう,いわばスタートダッシュできずに躓いてしまうということが少なくないように思われる。

 

「書き出し」部分なんて,ノリでテキトーに書けばよいではないかと思う人こそ読んでほしいわけだが,「書き出し」部分は3つの必要事項・要素について書く必要がある。いわば「書き出し」3要素説である。

 

すなわち,平成29年出題趣旨は,「本問での主な論点」は「〔1〕妊娠・出産(中略)を滞在の際の禁止事項とし,〔2〕違反があった場合には強制出国させることが,〔3〕自己決定権(憲法第13条)の侵害ではないか」(〔1〕~〔3〕は引用者)であるとする。

 

この記載から,憲法答案の書き出し部分では,〔1〕法律・条例や処分が(本問では法律が)特定の行為を「禁止事項」としていることを指摘し,その上で,〔2〕違反があった場合に法律等に基づいて特定の「強制」的な措置をとることが,〔3〕●●権あるいは●●の自由(憲法●●条)の侵害ではないか?という問題提起が必要となる(ただし,〔3〕は違憲主張の形にして書く)。まとめると次のとおりとなる。

 

  答案の「書き出し」の型の3要素

〔1〕特定の行為に係る禁止事項

〔2〕違反があった場合の特定の強制措置

〔3〕人権(自由)名+条文ナンバー → 違憲主張(問題提起)

 

ちなみに,出題趣旨第5段落が「本問では,違憲の主張をする場合,その瑕疵は特労法そのものに求められるべきであり,問題文にも,『Bの収容及び強制出国の根拠となった特労法の規定が憲法違反であるとして,国家賠償請求訴訟を提起しようと考えた。』とされているのであるから,法令違憲を検討すべきである。仮に適用違憲に言及するとしても簡潔なものにとどめるべきであろう。」としていることからすれば,上記〔2〕の部分か,あるいは,例えば,「●●法●条●項●号の法令違憲の主張(●●条違反)」などのタイトルを付して,答案で,法令違憲の主張をしているのか,処分違憲適用違憲の主張をしているのかを明示すべきである。

 

 

3 書き出し3要素説による「冒頭パターン」

 

以上のことから,答案の書き出し3要素説の「冒頭パターン」は次のとおりとなる。

 

(1)2文パターン

 

第1 設問1

 1 ●●法●条等の法令違憲の主張(憲法●●条違反)

(1)●●法(以下「法」という。)●条●項●号[1]は,●●が●●する場合に●●する行為禁止事項としており,その違反があった場合には●●という強制措置をと(執)る(ことができる)こととしている(法●●条●項)。そこで,Xとしては,かかる措置をとることが●●権/●●の自由(憲法(以下法名略)●●条●項)を侵害すると主張する。

 (2)・・・・・・

 

 

(2)1文パターン(若干短いバージョン)

 

第1 設問1

 1 ●●法●条等の法令違憲の主張(憲法●●条違反)

(1)●●法(以下「法」)●条●項●号は,●●が●●する行為禁止事項としており,違反があった場合には●●という強制措置をと(執)る(とりうる)としている(法●●条●項)ことから,Xとしては,同措置が●●権/●●の自由(憲法(以下法名略)●●条●項)を侵害すると主張する。

 (2)・・・・・・

 

 

4 「冒頭パターン」と考査委員・元考査委員の見解との関係

 

ところで,平成28年司法試験の採点実感等に関する意見1頁は,「本問では,架空の性犯罪継続監視法が〔A〕いかなる憲法上の人権を〔B〕どのような形で制約することになるのかを正確に読み取り,被侵害利益を特定して,その重要性や規制の程度等を論じて違憲審査基準を定立し,問題文中の事実に即して適用するなどして結論を導かねばならない。」(下線,〔A〕及び〔B〕は引用者)とする。

 

とすると,先に「憲法上の人権」と憲法の条文(条項)をもっと先に書く必要があり,上記の冒頭パターンには問題があるのでは?…とも思えてしまうかもしれない。

 

しかし,元考査委員の青柳幸一教授が考査委員であった年に書いた青柳幸一「審査基準と比例原則」戸松秀典=野坂泰司編『憲法訴訟の現状分析』(有斐閣平成24年)138頁(次の枠内,下線は引用者)によると問題はないものと思われるし,上記平成28年の採点実感等が以下の青柳教授の見解を修正しているものとは考えられないだろう。

 

「日本で検討すべきは,アメリカ型かドイツ型かという二者択一的思考ではなく,両者のそれぞれの長所を活かす合憲性審査の方法であると思われる。

まず,ジャーゴン[2]で彩ることなく,人権問題を素朴に発見することから始まる。つまり,「どのような行為が,何(例えば・法律)によって,どのような目的・理由で,どのように制約されているのか」という,問題の発見である。次に,「どのような行為」に関して,当該行為が憲法上保障されているか否かを,条文に則して検討する。

 

この文献の内容に関し,平成26年司法試験の採点実感等に関する意見1頁は,「本年の問題においても,事案を正確に読んでいるか,憲法上の問題を的確に発見しているか,その上で,関係する条文判例憲法上の基本的な理論を正確に理解しているか,さらに,実務家として必要とされる法的思考及び法的論述ができているかということに重点を置いて採点した。」(下線は引用者)としており,「発見」というワードが共通することなどから,同採点実感は,おそらく上記文献を前提に書いたものであると考えられる。

 

同文献のうち,「どのような目的・理由で」などの部分は,上記「冒頭パターン」部分ではなく,基本的には,その先の審査基準(判断枠組み)の選定の理由付けで書くべき部分と思われるが,いずれにせよ,憲法の条文・条項(上記2の3要素の〔3〕の段階のもの)を書く前に,上記2の3要素の〔1〕と〔2〕の話(問題の「発見」の話)を書いておく必要があるということである。

 

 

5 「冒頭パターン」から「人権パターン」へ

 

司法試験論文憲法では,以上の「冒頭パターン」を活用し,第1の1(2)以下で,「人権パターン」の流れに乗った答案を書けば,スムーズに答案を書くことができる(答案構成もし易くなる)だろう。

 

「人権パターン」については,様々な議論があるが,これについては次回言及したい。

 

本ブログが受験生の皆様にとって少しでも合格への「希望」[3]につながるものとなれば幸いである。

 

_________

[1] 平成26年司法試験の採点実感等に関する意見(以下「実感」と略す。)3頁は,「条例第4条の第1号ないし第3号,あるいは第3号のイ及びロにつき,それぞれを適宜区別しながら審査しているものが見られた点は評価できる一方で,特に第3号のイ及びロについて,全てまとめて一つの審査をしているものがあり,気になった。」としている。そこで,法令違憲の主張をする際には,項数や号数等(複数ある場合は複数)まで特定すべきであろう。また,このことは処分違憲の主張の場合であっても同様であるように思われる。

ちなみに,行政法の答案で号数等までしっかり書くべきことは,次のとおり,もはや受験生の間では殆ど常識となっているように思われる。

・「条文の引用が正確にされているか否かも採点に当たって考慮することとした。」(平成20年実感5頁)

・「条文を条・項・号まで的確に挙げているか,すなわち法文を踏まえているか否かも,評価に当たって考慮した。」(平成21年実感5頁)

・「関係法令の規定に言及する場面で,単純な文理解釈を誤っている答案や,条文の引用が不正確な答案(項・号の記載に誤りがあるなど)が少なくなかった。また,関係しそうな条文を,よく考えずに単に羅列しただけの答案も散見された。このような答案は,条文解釈の姿勢を疑わせることになる。」(平成25年実感6頁)

 

[2] 「ジャーゴン」(jargon)とは「特定グループの内だけで通じる用語。業界用語。」(新村出編『広辞苑 第六版』(岩波書店,2008年)1292頁)のことを意味する。

なお,近時,某知事が,記者会見において,横文字(アウフヘーベン)の意味・内容に関する質問を受けた際に,その内容は「辞書で調べて」などと回答したことがあるが,説明責任を十分に果たしていないものと思われる。住民・国民の知る権利を尊重した態度ではないように思われるが,そのような態度に「希望」を見出す住民等が一定数存在することから,筆者としては法教育の重要性を日々実感している次第である。

 

[3] 「希望」に関する桜井和寿Mr.Children)の曲として,「名もなき詩」(1996年,アルバム『深海』(同年)7曲目),「くるみ」(2004年,アルバム『シフクノオト』(同年)の4曲目),「かぞえうた」(2011年,アルバム『(an imitation)blood orange』(2012年)の7曲目)などがある。それぞれ「希望」が見えないときに司法試験受験生に聴いて欲しい一曲であり,前二曲は,現に受験生時代の私が「希望」を見出すきっかけとなったものである。

 

 

 *このブログでの(他のブログについても同じです。)表現は,私個人の意見,感想等を述べるものであり,私の所属団体,関連団体のそれとは一切関係のないものです。そのため,例えば,私のブログにおける「受験生」とは,このブログの不特定少数又は不特定多数の読者に司法試験や予備試験の受験生がいる場合のその受験生を意味し,特定の大学等の学生(司法試験受験生)をいうものではありません。このブログは,あくまで,私的な趣味として,私「個人」の感想等を書いているものですので,ご留意ください。